専門家、成功事例集、官民連携が地方を衰退させる【地方再生の罠】
『地域再生の罠〜なぜ市民と地方は豊かになれないのか?』 を読んで
当ブログでお伝えしたいことは、私たちの住んでいる国は、国家としてとらえることも大切なのですが、本来は私たちの住んでいる「この町」「この地域」の集まりである、ということがもっと大事だということです。私たちが幸せに暮らすために、国が住みよい土地になるためには、住民として住んでいる「地方」こそが住みよく、豊かな町であってほしい、そういう願いで綴ります。
当ブログでは、今秋各地で行われる市議会選挙に対して、千葉県柏市、山形県天童市および茨城県小美玉市の立候補者に対して政策提言を行いました。
上記3市のことを調べるにつれ、地域再生のために議会や市政当局が各種施策、議会討議でもがいている様子が感じられました。そして事務事業評価が未公開ながらも各市とも似たようなことをし、無駄に税金を注ぎ込んでいることが伺え、暗澹たる気持ちになったのでした。上記3市の選挙で当選された方々にはぜひ、当ブログの提言を参考に議員活動を行ってもらいたいと、切に願います。
「地域再生の罠」とは「専門家」「成功事例集」のことである
さて、今回は「地域再生」で仕事をやった気になっている役人の皆さんに一喝。久繁哲之介著『地域再生の罠~なぜ市民と地方は豊かになれないのか?~』(ちくま新書)の紹介です。本書は地方自治体が地域再生を御旗に税金をドブに捨てている状況へ一石を投じています。
本書のカバーには次のように書かれています。
本書では冒頭において「地域再生策の多くが、実は不適切」であると断じています。これら「地域再生策のほとんどは、成功事例に倣うという発想にもとづいて」おり、「専門家が推奨する成功事例のほとんどが、実は成功していない。稀にある本当の成功は、異国や昔の古い話であり、しかも模倣がきわめて難しい」とその理由を述べています。
奇しくもX(旧Twitter)上にて牧原秀樹衆議院議員が、このようなやり取りをしていました。
牧原議員もなにかの「専門家」の一人なのでしょうか、専門家に対する畏敬の念が大きいのですね。素直な感情をSNSで発言した一国民に対して「お前は専門家じゃないだろう。偉そうなこと言うな」と言っているように感じられます。
SNSでは国民の言っていることに対して反論してかみついてきたりする議員や役人がいますね。「民はよらしむべし、知らしむべからず」。
民衆は黙って政治に従わせておくべきで、民衆が政治の内容に口出しするなということでしょう。このような権威主義的な発言は自分のプライドを守るための詭弁、自己正当化にすぎません。きっと牧原議員もプライドを傷つけられたと癇に障ったのでしょう。
本書ではさまざまな事例をもとに解説をしていますが、地方再生(商店街の賑わい事業など)の様々な施策は「専門家」の提言を丸呑みして無駄な事業を自治体がやっているだけに過ぎないと喝破しています。本書で述べられている「専門家の推奨する事例を模倣してはうまくいかない」ことをかいつまんでご紹介したいと思います。
著者の提言~人の心や地域の文化に基づく再生を~
以上のような視点を基に、著者は実際に足を運んで得た情報から整理、考察し各地の施策の問題点を列挙しています。特に「商店街活性化の事例集」とか「地域再生の成功事例集」というのは土建屋やコンサル会社、観光業者、マスコミなどが吹聴する、彼らにとって都合の良い事例集であり、個別に事情の異なる自治体が簡単に真似して取り組めるものではないと一蹴しています。
それでは著者、久繫氏はどのような手段を用いて「地域再生」をすればよいと言っているのでしょうか。本書「おわりに」に次のように書かれています。
久繁氏が考える地域再生に必要なのは「地域を愛してほしい」と強要する自治体の考えに同調する市民ではありません。市民が「愛したい(大切にしたい)」と思える空間を作る手助けだと言います。本書では具体的な施策を提示していません。理念のみが記されています。つまり、本書にもし具体的な提言が書かれていたら、それを「模倣」する自治体が現れるからですね。単に模倣するだけでは成功するわけがないのです。まずは先のビジョンを念頭にして、机上ではなく市民の心に寄り添った歩みをしないと地域は活性化できないと著者は伝えています。
