ぼっち水族館はいいゾ~
最近、非モテの恋愛論などという何の救いもない記事を書いて気が滅入っていたところなので、たまにはこういうテイストもいいかなと、ほんの思いつきではあるが、先日ぼっちで水族館に行ってきたことを題材にしてみようと思う。
ぼっちで水族館に行くのは(おそらく)これで人生3度目である。ちなみにぼっち動物園もしたことがある。世間一般ではこれらの行動はぼっちにはハードルが高いとされている。確かにそうかもしれないが、恥ずかしさや肩身の狭さをはるかに上回る満足感が得られるイベントだと思っている。この記事を通して、ひとり水族館の良さをお伝えすることができれば幸いである。なお少しでも読みやすいように、写真多めでお届けしたい。
さて、今回訪れたのは島根県の西部、浜田市にある「しまね海洋館 アクアス」。十数年前にも1度訪れたことがあり、今回が2度目の訪問となる。十数年前のあどけない小学生の頃の僕は、まさかいい大人になって一人きりで再訪することになるとは思いもしなかっただろうが。
このアクアスは山陰地方の大動脈、国道9号線沿いにある。目印は非常にわかりやすく、下の写真のように、幹線道路を横断する形で巨大なランドマークがそびえ立っている。
駐車場に車を停めたら、いきなり水族館に入るのではなく、先ほど紹介したクソデカ歩道橋を渡って道路の向こう側に出てみることにした。すぐそこに海水浴場があるため、まずは海を見ることにしたのである。
見渡す限りの地平線である。この日は天気も良く、波も比較的に穏やかだった。
さて、海を見た後は、この後の長丁場に備えて腹ごしらえをしなければいけない。訪れたのは「めし処 ぐっさん」。地元の新鮮な魚介類を提供する人気店で、朝10時からオープンしているとのこと。
売り切れ必至の「のどぐろ丼」になるべく早くありつこうと、開店と同時に入店するつもりだったのだが、道中色々寄り道してしまい(トイレに行きたくなくても見かけた道の駅には全て寄らないと気が済まない男)、入店は10時30分過ぎになってしまった。店内にはお客さんはいない様子。混み始める前のちょうど良いタイミングだったようだ。
10分ほど待って出てきた。実に美味そうである。ご飯が見えないほど盛られ、テカテカと輝く炙りのどくろの刺身から、香ばしい匂いが漂ってくる。
そしてまずはのどぐろの刺身を一切れ箸でつまみ、しっかりと目でも味わったあと口に運ぶと、濃厚な脂と旨味が口の中に広がるやいなや、すぐにほろほろと溶けていった。たまらん。
十分にその後味まで堪能したら、続いてご飯、みそ汁を口に運ぶ。ご飯もしっかりダシがきいていて旨い。天国にも昇るような気分である。夢中で掻き込んでいたら、すぐになくなってしまうと気付いたので、なるべくゆっくりと完食。けっこう丼は小さめだったので物足りない方もいるかもしれないが、なかなか味わえないのどぐろを贅沢に使った一品だったので十分満足できた。
さて、のっけから脱線しすぎてしまった。気を取り直して本題に入らないといけない。時刻は11時、もういい時間である。歩道橋を戻り、今日の目当ての水族館本体に向かう。
ぼっち水族館を敢行するときに一番大きな壁になるのがおそらく入館チケットを買い求めることであろう。入ってしまえばなんとかなるのだが、一番最初の躊躇いや恥ずかしさといった感情に勝てるかどうかが分かれ目となる。入口の自動ドアの前でイメトレを3回してから館内に足を踏み入れ、チケットカウンターに目をやると・・・なんと券売機方式になっていた。
係員のお姉さんの「いってらっしゃいませー!」の声を背中で聞きながら無事入館。あとは思うがままに館内を徘徊し、気の済むまで魚を眺め続けるという至福の時を過ごすのみである。
気分も上がってきたところで今度は照明が暗いエリアに進む。あまり周りの目が気にならないので、根暗なぼっちには非常に居心地がいい場所である。
続いてやってきたのはかなり大きな水槽で、サメ、エイなどサイズの大きな魚がメインとなっている。
そして僕はぼんやりとサメやらエイを眺めながら、この水槽の主の登場を心待ちにしていた。そう、アカウミガメである。何しろ水槽が大きくて広いので、上の方にチラチラと姿が見えているような気がするが、なかなか下まで降りてきてくれない。
僕は地球上の全ての生物の中でウミガメが一番好きなのである。どのくらい好きなのかというと、生まれ変わったらウミガメになろうと思っているぐらい好きなのである。水槽の前で右往左往しながらその出現を5分ほど待っていると・・・
そしてまたウミガメは僕の視界から消えてしまった。ほんのわずかな時間だったが、写真は撮れたので、あとはスマホをしまってまたウミガメがこちらに来てくれるのをひたすら待ち、下に降りてきてくれたらウミガメがゆったりと泳ぐ姿をただ目に焼き付けていた。まさに至福の時、大満足であった。
さて、唐突だがここで個人的なぼっち水族館の作法を3つお伝えする。
①人の少ない平日を狙おう
土日の水族館に一人で行ったことはないが、行かなくても大体そこがカップルと家族連れの巣窟であることは明白であろう。好きな魚をじっくり見て癒されることなどできるはずがない。疲れるうえに惨めな思いをするだけである。
②家族連れ、カップルが近づいて来たらすぐに譲ろう
