子供のためのルーブル美術館(34)黒のドレープ/前代未聞の共同購入・ルーブル美術館とオランダ美術館が買ったレンブラント
2枚の肖像画のきまり
今日の絵は、ルーブル美術館とオランダ美術館が共同で買った絵です。
5年間ずつ、フランスとオランダでかわりばんこに展示するという珍しいきまりがあります。
そして必ず2枚いつも一緒に飾らなくてはいけないという約束も。
ふたつの違う国の美術館がお金を出し合ってまで買ったレンブラントの絵とは、いったいどういう絵でしょう。
エレガントな黒
モネやルノワールは黒は使いません。
でも黒はおしゃれな色。400年前の黒い絵をちょっとのぞいてみましょう。
1枚目、
自信に満ちた堂々とした立ち姿。黒に白のレース、銀色に輝く飾りがきれいです。
でも一番目立つのはどこ?
やっぱり靴。
銀の糸でできた丸いロゼットが、歩くたびにきらきらひかります。
そして、この豪華なプリーツのそで。
レンブラントは黒色につやのある美しい曲線で、プリーツを描きました。
手袋を持つ手は、おとなりの2枚目の絵を指さしてこちらに紹介しています。
2枚目。
静かな顔の表情、そして後ろのカーテンの色も地味で暗い色なのに、
この女の人は優雅で華やかに見えます。
1枚目の絵と同じ黒でもこちらはうすい黒の布。ドレスのもようが現れてやさしい黒です。
真珠のブレスレットに、細やかに透けて見えるレース。
おしゃれのポイントはやっぱり、白ですね。
さて問題。
顔にわざとつけたなにか、おしゃれなものに気がついた人はいますか?
よく見てね。
お顔の色の青白さを強調する昔のおしゃれ、
わざと黒の丸い布(ムーシュ)をおでこにつけています。びっくり!
レンブラントは、目の前にいる人をよく観察して、見たままに、ありのままを描いたので、その人の持っている性格や雰囲気まで伝えることができました。
先月、ふたりはアムステルダムの5年の旅を終えて戻ってきたばかり。
今年から5年間、パリのルーブルにゆっくり滞在するのです。
Rembrandt Harmensz. van RIJN, dit REMBRANDT
Portrait de Marten Soolmans, 1634
Portrait d'Oopjen Coppit, 1634
レンブラント・ハーメンツ・ファン・リーハン
マルテン・スールマンスの肖像 1634 Rijksmuseum所蔵
オッペン・コピットの肖像、1634 ルーブル美術館所蔵
お読みいただきありがとうございました。
先月、5年ぶりにフランスに戻ってきたペアの絵をご紹介しました。
深い黒に輝くばかりの白。繊細なレースや飾りが本物のように迫ってくる等身大の大きな絵。レンブラントの現実を忠実に瞬間をありのままに描いた美しい作品でした。
2枚の絵をめぐっては、当時フランスにあったものですがオランダも取り返したく、2014年にロスチャイルド家から、2点合計1億6000万ユーロでフランス、オランダ両国で買い取られました。
国家同士の合意で調印され、決して貸し出ししたり、1枚ずつ別々に展示することはしてはならない、ということですが、現実の2人は当時とっくに離婚し再婚していた…という事実もあるようです☺️
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