派遣やSESで市場価値の高いスキルは身に付くのか
Twitterで定期的に観測される、以下の意見。
SESはスキルが身に付かない
SIerはExcel職人ばかり
自社開発はスキルが身に付く
ほとんどの人は自分の体験を元に意見を言うので、どうしても偏った意見になりがちです。
同じSIer、同じSES、同じ自社開発でも企業によって文化や方針は全くといって違いますので、実際のところどうなのか?というところを紐解いてみたいと思います。
そもそも市場価値の高いスキルとは?
例えばプログラミングスキルやインフラを構築、コード化をするといった、いわゆる「手を動かせるスキル」の市場価値が本当に高いのか?というところを考えなければなりません。
まず市場価値の高いスキルが何なのか?という定義から整理します。
転職の際に選択肢が多くなるスキル
高い給与を得られやすい
長期的に食いっぱぐれしにくいスキル(職を失うリスクが低い)
私なりの言葉で端的に言うと市場価値が高いというのは「選ばれて採用されるエンジニア」から「自分で好きな仕事や好きな企業を選べるエンジニア」になれた状態を指します。
一般的にイメージされる「手を動せるスキル」が市場価値が高いかと言うと、「転職の際に選択肢が多くなるスキル」というのは該当すると思います。
なぜなら手を動かすエンジニアというのはメンバーポジションのエンジニアが担当するケースが多く、マネージャーやリーダーと比較して必要となる人数が多いからです。
次に「高い給与を得られやすい」のか?という点で見ると、これは「結局はその企業による」という要素が強いため、一概に高給取りになれるなれないの話は出来ません。
ただし、間違いなく言えることはスキル云々よりマネージャーやリーダーと言ったいわゆるマネジメント層(役職)の方がメンバーより給与が高いということで、これは誰にでも想像出来るかと思います。
もちろん手を動かせてマネジメントも出来る!というのは間違いなく市場価値は高いと断言出来ますが、誰もがなれるかと言うとそうではないので例外とします。
「長期的に食いっぱぐれしにくいスキル」かどうかはポジションより担当する業務や扱う製品によりけりなので、ここポジションとの関連性はありません。
上記の内容から、手を動かせるプログラミングスキルやインフラを構築、コード化をするといった、いわゆる「手を動かせるスキル」の転職の際に選択肢は増やしやすいが、高い給与を取りやすいかと言うとそれは働く企業次第という結論になります。
マネージャー経験は高い給与を狙いやすい
同じ会社の中であれば基本的に平社員より役職の方が給与は高くなります。(平社員が長時間残業をして残業代をもらうというような例外を除き)
「手を動せるスキル」の経験とは違い、リーダーやマネージャー経験を積んだ人の市場価値は以下になります。
どの企業もマネジメント層や中間管理職は不足しており、需要は高い(転職の選択肢は多いが、ポジション数は限られるため倍率は決して低くない)
マネジメント手法は企業によって様々だが、根本的にはメンバーを統括して利益を出すという点では同じのため、汎用性は高い(=食いっぱぐれるリスクは低い)
平社員と比較して給与水準は高いため、高待遇を狙いやすいよ
管理職は管理ばかりで手が動かせるスキルがないと言われるケースがありますが、もちろん日常的に手を動かしているメンバーポジションのエンジニアと比較したら手を動かすスキルは確実に劣ります。
しかし、大抵の人はメンバーポジションを経てマネージャーポジションに就くため、手を動かした経験は十分に持っていることが前提となります。
つまり、バリバリに手を動かせなくても顧客や配下のリーダーやメンバーと対等に会話ができる程度には知見がないと、それはただの経験不足という話になります。
少なくとも顧客やプロジェクトメンバーと対等に技術的な議論が出来ないエンジニアが大手SIerでPMになることはまずありません。
また、企業の規模が大きくなるほど分業化されるので管理職はマネジメント業務に専念できますが、ベンチャー企業といった中小企業になるほどプレイングマネージャーになりがちというのも実情です。
前述の手を動かせてマネジメントも出来る!というエンジニアを目指すのであれば小さめの企業に行くほうが良いでしょう。(長時間労働も問題になりやすく、過労になるケースもありますが、、、)
派遣やSESでマネジメントスキルを経験できるのか?
前置きが長くなりましたが本題です。
役職でなくてもプロジェクトの中でプロジェクトマネージャーやプロジェクトリーダーといったポジションを経験することができれば、転職市場ではほぼ同等に評価されます。
何故ならプロジェクトマネージャーも企業の役職と同様にスケジュール管理やコスト管理、品質管理と言った利益を出す上で基本となる要素が身に付けられるからです。
派遣やSESというと基本的にプロジェクトの中でどこかしらのポジションで仕事をすることがほとんどですが、市場価値の高いマネジメントスキルが経験できるのは一体どこにあるのでしょうか?