立場が下の者が上の者に譲るのは当然のことである。そのくらいの道理もわからない自己中ぼっちにはひとり水族館を楽しむ資格などない。いつまでも好きな魚を眺めていたい気持ちは分かるが、貸し切りではないので、人の気配や子どもの声を敏感に察知し、すぐに水槽から離れよう。あとで何回でも戻って来られるから。
③ショーの類にはむやみに参加しない方が良い
水族館でよくあるアシカショーやイルカショーの類は、もちろん楽しめることもあるが、大体が子供向けであり、もう二十代も終わりに差し掛かった異常独身男性にとってはそのノリについていくのがキツいこともある。
また、タチの悪い水族館では「客イジリ」みたいなのをしてくることもある。以前訪れた某水族館ではアシカショーの輪投げキャッチに客を強制参加させるタイプのショーをやっていて、危うく僕も輪投げ役に指名されて周囲に失態を晒してしまうところだった(あがり症のうえ、運動神経のかけらもない男)。
以上①~③を守ってさえいれば、けっこうひとり水族館は快適に楽しめると思う。別にクラゲの水槽の前でしばらくぼーっとしていてもいいし、推しのコブダイの写真がうまく撮れるまで粘っていてもいいし、ウミガメと心の中で対話していてもいい。なんて自由で素晴らしい空間なんだろう。カップルと家族連れさえいなければ・・・。(笑)
つーか、水族館にカップルで来てる輩はごまんといるが、一体魚を見ながら何を話すのだろう・・・?無言というのも気まずいし、何かしら目の前の魚のことを話題にするのだろうが。
僕が空想上の彼女と一緒に来ていると仮定しても、「あれ何て魚かな?」「かわいいねぇ~」「あの魚上司に似てるわ~」とかいちいち沈黙にならないように色々気を遣い、好きな魚を観察するどころではないと思う。でも最初のあたりで紹介したように照明が暗いところも多いから、なんかロマンチックな雰囲気出ていいのかもね。知らんけど。
閑話休題。ウミガメにかなりの時間を使ってしまったため、少し足早に順路を進んでいく。
シーラカンスの標本のレプリカみたいなのもあった。この水族館には深海魚はいないようだったが、かなりユニークな見た目をしている奴らもいると聞き、非常に興味深い。どこかの県には深海水族館みたいなのもあるらしく、ぜひ訪れてみたい場所である。
さて、エスカレーターで上の階へ。ちょっと雰囲気が変わり、小さくてかわいい魚が多いエリアである。時間の許す限りゆっくりと鑑賞し、しっかりと癒されることができた。
さて、2Fに降りてきた。この水族館の目玉であるイルカショーまではまだ時間があるので、ペンギンを見に行く事にした。
少し休憩して時間をつぶした後、ここに来た目的の一つであるイルカショーへ。さっき「ショーの類にはむやみに参加するな!」とか書いておきながら早速矛盾していて恐れ多いが、まぁここの目玉だからねぇ・・・見ないわけにはいかないでしょ。
開始10分前。ショーの会場にはぽつぽつと人が集まり始めていた。目の前には大きなプールがあり、2頭のシロイルカが思い思いに泳いでいる。
会場の一番前の席で、シロイルカの写真撮影に命を懸けてるみたいな一癖も二癖もありそうな長髪の爺さんが熱心にカメラを構えていたのだが、誰かがフラッシュをたくと、たちまち撮影をやめ、(どこの誰がやったのかどうやって分かるのか知らないが)必ずその人の席までスタスタと行って「フラッシュは絶対駄目だよ!!!」と注意してスタスタとまた自分の陣地まで戻って行った。そんなことが2,3回あった。
どうやらシロイルカの気が散ってしまうのでフラッシュ撮影は厳禁のようだ。僕もスマホを片手に待っていたが、発光禁止モードになっているか10回は確認したと思う。
そうこうしているうちにショーが始まった。司会のスタッフが出てきて何やら喋り、会場が暗くなり、島根から北極の海に旅に出るみたいなよくわからない演出が始まる。そしてダイバーが登場し、いよいよパフォーマンスの時間だ。シロイルカが見た人に幸せが訪れるとかいう「幸せのバブルリング」を出してくれるのである。
幸せになったかどうかはさておき、なかなかに満足した僕は、そのままのノリで今度はアシカのショーを見に行ったが、プールのアクリルガラスが分厚いのと逆光だったので(席がそこしか空いてなかった)、お姉さんの声と観客の拍手は聞こえるが、何やってるのか全然わからなかった。日当たりが結構強かったのでもう途中で諦めて席を立った。
さて、本当は閉館までゆっくりしていたいが、他に寄りたいところもあったのでそろそろ出ないといけない。最後にシロイルカたちにもう一度会いに行くことにした。
水族館を出たら、西日が眩しい時間帯である。もう楽しい時間は終わってしまったのだという虚しい感情がこみあげてくる中、車を走らせる。
旅の最後はご当地メシで〆る。
島根県民御用達のうどん屋でひとり寂しくうどんをすすり、とりあえずお腹を満たしたら、高速道路を死んだ目で爆走して無事自宅へ帰還してしまったのだった…。
さて、先日のぼっち水族館を記事にしてみたわけだが、やはりウミガメが一番よかった。日本全国にウミガメを売りにしている水族館もいくつかあるので、次はそこを目指して行ってみたいと思う。このアカウントも「孤独猿」から「孤独ウミガメ」に改名してしまおうか。・・・いや、なんか語呂が悪いのでやっぱやめとこ。