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本の記録:人類学と民族誌およびその周辺

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人類学に関する本の記録です。民族誌と理論書、論文等々読んだものから記録をつけています。勉強中ですので、気になったところはコメントください。
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記事一覧

いつ頃からかやめちゃってたけど、また澁澤賞を読む活動を再開させようかな🧐

【本の記録】鈴木真弥『現代インドのカーストと不可触民』

日常生活をする上で、掃除は欠かせない。食事をすれば汚れた調理道具やお皿を洗う必要がある。服は毎日同じものを着るわけにはいかないから、洗濯をしなければいけない。床が汚れていたら掃除機をかけたり床を拭いたりして綺麗にするだろう。トイレや洗面所も使えば汚れる。汲み取り式のトイレだったら、汚物の汲み取り作業が必要だ。 今回は2015年に出版された鈴木真弥の『現代インドのカーストと不可触民 都市下層民のエスノグラフィー』。この本は、第28回アジア・太平洋賞、第11回樫山純三賞を受賞し

【本の記録】田辺明生、竹沢泰子、成田龍一(編)『環太平洋地域の移動と人種 統治から管理へ、遭遇から連帯へ』

今回は1つのプロジェクトをまとめた論集だ。 2020年の重大な出来事としてBLMが挙げられる。アメリカの根深い人種差別問題から端を発した運動が、日本でも大きな話題となった。ごく最近では、全米テニスで優勝を果たした大坂なおみの抗議行動が世界中から称賛された。 しかし、なんだか日本にいるとBLMや人種差別問題はいまいちピンときていないように感じられる。 NHKでBLMを取り上げようとアニメーション動画を作ったが批判を受け謝罪していた。NHK側は謝罪していたが、何が批判された

グレーバーの訃報を受けて。

今朝、起き抜けにデヴィッド・グレーバーの訃報を見かけた。あまりにも寝起きすぎて意味がわからなかったため、「David Graeber」をTwitterで検索し、ひととおり目を通した。 Wikipediaの生年月日も「February 12, 1961 – September 2, 2020」になっている。本当に亡くなっていたのだ。 直接本人に会ったこともなければ、講演会にも行ったこともない。大学の授業で彼の本を輪読して、記事を読んで、少し前に動画で見かけただけだった。でも

【本の記録】リーペレス・ファビオ『ストレンジャーの人類学』

今回は『ストレンジャーの人類学』だ。一般向けではない。移民研究、人類学、社会学、教育学のいずれかをやっている人には新たな研究の一つとして読むことをおすすめする。 また、自分自身が「帰国子女」「移民」「ハーフ」というカテゴリーで縛られ困難に感じた経験がある人や親の都合で幼い頃から世界中を転々としてきた人にとっては共感できたり、生き方の参考になったりするだろう。 著者:リーペレス、ファビオリーペレス、ファビオ(Lee Perez Fabio) 2019年、東北大学大学院文学研

【本の記録】松村圭一郎『はみだしの人類学 ともに生きる方法』

先日、図書館の蔵書検索で「人類学」といれると、一番最初に出てきたのが『はみだしの人類学』だった。2020年春に出版されたばかりの本だし、「人類学」を冠しているし、人気のシリーズでもあるから蔵書検索もビビッときたのだろう。しかし、その日はすでに[貸し出し中]だったため、予約をして後日借りた。 人類学への入門書、というよりは、導入本だ。これを読んでから、気になったら巻末のブックガイドを参照して入門書→教科書→→→と読み進めるといい。 読んで欲しい対象としては、まずは高校生。文

【本の記録】ジョアオ・ビール 『ヴィータ 遺棄された者たちの生』

2019年に邦訳が出版された、ジョアオ・ビールの『ヴィータ 遺棄された者たちの生』。訳者あとがきを含めると640ページとなかなかの厚さだが、読みやすさと話の展開のおもしろさであっという間に読み終わった。2007年のマーガレット・ミード賞(Margret Mead Award)にも選ばれた、秀作の民族誌である。 個人的に読んで欲しい対象者は、医師・看護師などの医療従事者、ソーシャルワーカーやホームヘルパーをしている人、医学部看護学部の学生だ。 もちろん、医療人類学をやってい

【本の記録】橋本栄莉 『エ・クウォス 南スーダン・ヌエル社会における予言と受難の民族誌』①

『エ・クウォス』第1回は本書の概要を紹介する。来週は第2回とし詳細な内容、第3回は全体のまとめとコメント、参照文献リストにしようと思っている。ざっと読んでまとめれば良かったのかもしれないが、1週間で最後まで目を通すことができなかった。 では、行ってみよう! ===== 概要 本書は、南スーダンのヌエル社会における予言をめぐる信念について、ヌエルの人びとの歴史・日常生活・出来事の3つの場面から検討している。100年以上も前にされた予言とその信念が、どのようにヌエルの人びと

【本の記録】フレデリック・ケック 『流感世界 パンデミックは神話か?』

本を読み終えたので、記憶が新しいうちに記録を。 読んでいた本は、フレデリック・ケックの『流感世界』だ。 ======= 著者紹介:フレデリック・ケック 1974年生まれ。フランスの人類学者、哲学史家。現在は、フランス国立科学研究センター(CNRS)に所属し、パリのケ・ブランリ・ジャック・シラク美術館で研究部門を指導している。レヴィ=ストロースに関する研究を進め、プレイヤード叢書『レヴィ=ストロース著作集』の編集にも携わった[『流感世界』訳者あとがき参照]。 ====

人類学者デヴィッド・グレーバーがインタビューに応えていた。

デヴィッド・グレーバーがインタビューに応えていたのを今朝Twitterで見かけた。よかったので共有したい。 デヴィッド・グレーバー デヴィッド・グレーバー(David Graeber) 1961年、ニューヨーク生まれ。文化人類学者、アクティヴィスト。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス大学人類学教授。 *Brut Japanの冒頭で彼は「作家」と紹介されていた。グレーバーはいつから「作家」になったのか、と勝手に困惑した。 著書:『アナーキスト人類学のための断章』(20

「過去への反省」と人類学。

「人類学者1人に人類学観は1つづつ」は過言ではない。 いろんな人類学者が世界中にいて、みんなそれぞれ研究場所も対象もテーマも異なる。出会ってきた人や感じてきたことがそれぞれ違うから、人類学者の数だけ人類学観があると言えるのだろう。 しかし、人類学の前提とされていることは共有しているため、研究者同士通じ合えないということではない。 人類学の草創期は「安楽椅子(アームチェアー)の人類学者」と呼ばれる、自分自身で現地調査には行かず現地のことを語る人類学者がおり、それへの批判から