見出し画像

若い世代をどう動かす? ~千代田区キャンパスコンソと防災減災ワークショップを開催しました~

こんにちは、オープンコラボレーションハブ「LODGE」です。

2023年2月~3月にかけて、千代田区にキャンパスがある5大学のコンソーシアム(千代田区内近接大学の高等教育連携強化コンソーシアム)と共催で、学生向けワークショップを開催しました。

ワークショップのテーマは防災減災。3月に東日本大震災から12年目を迎えたタイミングに合わせ、若い世代が防災減災に対して当事者意識を持つ「きっかけ」は何なのか、ヤフー社員、LINE社員も一緒になって考えました。

「企画の経緯と初日の様子」(本編)、「被災地見学」「災害情報の活用と発信」「最終プレゼンテーションの発表内容」、に分けて記事をご紹介します。

課題は「当事者意識の希薄化」

企画が動き出したのは昨年2022年の夏ごろ。防災減災をテーマと決定後、課題設定について時間をかけて考えました。共催の法政大学社会連携教育センターの方々やグループ社員、多くの方とディスカッションを経て、震災から12年が経過し当時小学生で震災の記憶が曖昧な方も多い方たちが社会に出始めるタイミングであることを踏まえ、「経年に伴う当事者意識の希薄化」を課題と設定しました。

私たち社員は東京ミッドタウンオフィス時代に東日本大震災を経験し、オフィス上層階からの避難や帰宅困難問題に直面しました。震災を機に誕生したヤフーの数々の取り組みに、特別の思いを持っています。

一方でそれらが、ある意味「見慣れた当たり前の光景」になってきているのではないか?という思いもありました。ヤフー社員、LINE社員も一緒に学びながら震災当時10歳以下だった現在の大学生たちの感覚を知ることが、サービスの作り手側にも気づきを与えるのでは?と考えました。

「若い世代にどう興味を持ってもらうか」

課題設定について、防災減災にまつわる豊富な活動実績をお持ちの江戸川大学の隈本邦彦先生との出会いも大きな転機となりました。企画担当者の私は2022年11月に防災士の研修を受けており、その際の担当講師が隈本先生でした。講義の内容に胸がいっぱいになり「このお話をもっと多くの人に聞いてもらいたい」と、講義終了後に急いで隈本先生との名刺交換の列に並び、企画にご協力いただきたい旨、お願いしました。(突然の申し出に、先生はさぞかしびっくりされたことと思います)

その後12月に、改めて江戸川大学のキャンパスでお時間をいただき、当事者意識を持つ大切さ、震災報道の課題など、実に様々なお話をさせていただきました。とても貴重な時間でした。「どうしたら若い世代が防災減災に興味をもってくれるか、これは大変重要なテーマ」という先生の言葉がその後のプログラム編成の土台となりました。隈本先生には講義だけでなく、最終回のプレゼンテーションにもご参加いただきました。

3月7日の隈本先生による講座の風景。(講義の内容は別記事でご紹介します)

プログラム構成

学生さんへの事前アンケートでは、当時10歳以下だったこともあり、東日本大震災発生当時の記憶が強く残っている方は多くありませんでした。「なかなか機会がなかったが、防災について学んでおきたい」「一度被災地を見学したいと思っていた」という声が多かったです。

プログラムでは「事実を知る機会」と「世代を超えて意見交換できる機会」を重点的に編成しました。

プログラムは全6回構成、うち5回はLODGE開催、1回は福島県双葉郡の被災地見学です。東京からバスで日帰りするあわただしいスケジュールでしたが、現場に足を運び五感で体験することが当事者意識に繋がると思い編成しました。(当日の様子は別記事でご紹介します)

オリエンテーションの様子

初回のオリエンテーションの様子を、写真を中心に簡単にご紹介します。

LODGEでのオリエンテーションの様子

オリエンテーションでは法政大学常務理事・副学長の小秋元 段氏、ヤフー株式会社 執行役員 SR推進統括本部長の西田から挨拶がありました。

法政大学常務理事・副学長の小秋元 段氏
ヤフー株式会社 執行役員 SR推進統括本部長の西田修一

小秋元氏からは「教室での学びと社会での学び、この2つの学びの舞台を行き来するような学びを目指してください」、西田からは「今回生まれたアイデアが、いつか誰かの命を救う種になるかもしれません」といったお話がありました。

