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総務省予算への疑問【地域おこし協力隊】

こんにちは。地方自立ラボ(@LocaLabo)です。

私たちの住んでいる国は、国家としてとらえることも大切なのですが、本来は私たちの住んでいる「この町」「この地域」の集まりである、ということがもっと大事だということです。私たちが幸せに暮らすらために、国が住みよい場所になるためには、住民として住んでいる「地方」こそが住みよく豊かな町であってほしい、そんな願いを込めて書いています。

本日は、この度国会で審議されることになった「令和5年度総務省所管予算」について考えてみたいと思います(本稿で対象とするものは2023年第211通常国会で提出されたものです)。
予算といっても膨大な量がありますので、その一部を調査したものです。
特に総務大臣肝煎りの政策としていながら、予算減となっている「地域おこし協力隊」事業に関する政府への質問として考えてみました。

地域おこし協力隊とは

みなさんは「地域おこし協力隊」についてご存知でしょうか?
地方の人口減少や過疎化などの問題を、若者たちが主体となり地域の活性化を図るために2009年に総務省が立ち上げた制度です。
Webページはこちら。

HPの概要を見るとこのように書いてあります。

地域おこし協力隊は、都市地域から人口減少や高齢化等の進行が著しい地域に移住して、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取り組みです。
隊員を任命するのは各地方自治体であり、活動内容や条件、待遇は、募集自治体により様々です。任期は概ね1年以上、3年以内です。

地域おこし協力隊とは
地域おこし協力隊の概要

希望者は移住先の地方自治体に会計年度任用職員として雇用され、その間報酬をもらいながら協力隊員として、地域のさまざまな課題に取り組みます。例えば、地域の農業や観光の振興、子育て支援、地域のイベントの企画・運営など、地域やそのタイミングによっても内容は異なります。

縁もゆかりもない地域でも、その地方自治体の選考試験を突破できれば、地域おこし協力隊員として活動することができ、1年ごとの契約更新・最長3年間の活動が可能です。報酬の他に移住にかかる家賃・インターネット代・ガソリン代などの費用補助も出るようです。任期後にその地で起業する場合は、その費用の補助も受けられます。

また、地域おこし協力隊に取り組む自治体には、特別交付税や普通交付税が増額されます。

特別交付税措置
【隊員向け】
・活動経費 480万円/人
・起業・事業継承経費 100万円/人
・任期終了後の隊員の定住用空き家の改修費用の半額を補助。
【自治体向け】
・隊員募集の経費 200万円/1団体
・「おためし地域おこし協力隊」の経費 100万円/1団体
・「地域おこし協力隊インターン」の経費 100万円/1団体 1.2万円/人・日
普通交付税措置
(1)地域おこし協力隊等を対象とする研修等
(2)地域おこし協力隊員OB・OGを活用した現役隊員向けのサポート体制の整備

地域おこし協力隊について

交付金がもらえるからなのか、参加する団体や隊員数は増え続けており、今では全国に1000を超える団体と、6000人を超える隊員がいます。2026年には1万人まで増やす計画だそうです。

ただ、地域おこし協力隊は様々な問題も出てきており、移住者と地域住民との間で起きたトラブルが話題になっています。こちらの動画は300万回以上再生されました。

他にもこんな事例も。こちらは自治体までもが移住者の起業の邪魔をしたりと、やる気なさ全開です。

”これは、団体が甘えていることもありますが、私は行政が地域を甘やかしていることが大きな原因だと思います。この朝市はいずれ行政から団体に引き継がなければなりません。しかし、その引き継ぎを考えられておらず、団体独自での運用が可能な仕組みになっていません。お互いがお互いに頼り切ってしまっていることから、今後、行政の支援がなくなったらどうなるかは、もう、おわかりかと思います。”