プロジェクトの体制としては大手SIerと言われる有名企業が元請けとなりプロジェクトマネージャーとして体制を組むことが多いです。(もちろん中堅企業が元請けとなるケースもあります)
弊社ラワンセの社員も多く大手SIerに就業してており、メンバーポジションだけでなくPMやPLポジションを担当することも普通にあります。
基本的に商流が浅いほど(顧客に近いポジション)高いレベルのマネジメントスキルが要求されます。
つまり大手SIer>受託>SESの順に要求スキルが高くなります。
特に元請けや受託企業で1番と言っていいほど大切なのが、「受注金額の中で赤字にならないようコスト管理とプロジェクトマネジメントを行う」という点です。これは一定の品質で期間満了すれば終了となるSESにはありません。
他にも成果物の定義や成果物の品質や前提条件の整理、合意形成といったマネジメントも必要となり、これがSESのマネジメントよりも難易度が高くなる要因です。
つまり、ハイスキルなマネジメントスキルを身に付けていきたいのであれば以下の点に注意する必要があります。
なるべく商流の浅いところでマネジメントポジションを狙う
プロパーで狙うほうがPMを経験できる可能性は高いが、派遣社員でもPMやPLを任される文化のある企業もあるので、プロパーになるのが難しければそこを狙う
SESよりも派遣契約で就業できる企業を探す
最後の一文に関しては、弊社が派遣会社だからポジショントークで書いていると思われる方もいるでしょう。
しかし、客先常駐ビジネスは偽装請負や低賃金といったような多くの問題を昔から抱えており、年々法令が整備されています。そして労働者の権利を守ろうという動きが長年に渡って続いています。
そのため大手企業になるほど監査や外部の指摘が非常に厳しく、数年前からSESでの単独常駐を禁止する、SESで来ている人にPMやPLを担当させないといった動きもごく当たり前にあります。
ちなみにここ最近では同一労働同一賃金という法令も施行され、客先常駐で働く人の待遇を上げていこうという動きもありますが、これはSESで働く人は対象外になります。(SESは派遣法関係ないので)
結論として「マネジメントスキルを身に付けたいのであれば」プロパー>派遣>SESの順に経験できる可能性は高いです。これは間違いなく。
(IT業界は異業種からの転職組も多いですが、大手SIerのプロパーからキャリアスタートできる人は高学歴で新卒入社の人といったように限られており、中途未経験組はよほど何かの経験を持っていない限りプロパーからスタートすることは非現実的です)
メンバーポジションの経験を積みたいなら派遣でもSESでも大差は無い
ここまで書いたようにマネジメントスキルを身に付けたいのであれば大手SIerやそこにコネクションを持つ派遣会社を優先的に探すべきだと思いますが、いわゆる「手を動せるスキル」を身に付けていきたいのであれば大手SIerに行くのは良い選択肢ではありません。
まだ自分は経験が浅くてまずは手を動す経験を積みたい、マネジメントポジションより手を動かすポジションで活躍したいといった事情のある方もいるでしょう。
もちろん大手SIerにも開発や構築を担当する部隊もいますが、詳細設計以降のフェーズはグループ会社や委託先企業に外注するケースがほとんどなので、手を動かしたいのであればこちらを狙った方が良いと思います。
あとは企業規模が小さいほどプレイングマネージャーになる可能性も高くなるので、短期間で詰め込んででも「手を動かせてマネジメントも出来るエンジニア」を目指したいのであれば中小企業でも良いかもしれません。
人には得意・不得意がありますので、マネジメントスキルの市場価値が高いからと言って全員が全員目指す必要は全くありません。
メンバーとの調整や顧客折衝が苦手な人だってたくさんいます。(むしろ苦手な人のほうが多いくらい)
ですから自分の目指す方向性に合わせてキャリア戦略を考えると良いと思います。
マネジメントポジションで活躍したいならいずれプロパーになれば良い?
プロパーからのキャリアスタートが狭き門と言っても、何年か経験を積んでいくうちにプロパーに誘われることもあるでしょう。
もちろんプロパーになった方が色々な意味で安定性はあるでしょう。
ただし、業務命令は基本的に絶対です。
自分がやりたくない仕事を任されるかもしれません。
転勤命令があるかもしれません。
安定性があると言っても名だたる大手企業でも普通にリストラがあるのは皆さんも見たことがあるでしょう。(大手の場合は希望退職ですが)
結局は実力がなければ契約解除になるのは派遣もプロパーも根底では変わりません。
逆に派遣会社やSESで働く以上は選ばれないエンジニアになった時点で終わりです。
年齢を重ねるごとに企業からの要求スキルレベルは高くなっていき、年齢と経験が見合わなくなった時点で就業先は減っていきます。
そのリスクを有耶無耶にすること無く、40歳や50歳を過ぎても安定して活躍できるスキルをしっかり身に付けられるよう派遣会社として社員を守っていく戦略を立てる必要があります。
自分のやりたい工程、やりたい仕事を行うという点ではプロパーより派遣社員に軍配が上がります。
もちろん実力や経験はある前提になりますが、何年やっても「自分で好きな仕事や好きな企業を選べるエンジニア」になれない派遣会社やSES企業で働く意味は正直あまり無いです。
弊社では上流工程を希望する人には上流工程に、手を動かしたいポジションからスタートしたい人は手を動かすポジションからスタートしてもらいつつも将来の選択肢が確実に多くなるようキャリアアップ支援を行っています。その実績として弊社社員の上流工程ポジションアサイン比率は約85%となっています。
もし高度なマネジメントスキルを身に付けていきたいと考えている方がいればぜひ1度お話を聞きに来てください。
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