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著者が語る:『反オカルト論』<大門正幸氏の誹謗中傷>!

いわゆる「スピリチュアリスト」の間では、今でもマーガレットとケイトのフォックス姉妹が「スピリチュアリズムの創始者」として祭り上げられている。

しかし、実際には2人とも「降霊詐欺」の嘘を告白し、その後は金銭のために再び「告白は嘘だった」という嘘を重ねて、結果的にはスピリチュアリズムの「擁護派」からも「批判派」からも相手にされなくなった。最終的に、マーガレットはホームレスとなって路上で死亡、ケイトはアルコール依存症で死亡と、2人とも悲惨な生涯を終えた。

マーガレットに「降霊詐欺」を止めさせ、女学校に通う授業料を供出して更生させようとした「北極探検の英雄」エリシャ・ケインの「愛」と「早すぎる死」については、ほとんど日本で知られていないので、あえて英語原典資料から訳出して、かなり詳しく紹介した次第である。この事件の経緯については、次の4つの関連記事を参照していただきたい。

大門正幸氏から『週刊新潮』編集部宛に届いたメール

もともとコラム「反オカルト論」は、2014年から2016年にかけて『週刊新潮』に連載したものである。連載当時から、編集部にはさまざまな反響があったが、とくにフォックス事件を扱った2015年9月24日号の記事に対しては、「大門正幸」という人物から『週刊新潮』編集部宛にメールが届いた。

大門氏のメールは、次のような文言で始まる。

《連載中の高橋昌一郎先生の「反オカルト論」については、実状をご存知ない、あるいは否定的側面にのみ焦点を当てて執筆されており、心霊現象に関する世間の誤解を招き兼ねないように感じております。》

この「大門正幸」氏の肩書は、「中部大学人文学部教授」になっている。中部大学のホームページを見ると、研究分野は「スピリチュアリティの研究」とある。「生まれ変わり」や「体内記憶」といった内容の著書があり、まさしく「スピリチュアリティ」の研究者らしいことがわかる。

さて、私は、数十万部の発行部数を持つ『週刊新潮』という週刊誌にコラムを連載しているのだから、その記事に対して、大学の研究者としての批判や反論があれば、それなりの文書を雑誌や学会誌に投稿するか、あるいはネットにコメントを公開するべきであろう。一般に、研究者の研究論文や記事に関するディスカッションやディベートは、公開の場で行って、第三者の客観的な判断に委ねるのが、研究者としてのマナーだからである。

ところが大門氏は、「私」に対してではなく、「公」に対してでもなく、『週刊新潮』編集部だけに宛てて、「実状をご存知ない」とか「否定的側面にのみ焦点を当てて執筆」とか「世間の誤解を招き兼ねない」などと「上から目線」で非難している。

一般に、「根拠のないデタラメを第三者に伝えて、人を貶める行為」のことを「誹謗中傷」と呼ぶが、大門氏は、まさに「根拠のないデタラメ」を『週刊新潮』編集部に伝えて、私を貶めようとした。つまり大門氏は、私を「誹謗中傷」したというわけである。

それでは、なぜ私が、大門氏の発言を「根拠のないデタラメ」だと断定できるのか、以下に説明しよう。

マーガレット・フォックスがイタズラを告白した件について、大門氏のメールは、次のように述べている。

《マーガレットは後に、貧乏のどん底にあったためわずかなお金でも欲しかったこと、また人々の敵意に耐えられなかったことが理由で嘘の告白を行った、とその「告白」を撤回しています。また金銭的な状況だけでなく、自分達とは違い、まっとうな生活を享受していた姉のリーに対する報復の意味合いも強かったと考えられます。》

