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ありふれたもん

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見過ごしていた ありふれたこと について書いてみます。
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2020年3月の記事一覧

天体測定実習

天体測定実習

数か月、誰とも会わず、家に引きこもっていたどん底のある日、ふと思い出した、学生時代の必修科目にまつわる笑い話

実習の思い出北国、杜の都、街から離れた山の上。

真冬の、よく晴れた、月のない晩。
空気は澄み切って、風もなく、
星も凍りついたように夜空にじっとしている。

山の上には、大学の古いキャンパス。
その中でも一番高いところにある、8階建ての古びた建物。
その屋上に、丸いボール型の屋根のつい

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トイレ掃除でハッとするとき

トイレ掃除でハッとするとき

僕は、毎日、うちのトイレを掃除している。
その間にハッと息を呑む瞬間がある。

* ~ * ~ * ~ * ~ *

うちのトイレ
うちのトイレは、洋式トイレ。

築40年以上の家のトイレなので、
ウォシュレットじゃないけど、
本体は、象牙色の、角が滑らかな陶器、
表面は今もみずみずしくツルツルしている。

便座とフタは同じ色のプラスチックで、
フタの凸状の表面には柔らかい光沢がある。

一畳弱

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おつとめバナナ

おつとめバナナ

こちらはスーパー
野菜コーナー
ご奉仕品のカゴの中
熟れに熟れた
おつとめバナナ

チャーミングだった
シュガースポットも
いつしかまだらな
満身創痍の
おつかれバナナ

家に帰っても誰もいない
独り者が買うには
ちょっと多い気がする
五本も一緒の
見切られバナナ

そんなバナナが
自分と重なり
なんだかほっとけず
手を出す僕に
拾われバナナ

その夜、ヤバそうな
一本選んで皮むくと
多少打ち身は

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夜道のキラリ

夜道のキラリ

駅からだいぶ歩いた
住宅街の外れ道
暗い夜道を独りで歩く

後にも先にも誰もいない
色褪せた黒いアスファルトの
硬い道をトボトボ歩く

今日一日を振り返りながら
街灯がポツリポツリと灯った
細い道をぼんやり歩く

と、その瞬間
少し先の暗い路面で
何かがキラリと光る
ハッとして足を止めたときには、
光は消えている

ゆっくり一歩下がってみると
そこでは光っているのが見える
ガラスの破片なのか
その

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