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「子持ち様」の裏にある日本の残念な文化と甘え

「子持ち様」
悲しい言葉ですね。

ワーママはこの発言に深く傷つくでしょうし、この発言をせざるを得なかった人も、きっと、いろんな思いを抱えているのだろうと推測します。

「子持ち様」の発言の原因は会社にある!といって決着させている記事を読みました。
業務量の分散や、負担を担った人への補償的な賞与を渡せば確かにある程度溜飲は下がるのだと思います。

でもそれって、「子持ち様」という発言をした人から攻撃のネタを奪うだけで、実質的な解決にはならない気がしているのです。

というのも、「子持ち様」のSNS投稿は、

「ワーママが抜けた穴を埋めた結果残業を強いられ苦しんだ」

という、反論しにくい苦労を盾にした攻撃であり、その裏には、子持ち世帯は「特権階級」であるという認知があると私は捉えているからです。
要は、苦労をかけられていようがなかろうが、「特権階級」である子持ち世帯に対して鬱屈した不満があるのです。

「特権階級」に物申したら世間から叩かれる。
少子化の世の中だし、純真無垢な子供を育てる世帯を非難したらきっと無礼討されてしまう。
でも、誰も反論できない苦労を盾にすればきっと同情を集めることができる。
そういう心理が「子持ち様」のワードチョイスから見え隠れする気がしているのです。

この記事では「子持ち様」の背後にある特権階級認知に対して私なりの理由を示し「子持ち様」と発信する発言者の甘さを追及したいと思います。


なぜ子持ち世帯は「特権階級」認定されるのか?

「子持ち様」という言葉の背景には、優遇されている「特権階級」であるという認知が間違いなくあります。

そして、実際に、制度として産休育休はありますし、時短勤務もある。子供の病気に伴う有給が付与されている会社もある。子育て支援金や手当もあるし、子供の医療費は無料です。

事実、優遇はされているのでしょう。

ただそれって、障害者の方が障害者雇用促進法に基づき雇用の枠が確保されていたり、障害者手当を受け取ることができることや、病気になった方が休職制度に基づき休職して、傷病手当をもらうのと変わりはないはずなのです。

しかし、間違っても、「障害者様」や「病人様」なんて言葉で揶揄することはないのです。
そんなことをしたら、確実に叩かれるから。
たとえその結果として、業務の皺寄せがきたとしても、支え合うのが当たり前だよね、ということになり、誰からも同情されないからです。

では、なぜ子持ち世帯が優遇措置を享受すると「特権階級」という評価になるのでしょうか?

それはやはり子持ち世帯は、そんなに大変じゃなくない?ずるくない?そもそも、助ける必要なくない?と思われているからなのだと私は思っています。

そのような認知や思想はどこからくるのか?

子育て世帯の現実に対する無知、嫉妬などあるのかもしれませんが、この記事では以下の2つにフォーカスしたいと思います。

  • 子育て自己責任という不寛容文化

  • 一生懸命を礼賛する文化

子育て自己責任という不寛容文化


おそらく、子持ち世帯を敵対視する人々の多くは、

子供を産んだのは自分の選択なんだから、他人様に迷惑をかけずに自分で子育てしなさいよ

という考えが念頭にあるのだと思います。
子を持つ選択を自分でしたのだから苦労も引き受けろ、他の人に迷惑をかけるな、という自己責任論。

本当に不寛容ですよね。

そもそも、この日本における他人様に迷惑をかけてはならない、というルールは一体誰が制定したものなのでしょうか。

免疫を十分に獲得できていない乳幼児が頻繁に体調を崩すのは当たり前です。
そして、保育施設は他の子への感染やその子供自身の重症化を防ぐために親に迎えにしてもらう必要があります。

この場合、選択肢は親または祖父祖母が迎えに行く以外の選択肢はありません。

それを批判することの不寛容さをまず深く理解してほしい。

また、そもそも子どもに対して世間は厳しすぎませんか?

発達過程にある子供が走り回り騒ぐことは当たり前です。
子供がやたらと物を落とし、こぼすのは手の機能がまだ発達していないからです。


それを、いちいち、バスの中で〇〇の制服を着ていた子供が物をこぼして汚しただとか、スクールバスの停車場で騒いでいた、などとクレームをしてくる人がいます(現に、学校から、こんなクレームがきたので注意してくださいというお知らせを何度も受領しました)。