(ご挨拶詳細はヤフーのコーポレートブログに掲載されています。ぜひご覧ください)

続いて、LODGE責任者の徳應と企画担当の竹口より、本企画の経緯やプログラム詳細を説明しました。東日本大震災発生時のヤフー本社ビルの状況を写真を交えて紹介したほか、当事者意識の重要性について改めて説明しました。「思いだけでは人は救えないの言葉が印象に残った」と、学生さんのアンケートで複数回書かれていました。

LODGEの徳應による企画説明

続いて、PBL(Project Based Learning:問題解決型学習)の概要やプレゼンテーション方法について野末岳宏 氏から詳しく説明をいただきました。

今回、企業や学校のPBL、研修などのファシリテーション実績を多く持つ野末氏に全編通してファシリテーターをお願いしました。この時間のワークショップ、ディスカッションがその後のグループワークがうまくいくきっかけにもなり、初回にこの時間を設けたことが非常に重要でした。最終回のプレゼンテーションでは「初回に野末さんから学んだ内容を反芻しながらプレゼンの構成を考えた」との声もありました。

野末氏によるPBL、プレゼンについての説明
ワークショップの様子。初対面で編成されたグループ、まだ初日は少し硬い雰囲気です
チームごとのアイデア、まとめを発表。
コロナ禍で対面授業が減るなか、こうした企業内のPBLは新鮮な機会とコメントをいただきました

データからもわかる、意識継続の難しさ

ヤフーのデータ分析「黒帯」※、池宮からは「ビッグデータで見る防災減災」を解説。データから分かる防災減災の意識継続の難しさや、有事の際の人々の行動について解説しました。

ヤフー株式会社 データソリューション事業本部の池宮
「防災グッズ」検索数が顕著に伸びるタイミングは検索データから明らかでした
同じく「防災グッズ」の検索数推移。
トルコ地震発生時には全く伸びず、海外の地震が当事者意識を持つきっかけには遠いことが分かります
防災に関する都道府県別の検索特徴量。性年代別の傾向が見て取れます

一生懸命メモを取りながら聞く真剣な学生さんの姿が印象的でした。事後アンケートでは、

「データは無機質なものというイメージがあったがデータで人々の意識差が分かるのが興味深かった」

「減災を自分事として捉えることが難しいことが印象に残った 」

「被災者との情報のニーズの差がデータ分析により明らかになったのが興味深かった」

などの新鮮な意見をたくさんいただきました。

※「黒帯」:ヤフーが定める「ある分野に突出した知識とスキルを持つ第一人者」の称号 たった1%の狭き門。黒帯制度とは?

初日の感想

オリエンテーションとデータによる解説を経て、学生さんはどんな感想を持ったのでしょうか?

プレゼンに向けたフォーマットや研修?に近い形でとても実学的にできていてありがたい

自分では防災に関する意識がある方だと思っていたが、自己評価シートの結果を見ると全然知識がないことに気づいた。全てにチェックが付くようにするのはもちろんのこと、それぞれの理解も深めていきたい。

自分の意見を出したり発言する機会が多く、大学の授業だとこのような機会が少なかったため経験が積むことができた。

自己評価シートを通して、自分の意識や状態を客観視することもできたようです。

初日は全プログラム終了後、学生さんやヤフー社員、法政大学の先生や職員の方々がLODGEに残り、社員が作成したハザードマップを見たり、防災士の資格試験について情報交換したり、プログラム参加の経緯について話をしました。LODGEが目指した「情報の交差点」さながらの状況が生まれていて、大変印象的でした。

本企画のほかのプログラムについては、別のnoteでご紹介します。

関連記事

本企画がYahoo! JAPANコーポレートブログで紹介されています。

日経クロストレンドでもご紹介いただきました。


この記事が参加している募集

防災いまできること