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【あがり症】情動脳と理性脳

あがり症克服のために
トライアンドエラー
(セルフ人体実験ともいう)を
繰り返した、ロン毛のあがり症です。


今回のテーマは、
「情動脳と理性脳」です。


脳科学の本を読んでいると、
「情動」と「理性」の2つのワードが
対になって書かれているのを見かけます。


今回は、これらのワードを、
あがり症という切り口で考えてみようと思います。


「情動脳」と「理性脳」とは?


はじめに、
「情動脳」と「理性脳」とは一体何なのか、
見ていきましょう。

(情動脳とは?)

その主要な任務は、人が健康で快適な暮らしを送れるように気を配ることだ。情動脳は、危険、あるいは特別な機会(たとえば、伴侶の候補)を感知すると、ホルモンを放出して知らせる。
・情動脳は、闘争/逃走反応のような、あらかじめプログラムされた避難計画を開始する。(P97)


(理性脳とは?)

物事や人々がどのように機能するかを理解したり、自分の目標の達成法や、時間の管理法、行動の順序立ての仕方を考え出したりする。(P94)

体はトラウマを記録する
/ベッセル・ヴァン・デア・コーク


情動脳は、感情や欲求・生理機能を司り、
理性脳は、思考を司っているということですね。


次に、脳のどの位置にあるのか見てみましょう。

情動脳と理性脳の位置


情動脳は、別名「原始的な脳」と言われており、
人間のみならず、哺乳類、爬虫類も持っています。


一方、理性脳は、人間しか持っていません。


いわば、人間ならではの、
高度に発達した脳ですね。


これらをまとめて、
表にしてみるとこうなります。

情動脳と理性脳


次に、情動脳と理性脳の働きを、
具体例を使って説明します。


(例)

「山を歩いている時、足元にヘビがいるのに気づき、
 恐怖により咄嗟に飛びのいた。

 しかし、よく見てみると、ロープがとぐろを巻いて
 置いているだけだった。」



この一連の行動を、
「情動脳」「理性脳」の働きに
当てはめてみると、こうなります。


・「情動脳」:危険を察知し、咄嗟に飛びのかせた。

・「理性脳」:確認して、ロープだと理解した。


つまり、危険を瞬時に察知し、
身を守る行動をとらせるのが「情動脳」



思考を働かせ、自分の置かれた状況を
分析し、把握するのが「理性脳」となります。



情動脳の働きは、理性脳の働きに勝る


ここからは、あがり症の話になります。


あがり症の方が人前で話す時、
動悸や震えといった強い身体反応に、
無意識のうちに襲われることがあります。


その理由は、前述した、「情動脳」の働き。


なぜなら、あがり症の方にとって、
人前で話すことは、危険な行為。


だから、情動脳が危険を察知し、
闘争や逃走に備えて、
身体を変化させるということです。


そして、そうなった時には、
思考(理性脳)を働かせることが難しくなる。


なぜかというと、脅威に直面した時に、
あれこれ思考していれば咄嗟に反応できないから。


つまり、脳の危機管理システムは、
理性脳より情動脳が優先されるということです。



例えば、朝礼スピーチやプレゼンの場面。


緊張に圧倒され、
手足がプルプル震えるような時には、
思考することが難しくなります。

(場合によっては、
 頭が真っ白になってしまうことも、、、)


このように、情動脳の働きは、
理性脳(思考)の働きを凌駕するほど
強烈だということです。


ちなみに、このことは本にも書いているので、
参考までに引用しておきます。

人が脅かされると、中脳と下脳の中枢(情動脳)が活性化し、前頭前野(理性脳)への血流が減少します。
〜中略〜
脅威にさらされたり、危険があるかのように感じたりすると、人は先のことを考える間もなく、防御的に反応するものなのです。

複雑性PTSDの理解と回復(P59)
/アリエル・シュワルツ

情動的覚醒は思考を支配し制御する。

われわれは情動を故意に消すことをそれほど効率よくは行えない。自分自身に対して不安を抱いたり、落ち込まなくてもいいのだと言い聞かせてもほとんど役に立たない。

エモーショナルブレイン(P360)
/ジョセフ・ルドゥ

内臓で経験する情動脳からの感覚入力が強烈であればあるほど、それに水を差す理性脳の能力が弱まる。

体はトラウマを記録する(P101)
/ベッセル・ヴァン・デア・コーク


情動脳の反応を鎮める


過去の失敗体験等によって、
あがり症になってしまった方は、
情動脳の働きが過剰になっています。


なので、その反応を鎮めないといけませんね。


ちなみに、私はどうしたかというと、
“人前で話す練習会”に、
継続して通ったことが良かったです。


その中で、
役立ったことをいくつか挙げておきますね。


・同じ悩みを持つ仲間と知り合い、
 孤軍奮闘していた状態から解放されたこと。

・人前で話すことから逃げずに、
 スモールステップで成功体験を積んだこと。

・緊張を受け入れたこと。


このようなことを行ったことで、
「危険」であった人前で話す行為が、
「安全」に変わっていったということです。


それは、過剰に反応していた情動脳が、
健全な状態に戻ったことを意味します。


そうなれば、人前で話す時の
身体反応が軽くなりますね。


情動脳に身体を乗っ取られず、
理性脳(思考)を働かせながら
話せるようになります。


まとめ


今回は、情動脳と理性脳について紹介しました。


今回紹介したように、
“情動脳の働き”>“理性脳の働き”です。


ですから、情動脳の過剰な働きを鎮めて、
理性脳が働くようにしないといけません。


そして、最終的な目標は、
以下のような状態だと思っています。

理性脳と情動脳との適切な均衡を取り戻して、自分がどう反応し、どう人生を送るかを自分で取り仕切っていると感じられるようにすることだ。

体はトラウマを記録する(P336)
/ベッセル・ヴァン・デア・コーク


ヴァン・デア・コークさんの書いていることが、
ある意味、
あがり症改善のゴールのように思います。

情動脳と理性脳のバランスを回復する


上のスライドのように、
情動脳と理性脳のバランスの取れた状態を
目指したいですね。


私の体験談が
皆さんのあがり症克服の
お役に立てれば幸いです。

(関連リンク)
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