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【随想】映画『君たちはどう生きるか』宮﨑 駿

しかし、感想の難しい映画だ。
君たちはどう生きるか。
ルー語で言うと、君たちはDo生きるか。
見たい気持ちがありながらも、伝え聞くアート映画だという評にすぐには触手が動かず、少し熱が冷めてからまだ見る気があったら観てみようとしたら、あっという間に公開から4ヶ月も経ってしまった。
なんて呑気なことよ。
まだやっていてよかったと思いながら、上映時間を確認するとしっかり2時間もある。
短尺動画に慣れすぎて、2時間を長く感じるようになってしまった。
恐ろしい身体変化だ。
とにかくでも最大限「宮﨑駿」を堪能しようと身構える。

というわけで、ここからは気になったディテールを覚書として記述する。

・階段を上がって降りるだけの描写。
・片渕須直監督の「この世界の片隅に」を彷彿とさせる火事のシーン。
・宮﨑流靴の脱ぎ方。
・風切りの七番で一本の矢を作るのに、米で糊を作るところ。
・人力車の上で弟の存在を知らされる眞人。
・疎開先の屋敷の庭の水彩画(印象派)のようなタッチ。
・教室で綺麗な肩掛け鞄を持つ眞人。
・顔の造形が崩れかかったタバコを欲するお爺さんとお婆さん。
・アリスのウサギのような青鷺。
・林の中を探索する時に腰をかがめる眞人と画面レイアウト。
・宇宙から飛来した隕石と空中に浮かぶ巨大な石。
・父にナツコの見舞いに行くように言われる眞人。
・廊下にたたずむ眞人。
・塔の入り口を塞ぐ沢山の書物。
・ダリの絵のように溶けていくナツコ。
・老ペリカンの乙事主感。
・空に二重らせん構造を描きながら上昇するワラワラ。
・ストーンヘンジのような眞人が誘い込まれる「死の島」。
・海底から水面を見上げたカット。
・オクサレ様のような、釣り上げた魚をさばいて、はらわたが溢れるシーン。
・キリコの家のテーブルの下でお婆さんたちの人形に囲まれながら眠る眞人。
・塔の中へ身体をねじ込む青鷺。
・トンネルに灯る明り。
・大叔父の場所に向かう途中の熱帯雨林の美しさ。
・産場で身体に絡みつく紙垂。
・ジコ坊のような青鷺。
・リンのようなキリコ。
・タイムリープ、異世界転生設定。
・光る石の通路。
・アリスのトランプのような大量のカラフルなインコたち。
・デイダラボッチやカオナシのような船を漕ぐ半透明人間。
・フラップターのように飛ぶ青鷺。
・青年実業家の父が大量に作っている戦闘機の風防。
・ジョルジュデキリコの絵画のような大叔父のいる神殿。
・新海誠と違い、綺麗すぎないなんとも言えない空の色。

ストーリーは村上春樹の「海辺のカフカ」とよく似ていた。
「海辺のカフカ」も少年の悪意に関する話だった。
ヒミの存在も、佐伯さんと重なる。
悪意と向き合うためには、向うの世界に行く必要があったのだ。
そう言えば、「風立ちぬ」は「ノルウェイの森」だったような。

眞人の感情の映し鏡であるどこか淋しげな世界観には、これらのディテールが必要不可欠だったのかもしれない。
眞人の精神世界が、現実世界とリンクし、アニメーションによってそれが具現化されているのだろう。
この物語は、眞人が困難にぶつかり、亡き母からもらった「君たちはどう生きるか」という本をきっかけに、イマジネーション世界(忘れてしまう夢のようなもの)へと足を踏み入れ、現実世界の悪意について理解・受容し、逞しくなって帰ってくるまでの物語である。

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