第一に、ここで大門氏は、長姉の名前を「リー」と述べているが、これは「レア(Leah )」の誤りである。彼は、スピリチュアリズムの専門家だというのに、その創始者の名前さえ知らないのだろうか? 第二に、マーガレットが「貧乏のどん底にあった」理由は、彼女が「降霊詐欺」を止めたからであって、そこから「嘘の告白」というのは、因果関係が完全に逆である。第三に、レアが「まっとうな生活をしていた」理由は、彼女が2人の妹を道具にして自分だけが金を儲けたからであり、「報復の意味合い」という発想は根本的にズレている。

大門氏は、彼の主張の根拠として、三浦清宏著『近代スピリチュアリズムの歴史』(講談社、2008年)という文献を挙げている。そこで、この本を取り寄せて読んでみたところ、中身はスピリチュアリズムの「擁護」ばかりで、フォックス姉妹を「霊能者」として賛美している。

しかも、この本の「参考文献」51点中、英語文献は8点のみで、残り43点は日本語の翻訳書とスピリチュアリズム関連書ばかりである。フォックス姉妹研究の第一級資料である “The Love-Life of Dr. Kane” とフォックス姉妹がスピリチュアリズムに「死の一撃」を与えた “The Death-Blow to Spiritualism” は、まったく参照されていない。

つまり、大門氏は、日本のスピリチュアリストが書いた一方的に偏ったスピリチュアル賛美本を根拠として、マーガレットとケインによる英語の原典資料を根拠とする私のコラムに文句を言ってきたというわけである(笑)。

もう一度確認するが、そもそもマーガレットが「貧乏のどん底」に陥ったのは、彼女が愛するエリシャの忠告に従って「降霊詐欺」を6年足らずで止めたからである。当時、彼女の「降霊会」は大好評で、顧客は大統領夫人にまで広がっていたのだから、もし彼女が上流階級の裕福な人々を相手に「降霊詐欺」を続けていたら、おそらく晩年には、細木数子氏や江原啓之氏などをはるかに上回る大金持ちになり、プール付きの大豪邸でメイドを何人も雇って暮らしていただろう。その意味で大門氏は、マーガレットの生涯を完全に誤解している。

その上、大門氏のメールは、次のようにも述べている。

《ハイズビル事件から56年後の1904年に『ボストン・ジャーナル』がフォックス姉妹の通信と合致する状況で行商人の遺体が見つかったことを報じています。この事実は通信が単なるイタズラではなかったことを強く示唆していないでしょうか。》

こちらもすでに解説したことだが、1904年11月23日付『ボストン・ジャーナル』紙(地方紙)には、旧フォックス家の地下室で遊んでいた子どもたちが「人間の遺体らしき白骨を発見」という記事が出ている。ところが、その翌日の11月24日付『ニューヨーク・タイムズ』紙(全国紙)には、「フォックス姉妹の家から発見された頭蓋骨のない骨」と、イタズラの真相を暴露した記事が出ているのである!

実は、誰かが動物の骨を集めて人骨に見せかけて配置したが、頭蓋骨までは準備できなかったというのが、このイタズラの「真相」である。この事件については、次の記事に詳細な調査報告が解説されている。

要するに、大門氏は、自分に都合のよい1904年11月23日付の情報だけをチェリー・ピッキングして「霊界」への「通信が単なるイタズラではなかったことを強く示唆」と述べ、それが実はイタズラだったことを明確に示している翌日1904年11月24日付の情報は、完全に無視しているわけである。彼は、単に調べが足りないために無知なのか、あるいは「スピリチュアリズム」に否定的な情報には目や耳を塞いでしまうのか……。

いずれにしても、何よりも驚かされるのは、フォックス姉妹に関する根本的な一次資料の英語原典さえ確認せず、日本人が二次資料をまとめて書いたスピリチュアル賛美本を文献に挙げる程度の学識しか持ち合わせていないにもかかわらず、大門氏が「スピリチュアリティ」の研究者を名乗っているということである。これほどまでに初歩的かつ客観的な学術研究の方法論とマナーさえ知らない「大学教授」が存在し、今も日本の大学で授業を行っているということ自体、実に情けない話ではないだろうか?

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