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超アナログPがIT社長になってWord講習したら社員の人生を変えた話(前編)~組織開発日記#13

エクセルってのは、番組スタッフのシフト表を作るためのもんだって思っていたのであります。
 
それが「計算」できるヤツと知ったのは、今からおよそ20年前の2004年のこと。僕はレギュラー番組の他に、当時売り出し中のくりぃむしちゅーさんの「コント特番パート2」のプロデューサー兼ディレクターをしておりました。


エクセルの衝撃

元々「全員集合」や「加トちゃんケンちゃん」という番組で、「おもしろい番組をつくるためには金に糸目はつけない」というマインドが染みついていた僕は、その後の「さんまのSUPERからくりTV」でもそのきっぷの良さを存分に発揮し、「数字(視聴率)は取るけど予算はまもらない」荒くれ者として、社内ではちょっとした存在にできあがっておりました。
 
ところがレギュラーの「からくりTV」や、「くりぃむ特番パート1」での赤字(制作予算オーバーのことを当時そう呼んでいました)が問題視され、その「くりぃむ特番パート2」では、会社から「番組予算厳守」のお達しが来ていたのです。
 
以前の僕であれば「そんなの無視」と生意気コイていたところですが、当時すでにキャリア20年の42歳、酸いも甘いも噛み分けて、組織で生きるサラリーマン制作者の悲哀も感じていたお年頃。
なによりもその企画は、僕から会社に持ち込んだもので、なんとしてでも、ゴールデンのレギュラーに育てたいブツであったため、会社から提示された厳しい予算と厳守のお達しを、泣く泣く飲んだという訳です。
 
予算厳守。

そこで、番組のAP(アシスタント・プロデューサー)と、綿密に予算の見積もりを立てることにしました。
僕が、出演者のギャラがいくら、構成作家は何人でそれぞれいくら、車両費はこれくらい、スタジオは・・。と読み上げるのを、そのAPは電卓をたたくわけでなく、パソコンに入力していきます。(何やってんだろう?)
 
いつものシフト表を作る表のソフト(あとでわかる、それがエクセル)です。最後に彼女は、カチとどこかをクリックしました(あとでわかる、それがオートSUMボタン)。
するとなんと、表の一番下に、合計額が出たではないですか!
 
「おおーっ!」思わず声を出す僕に、
 
「どうしました?」とAP。
 
「そ、それ、計算できるのね?」

APは、なにか可哀想な動物でも見るような目で僕を見たあと、膝に手を置いて、コックリとうなずいたのでした。
 
そんな僕が、今や社員相手に、WordやExcelの勉強会の講師をしていると言ったら、どうでしょう?

晴天の霹靂

「8時だョ!全員集合」という番組は、大がかりなセットや仕掛けで知られています。あれ、すべて人力なんです。基本的に人海戦術。僕はAD時代、場面転換でセットを押したり、マットをたたんだり、コントで上からタライを落としたりしていました。
ずっとそういう世界で生きてきて、プロデューサーになっても、エクセルも知らなかった超アナログ人間の僕が、あろうことかTBSグループのIT部門などを担う会社の社長になり、そうしてワードやエクセルの使い手になっている。
いつの間に、そうなったのか?なんで、社長がワード勉強会なんて自らそんなことをやっているのか?やたら細かい嫌なヤローなのでは?
 
なぜ僕がワードやエクセルの「使い手」になったのか。

それは「くりぃむ特番2」の最終収録日。これから砧のスタジオに向かおうとする直前、局長からの呼び出しがありました。

「また金の使いすぎを注意されるんだろうなあ。そうしたら、言ってやろう。『局長、大丈夫です。予算管理はエクセル全開ですから!』・・我ながらうまいなあ。アクセルとエクセルをかけたのが局長わかるかなあ・・」
などとアホまるだしのことを考えながら、局長室に入り、促されるままソファに座ります。

 すると突然、管理会計部門への異動を命じられたのです。辞令は3週間後、2004年7月1日。 

これは、大変なことになりました。

(つづく)





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