何を言っているのだ?という思いです。

レストランで少し子供が大きな声を出しただけで眉をひそめ、店員から困り顔で注意される。日本の日常茶飯事ですよね。

この不寛容さは、日本人に、他人様に迷惑をかけてはならないという謎の規律意識があることに加えて、社会全体で子供を育てるという感覚が大変希薄だからなのだと思います。

私がいま住んでいるタイでは、みんなが自分の子のように、子供を慈しみます。

何ならお店の従業員が口の周りをベチャベチャにしながら食べているうちの子のお口を笑顔で拭いてくれたりします。

BTS(地下鉄)の優先席には子供が座れます。100%に近い確率でうちの子が席の前に立つと笑顔で席を譲ってくれます。

自分で産んだんだから自分でその苦労も引き受けろという精神は一切見えません。

また、そもそも子供連れを前提に遊び場を併設したレストランも多く、子供用の室内遊び場もものすごく充実しています。
子供が大騒ぎするのは当たり前だから、その前提で社会が準備してくれているという印象を受けます。

そもそも、タイで、大人が子供を怒っているシーンに遭遇したことがないのです。
たまに日本人の親が子供を注意したり怒ったりすると、周りのタイ人が驚いて子供を慰めるようなコミュニケーションをとってくれたりします。
子供が騒ぐのは当たり前で、怒るのは筋違いだ、といった感覚があるような気がします。

日本との感覚の違いに感嘆する日々です。

そのような中で一時帰国をした際、早速日本の不寛容の洗礼を浴びました。
絵本が置いてある子連れOKのカフェで、久しぶりに子連れで友人とご飯を食べていた際、子供がはしゃいで大声を出した時、隣の人が、「うるさくなってきたから店変えようか」と忌々しげに私たちを睨みつけ去っていきました。

心底、この国に未来はないと思い暗澹たる気持ちになりました。

このように、日本では子育て自己責任という不寛容な文化が浸透しています。

その結果、自己責任なのに他人様(=同僚)に迷惑をかけ、優遇されている子持ち世帯は特権階級(=子持ち様)という認知に繋がるのだと私は思います。

一生懸命を礼賛する文化


日本って、一生懸命を評価しますよね。
どれだけ大変か、辛いかを表に出して、自分の立ち位置を確保しようとするというか。
残業の文化なんてまさにそうです。
残業=頑張ってる、大変、偉い。
会社に出社してお昼も食べずに仕事している=偉い。

で、それを、周りに示すことで、立ち位置を確保する。会社で頑張っている人、というポジションをとりにいく。

このような文化で働くワーママは、ワーママ自身、めちゃくちゃ肩身狭いのですが、それはなぜかというと、周りが、長時間働く一生懸命をなんとなく評価するからです。

その反作用で、子供の熱で離脱するワーママは、怠けているという認定が下るのです。

しかも子供の熱とかいうと、お母さん自身は何ともないわけですから、見た目に苦労がみえない。
病人や障害者のような苦労が見えない。
だから、なんか嘘ついてんじゃない?みたいな穿った思想すら湧き出てくるのです。

それが薄々わかるからワーママは必死で証拠を発信するのです。
体温計の写真や子供の発熱の写真を送ったりして、辛い!!をアピールし、嘘じゃないよ!を伝え、更には、同情票を集める。
そんなことまでやっていたりするのです。

かくいう私も、連続して休む時は、めちゃくちゃ詳細を伝えます。病名も伝えます。うちの会社はかなり理解がありますが、予防的に発信しています。
なぜかというと、日本ってそういう国だから。
日本人の体質なんてここ数百年で変わらないです。

一生懸命を礼賛する精神はそれこそDNAレベルで浸透しています。

日本で、退社の時にかける言葉は

「お疲れ様でした。」
「ご苦労様でした。」

ですよね。

疲れや苦労に様つけて敬っていることからしても、一生懸命やって疲れることは美徳、という感覚は潜在意識に溶け込んでいるのです。

毎日毎日この言葉を聞いていれば、誰しもが、疲れるまでやらないといけないんだなーという意識を持つようになります。

言霊ですから。

外資系企業で働くタイ人から、

「なんで日本人は早朝に出社して遅くまで働き、かつ、みんな同じ場所に固まって仕事をするのか?」

と聞かれましたので、私はこう答えました。

「私、めっちゃ頑張ってるって周りに見せたいからだよ。」

タイ人の友人は爆笑して言いました。

「何のために?」

おっしゃるとおりです。でも日本は、

一生懸命、苦労してる、辛い、頑張ってる、石の上にも三年、自己犠牲、堅忍不抜とかすそういうの大好きなのです。
それを評価するのです。

で、目に見える長時間労働は一生懸命を分かりやすく示すことができるのでみんなそれをやるのです。

だから、子持ちのママが幸せに笑顔を振り撒きながら軽やかに働き、残業せず、度々、子供の熱を理由に退社するのはダメなのです。

それは怠けていることになるのです。そして、「子持ち様」認定されるのです。

そういう時は悲壮感を全力で出しながら、定期的に発熱状況を報告し、一生懸命をアピールするのが日本では正解です

そして、おかげさまで!!と言いながら、でも苦労を滲ませ(しわしわな服とか着て、髪を振り乱し)、みんなに悲壮感漂う笑顔で、お礼を言えば、
ああ、大変なんだ、私と同じくらい頑張っているんだ、と安心して優しく接してくれます★
(ああ、馬鹿らしい)

それが日本人です。

ワーママのみなさま、子持ち様の言葉の背景には、一生懸命を礼賛する謎の精神があるのだなあ、と思って、薄目でこの日本の世の中全体を嘲笑いましょう。

一生懸命を礼賛するのもう禁止!!

