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整形、痛いよ、全部



玉の輿もシンデレラもすべて美人の物語だ。古今の劇的な恋の物語のヒロインもすべて美しい女だ。美人がすべてシンデレラになれるとは限らない。しかしブスにはそのチャンスさえない。

百田尚樹 2010年 「モンスター」幻冬舎




私は生まれつき、極悪人みたいな目つきをしてた
普通にしてるつもりなのに、
「なに睨んでんの?」
って言われてしまうような目
一重で、目の開きが悪くて、細い目
自分の醜い顔が大嫌いだった


小学生のころ、男子が作ったブスな女子ランキングで優勝した
中学生のころ、ブスだからと男子に無視された
高校生のころ、裏でバケモノと言われた
大学生になって、アイプチとカラコンをした
少し周りの態度が変わった気がした


19歳、彼氏ができた
お泊まりデートの時、お風呂に入って顔を洗ったら一重になってしまうから困った
朝起きてこんなブスが隣で寝てたら「帰れ」って言われちゃうだろうなと思った
朝はやく起きて、こそこそアイプチした
整形を決意した


20歳になる直前、二重に整形した
成人する自分へのプレゼントだと思った
アイプチするよりも、綺麗で、大きな目が手に入った
やっと、初期装備を手に入れた気分だった
もっと綺麗になりたくて、化粧や服装を研究した
とにかく時間とお金を自分の容姿に投資した
すれ違う人に可愛いと言われることが増えた
数年前の私では信じられないことだった
自己肯定感が上がった
人生が楽しくなってきた
「美」はなんて価値のあるものなんだろうと思った



25歳の今、たまに二重の調子が悪くて一重になってしまう時がある
そんな時鏡を見て思う
かわいくない自分に価値なんてないねん
目がぱっちりしてないと人生楽しくないねん
極悪人みたいな目をしてたら
誰も可愛いって言ってくれないねん
目を合わせてくれないねん
優しくしてくれないねん
人として扱ってくれないねん


「たかが目の上に線がひとつあるかないかの話でしょ
くだらねー」
そう思われてしまうでしょうか?
でも、くだらねーと思われてもいいんです
私は、辛かったんです
だからこんな風に執着してしまうんです
なんとかして、顔も、人生も変えたかったのです

 


初めて整形した日のことを思い出す
麻酔のため、目に針を刺した瞬間
チクっとして痛かった
施術中は目が引っ張られてる感があって、辛かった
麻酔がとれたあとも、しばらくは不自由だった
でも痛かったのは、辛かったのは、その瞬間だけじゃない
生まれてから可愛くなるまで、ずっと心が痛かった
相手の見た目によって態度を変えるような人から雑な扱いされたり、男性から顔について酷いことを言われたり
そういう過去全部、全部含めてずっと痛かった
もう、痛いのは嫌だ


本当は
ブスでも、ありのままの顔でも、可愛いねって誰かに言ってもらいたかったよ
福沢さん何人も手放して目を二重なんかにしなくても、普通に誰かに好きって言われる人生でありたかったよ



来世は最初からスタート地点に立てるような顔で生まれたいなあーなんて。



終わり


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