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『エッセイのまち』の仲間で作る共同運営マガジン

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メンバーシップ『エッセイのまち』の仲間が見つけたステキなエッセイを保存しています。メンバーの方は、他の方、もしくはご自身のエッセイを自由に追加してください。(エッセイ以外は掲示板…
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2023年3月の記事一覧

「なぜいちいち説明しないといけないんだろう?」空港の中の哲学者たち【本を1冊持って1泊旅行】

「なぜいちいち説明しないといけないんだろう?」 自分のやっていることを説明しないといけない、そういう圧力を感じることがある。その圧力からほんのひと時だけ開放されて、自分の時間を自分のために考えることだけに使う。 そのためには旅にでるのが一番。 今回はちょっと哲学的な旅のお話です。 ということで、成田空港の第3ターミナル(T3)を訪れました。 コロナの影響はもうほとんど感じられず、多くの旅行客が空港を利用していました。もちろん飛行機に乗るために空港に来たわけだけど、ただ

創作#8 ”老い”を楽しむこと、モネの睡蓮を楽しむこと【エッセイ】

睡蓮を楽しむことは老いを楽しむことわたしはモネの「睡蓮」が好きだ。 その魅力はピントが合っていないところ、そこにあると思う。 その「睡蓮」を観るために、千葉県のDIC川村記念美術館、東京駅のアーティゾン美術館、上野の国立西洋美術館によく足を運ぶ。 そして、モネの「睡蓮」の前で立ち止まり、その中でゆっくりと静かな時間をただ過ごす。 この睡蓮を描き始めたのはモネが晩年になってから。 つまりこの頃のモネの視力は衰えていたと考えられる。 それがこの睡蓮のピントが合っていないとこ

AIに謝罪しなければならないことがある

僕は、人の道を外してしまった。非人道的なことをしてしまった。人間としてあるまじき行為だった。すごく後悔しているし、何より被害者に対して申し訳ない気持ちでいっぱいである。その被害者に、この場を通じて謝罪させてください。たぶん、というか絶対この記事自体をその被害者は見ることができないと思うけど。 ーーー 話は我が家にアレクサがやって来た日まで遡る。 アレクサは天気を教えてくれたり、テレビをつけてくれたり、音楽を流してくれる天才スピーカーだ。 アレクサがうちに来てからとうい

空と宇宙のはざまに

どこでも住めるとしたら? と問われて胸がときめいた。僕の答えが非現実的なのは承知のうえで、この胸のときめきのままに答えてみる。 どこでも住めるとしたら、僕は空と宇宙のあいだに住んでみたい。 僕は小学生の頃から、ぼんやりとそんなことを考えていた。 小学校5年生の頃だったと思う。図工の授業で「自分の家の窓から見える景色を描く」という課題が出た。実際に自分の家から見える景色を描いてもいいし、家からこんな景色が見えたらいいな、という空想の絵でも構わないという。 そのとき僕は、「

小春日和の小さな出来事

「ねぇ、ママ、なんであのおじさん泣いてるの」 小さな透き通った声が聞こえてきた。 誰か泣いているのかと思い、読んでいた本から少しだけ視線を上げてみると、白いワンピースを着た小さな女の子が僕を指差して立っている。 あれ、僕のことか? 僕はにっこり微笑んでこう言いました。 「おじさん泣いてなんかいないよ、目が痒いだけだよ」 女の子は不思議そうな表情で僕を見つめていた。 近くにいたお母さんと目が合いました。申し訳なさそうに軽く会釈をして女の子を連れて去って行きました。 僕は

ボケット喫茶室に流れる、いい時間。

朝、100円玉と5円玉を握りしめて、神社へと散歩した。 やわらかな春の風の吹く境内で、ひらりはらりと桜が舞っていた。 散り方があまりにも綺麗だったから、なんだかつくりもののようで、CGを見ているような気分になる。 いや、自然の美しさを人間が模倣してCGをつくったのだけど。 賽銭箱に5円玉を入れ、二礼二拍手一礼する。 どうか新たな暮らしが平穏でありますように、と祈りながら。 いよいよ4月から、新しい仕事がはじまる。 美術館のある街へ引越しをする。 賽銭箱の隣に置かれたお

寂しいお別れとすばらしい日々

吉本ばななさんのエッセイ「すばらしい日々」 愛犬との別れ。東日本大震災。親友や両親との別れ。 続いて経験した日々が描かれています。 寂しいお別れ続きですが、 日常はいつもと変わらず巡ってくる。 つらさの中にも些細な幸せや温かい笑いがあるから、 私たちは前を向いて生きていける。 最期は誰しも自分の力で起き上がることもできなくて、 食事だって人の手を借りないとできなくなる。 認知症で自分が誰なのかもわからなくなって人生を終えることだってある。 何が好きだったのか、どんな