地域住民が補助金目当てで行政頼みの事業をダラダラ続けており、地域おこしをしたくて移住してきた若者がその体たらくに幻滅し、やる気を失ってしまう、という、補助金事業にありがちな構造が見え隠れします。
そして地方自治体も「国が金を出してくれるしやっとくか」という感じで、現地の人と同様、必ずしも地域おこしや改革をしたいわけではないような印象を受けます。
つまりお題目と現状が完全に乖離してしまっている事業に、血税がジャブジャブ注がれているのでしょう。民間企業ですと、不採算事業として事業の見直し、縮小、中止となるところですが、国は潰れませんのでそんな事業ですら無駄が垂れ流されるだけで終わりはありません。

ただ、気になることがあります。総務大臣は2026年には1万人まで増やす計画であり、協力隊の募集や、現役隊員のための相談体制の強化、それに、任期を終えた隊員の地域への定住を促進するための費用を、来年度予算案に盛り込む方針を発表しています。そして昨年8月に出た予算概算要求ではこの事業に3.5億円を計上しています。ですが12月の予算案では3.1億円。4000万円程度削減となっています。
それほどまでに意気込んで取り組むこの事業の予算の削減はどう言うことなのか、この間何があったのか、財務省にどのあたりを無駄と判断されたのか、質問してみたいと思いました。

総務省所管予算についての質問

令和4年8月の時点で作成された『令和5年度予算概算要求』要求額17兆5675億円となっております。その中でも「関係人口の拡大と個性を生かした地域づくり」として18.7億円さらにその中で地域おこし協力隊等の充実関連予算として3.5億円が要求されております。
今回予算案として決定されましたのは、総額16兆8625億円。関係人口の拡大と個性を生かした地域づくりに16.9億円、地域おこし協力隊等の充実として3.1億円が計上されております。その件でお伺いします。地域おこし協力隊等の推進に要する経費が4000万円程度、削減されておりますが、具体的にどのような経緯で減額することになったのでしょうか。

令和5年度総務省所管予算概算要求の概要(令和4年8月)

(1) 地域おこし協力隊等の充実 3.5億円→3.1億円へ削減

令和5年度 総務省所管予算(案)の概要(令和4年12月)


また、かかる地域おこし協力隊の活動に関して、継続的に同じ事業に対して適用していると思われますが、活動の募集方法と、推進方法、継続手続きについてご説明願います。

特に限界集落と呼ばれる地域において、かかる公金補助を伴う事業を支援すると、ややもすれば活動が停滞、あるいは形骸化していく恐れがあると考えます。地域おこし協力隊事業の理念は「地方への新たな人の流れを力強く創出する」ことにあると考えられます。限界集落においてはもともと住民の数が少ないため、事業に関わるメンバーが固定化し、新規事業の創出などが難しいことが考えられます。

補助事業としては同じ地域、メンバーに継続的に支援するのではなく、地域経済を発展するための後押しとしてサポートし、利益が上がるようであれば民営として自立できるような制度としていくことも地域振興の増進につながるのではないかと考えます。同時に、利益が出ないようであれば、補助事業を中止するなど、地域おこし協力隊の事業収支を計ったうえでの継続事業とするなどの、民間活力を力強く後押しするような観点で事業を発展させていくお考えはございますでしょうか。ご意見をお聞かせ下さい。

事業拡大の合理性はあるのか

各省庁が8月に財務省へ提出する予算概算請求は、たいてい財務省に減らされて12月に国会提出予算案が決定します。

こちら開始から14年も継続している事業ですし、地方の人口減少を食い止めようとさらに事業拡大する意思が総務省にある以上、税金による投資が、地域の人口増や地域経済にどれほど貢献しているのか、地域コミュニティに対してどのような好影響を与えているのかをデータとして提出していただきたいと思います。拡大すべき事業であるならば投資額はさらに増えるのですから、日本政府の出資者である国民に、投資をする合理的理由をプレゼンをしていただきたいと思います。


さて、行政が口と金を出すことで、どれほど国や地方が良くなっているのでしょうか? 10年前、20年前と比べてあなたの地域は活性化していますか?

最後に、すべての増税と規制強化に反対します。

(参考)
令和5 年度総務省所管一般会計歳出予算各目明細書(15ページ)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000858005.pdf

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