ふたたび「地域おこし協力隊」について
当ブログでは以前、総務省の予算に関連して「地域おこし協力隊」の事業の問題点を提示し次のように述べました。
「地域おこし協力隊」も郷土愛醸成、地域経済活性化の大きな力になるとして行われている事業です。各地でさまざまな事業が行われており、いかにも地域の特性に応じた施策に取り組んでいるように見えます。しかし、実態として地域経済活性化につながる、市民全体のハートをつかんでいる事例はほとんどありません。上記の久繁氏も別の著書で「地域おこし協力隊」も壮大な嘘八百の「成功事例集」であると述べられています。
現在は6000人ほどの隊員がおり、総務省は1万人を目指すと言っています。この事業は国から自治体への補助金事業ですから、やればやるほど予算増額、すなわち増税しないと進まないのです。地域再生の名のもとに官民連携で増税の一途を進んでいます。総務省は旧自治省としてのかつての地方支配者としての権威を取り戻したくて予算獲得に躍起なのです。
地域再生、商店街再生にどんどん予算が割り当てられ、たいした成果も測定されることなく、効果があるのかないのか分からないまま私たちの税金がつぎ込まれています。しかし、その地域再生施策は地元の人々の経済、あるいは自治体財政が向上するほどのものでしょうか。関係者だけの当事者満足、幽霊商店の延命だけに終わっていないでしょうか。
この件に関して第211通常国会にて浜田聡参議院議員に質問をしていただきましたが、総務省側の答弁はあいまいとした「継続ありき」の内容に終始していました。下の動画の34分21秒〜です。
国会会議録検索システム(質疑内容は発言URLから参照し、227~231)
発言URL:https://kokkai.ndl.go.jp/txt/121114601X00520230317/227
まとめ
私達は「能力のないものに金を渡すとろくなものができない」と、これまでの減税活動により気づいてきたと思います。官庁の官僚や自治体の役人が、地域のためになることをしていないことは、本書を読んでも良く分かります。
本書に紹介されているのですが、JR広島駅前にクリームぜんざいが名物の「甘党たむら」というお店がありました。今では廃業してしまっていますが、広島駅前再開発事業のため、廃業せざるを得ない状況になってしまいました。しかしこれを超える店や商品がこの再開発事業により誕生したでしょうか。地元の人が「愛する」飲食店、グルメが登場したのでしょうか。民間の自由な経済活動の成果を、政府や自治体が超えることは絶対にできません。むしろ、地域再生のために市民の憩いの場が消えてしまったのです。
こちらのブログ、再開発による同店の閉店を惜しむファンの悲しみが感じられます。
現在この記事を執筆しているのは2023年の10月です。これから臨時国会が開かれる予定ですが、もしかしたら衆議院解散総選挙があるかもしれないといううわさも飛び交っています。政局で動くのが政治家だそうですが、国会議員だけでなく、地方も同じ。基礎自治体の議員の人たちは地元に「愛する」ものをもっていますか? 議会で審議される政策一つ一つに対し十分な議論を尽くし、地元の振興になる施策を作り上げてほしいと思います。
地域再生(地域経済の復活)は専門家や事例集に頼るのではなく、民間の自由な発想に任せることが大切。日本人は真面目であるため、議員や役人が作る無駄な政策の数々を真面目に学習・履行し、膨大な無駄を積み重ねています。規制や税金などで民間の資源を浪費しているのは議員や役人のせいであることは間違いありません。
地域経済を発展させるためには規制の多くを勇気をもって撤廃、各種税金を下げて消費活動につなげる。そういった施策こそ重要であると最後に述べたいと思います。
税金下げろ、規制をなくせ!
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