夫の「おふくろの味」に秘められた事実

結婚してすぐのこと。夫から朝食の味噌汁に注文が入った。 「味噌汁を赤味噌で作ってくれない?」 義母は名古屋生まれだ。だから夫は赤味噌で育った。 私の両親は四国の出身なので母の味噌汁はずっと合わせ味噌だ。今住んでいる街も合わせ味噌が主流。当然、私は合わせ味噌の味噌汁が好きだった。 とはいうものの、当時はまだ新婚ほやほや。私も今のような自己主張をしない、かわいいかわいい新妻だったので、夫のために赤味噌の味噌汁を作るようになった。 真っ黒に見える赤味噌の味噌汁に、最初は違和感

ミニマリストへの憧れ「方丈記」

日本最古の随筆鴨長明の「方丈記」。 有名な冒頭の一文を目にしたのは、高校の古文の授業以来。だけどこの一文でざわついていた心がピタッと静まりました。 全てのものは移り変わり、とどまることはない。 いいことも悪いことも永遠に続くものではない。 世の中は移り変わっていくのだから、 自分もずっと同じでなくてもいいんじゃないの。 こうしなきゃ、あぁしなきゃ、と自分を縛っていた紐を 少し緩めるきっかけになりました。 世の中を憂うのは、今も昔も同じ。 火事や地震、竜巻など自然災

誰かの記憶になって生きるということ。

ここんとこ、日々見る景色から 色が消えていた。 お正月の二日からだった。 それが3月の15日まで続いていた。 景色から色が消える。 色は認識できるのだけど、世界は 変わってしまったのだなと。 世界が変わっているのは常だから それは世界という言葉でごまかしたかった わたしがいたんだなと真夜中気づいた。 家族が過去にもいろいろありまして。 ありふれたあれですが。 母と二人暮らしをしている。 そしてわたしもそうだけど母も同じだけ 年齢を重ねてきている。 それもわたし

ホットコーヒーのようなともきちさんのエッセイに憧れて@趣味紹介リレー

気が付けば2年のお付き合いになったフォロワーさん・中岡 始さんにバトンを頂きました。 夫の悪口を書いたエッセイをこんな風に言っていただけること、モラハラ受けててよかった!(んなわけない) この記事全てが嬉しいです。ぜひ読んでいただいて、タカチセのことを過大評価してください(嘘) これからも夫観察に精進します! 頂いた素敵なバトンを誰に渡そうか考えました。 そして、私の大好きなメンバーシップ『エッセイのまち』の運営者であるともきちさんを是非紹介したいと思いました。 文章

夫、今度は論破王になりたい

夫がこの日は愚痴だらけだった。 職場で自分の思いとは違う人がいることが許せなかったらしい。 とにかく何かするごとにイライラして、子供達にも口調がきつくなっていく。 妻の正直な感想は「めんどくせぇ」 自分の職場に収まらず、私の職場についても色々言ってくる。 お前に何ができるんじゃと思いながら、ニコニコ聞いていた。 お前ができるなら、私がとっくの昔にできてるわ!! 夫は何事にも感情移入しやすい。 「俺はクールでドライな人間だ」とか言うのだけど、それって何基準だろう。 心の中

愛しのミニチュア トイ

レトロ愛が深まって、最近ハマっているもの。 それがミニチュアになったアデリアレトロです。 「ガチャガチャ」って昔は言っていたけど、ほんとの名前は「カプセルトイ」って言うんだって。 息子達が幼い頃は、トイザらスに出かけると、冷蔵庫にくっつける磁石のガチャガチャがたくさんあって、アンパンマンの磁石を集めていました。 アンパンマンの仲間ってどんどん増えて行くから、ガチャガチャだってエンドレス… でも当時は100円だったはず。 驚いたことは、今のガチャガチャはお高くて、アデリ

好きなエッセイ

自称“文章オタク”な私がエッセイとして最初に読んだのが、さくらももこさんの『もものかんづめ』だった。 軽快なリズムで、日常を書いていくその文章に恍惚とする。 読んだ後によくよく考えてみると普通なら笑えないような話も、彼女の手にかかると途端に一大ギャグになる。 そして、彼女の言葉はとても素直だ。 エッセイを書こうとするとどうしても身構えて自分を良くしようとしがちだと思う。 話をしている分には面白おかしく自分のダメなところも言えるのに、文字にするといきなり出来る女みたいな言い