しかし、この一生懸命を美徳とするやつ、そろそろ意識的にやめませんか?

一生懸命を礼賛するから、みんな一生懸命をアピールしないといけなくて疲弊し、余裕がなくなり、我慢合戦を繰り広げて他者を攻撃しているとしか思えないのです。

結果として子供を社会全体で見守るような精神的余裕がなくなり、子育て世帯を敵視して攻撃していると思うのです。

ましてや、日本の低レベルな会社では、まだ不機嫌に一生懸命やっている風の人を評価しています。

不機嫌なのは一生懸命頑張って苦労している結果であり、従って偉いという歪んだ認知に基づく評価なのだと想像します。

でも、自分の機嫌を自分で取ることはもはやプロフェッショナルとして当たり前のことです。

グローバルスタンダードではこれができない人は低脳の評価です。

笑顔で生産性高く幸せに楽しんで仕事をしている人を評価してください。

攻撃は甘えです。


さて、「子持ち様」の裏にある特権階級認知がなぜ生じているかを語りました。

歪んだ認知の原因は日本人に遺伝子レベルで染みついた悲しい文化にあります。
そして、一生懸命を礼賛する文化によって生じる余裕のなさから、子育て世帯の現状を知ろうともせずにただ攻撃をしているという構造なのだろうと私は思っています。

ただね、仮にそういう認知があるとしても、子育て中の方が早退することは、命ある子供を育てるための当然の前提条件なので、それによって、過重労働になるなら意見を出して改善してください。

子どもが発熱した場合、頼れる親族がいない限りは親が迎えに行く以外の選択肢はありません。

でも、業務負荷は1人で抱える以外の選択肢が必ずあります。断言できます。会社ですから。

改善できないのはそれこそ自己責任です。
会社が改善してくれないなら転職してください。
人材不足のいま、優秀な人ならより条件の良い会社が見つかります。
優秀じゃなくて、我慢や一生懸命を評価してもらい、今の会社に残り続けないといけないのであれば、本来は敵ではないはずの子育て世帯に牙をむくのでななく、腐らずに考え方を変えてください。

自分で行動してより楽な道を追求してください。
そうでない限り、永遠にどっちがより辛い?という不毛な合戦を繰り広げることになります。

過重労働が辛いなら変える。できないなら転職する。それもできないなら黙ってその場で幸せを見つける。

子持ち様の議論の中で、会社の問題と片付けるのはやはり違う。

嫌なら人を攻撃する前に自分で変える、変えられないなら自分の考え方を変える。
どこまでいっても自分であり、敵でも何でもない子持ち世帯を攻撃するのは筋違い甚だしく、甘えています。

不妊治療中の人が「子持ち様」の発信主体であるなら

但し、一つだけ。
仮に、「子持ち様」の発信主体が不妊治療中の方である場合は、ある程度、国や会社の問題として帰着させる余地はある気がしています。

不妊治療中の人が、自分の通院の予定を犠牲にして、子育て世帯の発熱早退による業務をカバーしているのだとすると、それは老老介護のようなものだと思うからです。

不妊治療については、国や会社がもう一歩、対応して欲しい。
不妊治療が健康保険適用になったのは本当に素晴らしい。
ただ、次は、不妊治療を受ける人のサポートもお願いしたい。不妊治療は心身ともにきついですし、急な早退をせざるを得ない状況もあります。
そのための有給制度を作ると良いと思います。

そして、不妊治療はもっとオープンにして良いと思います。何も恥ずべきものはありません。不妊治療こそ社会全体で支えて欲しい。
だって、超少子高齢化の日本で、子供を切に願っている家庭ですよ。

仮に「子持ち様」の発信主体が不妊治療中の人だとしたら、ともに意見を言いたい。

しかし、やはり矛先は子育て世帯ではないです。

訴えるべきは国や会社だし、もし、他者に支えてもらいたいなら不妊治療の事実をオープンにしてください。
心の底に秘めて我慢して、無関係の人を攻撃するのは不毛です。

結論

「子持ち様」と投稿して同情票を集め、子持ち世帯を攻撃する暇があったら自分で改善してほしい。
そして、日本がグローバル社会において信じられないほどに子持ちに対して不寛容である事実を知ってほしい。

子持ち世帯は、悲しい言葉の背後にある日本の残念な文化発言者の甘えを認識して溜飲を下げ、

何も気にせず軽やかに笑顔で子供を迎えにいってあげてください。


以上でした!

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