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#2 ランチのニーズが過小評価されているかも?

富山で活動している、社会起業家・クリエーターの明石博之です。

引き続き、ビフォアコロナに計画していた話です。すでに時代遅れだ、と自覚しつつも吐き出してしまいますので、宜しくお願いします。

#1 外食の経営モデルについて考える」の図でご説明した「スタンバイ」と「フロー」のバランスと言いますか、マネジメントの難しさによって飲食店の経営は、なかなか儲かりづらい構造にあるとお話ししました。

そこで、2019年当時の計画では、「Local food table」が富山市内にキッチン付きのリアルな拠点を持ち、様々なフローチャネルを増やすことで、店内飲食だけに依存しない経営構造をつくっていこうと考えました。

今、それが出来ていなかった(必要がなかった)飲食店が、テイクアウトや通販を急いで始めた、という状況です。私が経営するカフェも同じく、フローチャネルを増やすことに、ほとんど取り組めていませんでした。

今回は、そのあたりの話をしたいと思います。

1.富山市中心部のランチ需要はもっとある。

まず、フローチャネルを増やす話の前に、ランチ需要そのものの話から。

ここ数年の間に、富山市中心部のレストランや、飲食店の入る施設の企画や空間デザインの仕事に携わりました。どう売り上げをつくるか、という部分まで踏み込んでいくわけですが、お店のオーナーさんや金融機関の多くは、ランチ需要を過小評価しているのではないかと思います。

ここで言うニーズは、「昼になったらご飯を食べたい」ではないですよね。せめてもう一歩進めて、最低でも「昼になったら、○○な感じの美味しいものを食べたい」をクリアせねばなりません。すごく当たり前のことを言っていることは自覚しております。

しかし、ある一線を超えた、すっごい美味しいランチの店が少ないとしたら、生活者やビジネスワーカーは、この街での美味しいランチ体験を諦めているのかもしれません。街に、そう思わせるムードが漂っているのかもしれません。

いや、私の店は自信を持って美味しい料理を提供している!という店主さんもいるはずですから、これは一般論かつ全体感の話として聞いてください。例として、以下のことを満たしているランチの店は、どれほどあるでしょうか?

<こんな店はありますか?チェック表>
・学生の街ではないので、ボリューム勝負をしていない。
・毎月通っても、最低1つは違うメニューがある。
・季節を感じる食材が使われている。
・健康で元気になりそうな雰囲気が料理全体から伝わる。
・ひと手間を惜しんでいない味を感じる。
・質と内容に自信があるので、強気の価格で提供している。

私は6年間、富山市中央通りにオフィスを構えていましたが、なかなかそういうお店に出会うことができませんでした。

以下は、個人のnoteページで書いた関連記事です。

以上のnoteページでも書きましたが、富山市中心部の電車通りに、行列ができる小さなカレー屋さんがあります。

私は、カレーが美味しかったという理由の他に、どんな人たちが来ているのかを知りたくて、何度も足を運びました。客層は、ビジネスワーカーだけではなく、確実にわざわざやってきた人たちも少なくないように感じます。

先ほどの、<こんな店はありますか?チェック表>の事例とは観点が異なりますが、まちなかランチのニーズを証明したお店の好事例だと思います。

私自身、勇気と希望をもらいました。ありがとう。

お店の店主さんには、富山市のランチ需要を諦めないで!と言いたいです。「うちの店も色々頑張ってみたけど、ランチはダメだね・・・。」と考えずに、さらなるこだわりで、お客さんをランチの虜にしてほしいと思います。

私の6年間の経験と、また、ランチ難民になっていたり、ランチを諦めたりしている人々の存在を知っていることで、ランチ需要はもっとあるという仮説を確かめてみたい!という純粋な好奇心が湧いています。

2.ニーズは表面化する以前から存在する。

下の図が、コロナ以前に考えていた企画イメージの一部ですが、今まさに、飲食店が一生懸命になって取り組んでいることだと思います。

以前から当たり前のように、テイクアウトや通販をやっていた店は、すでに地元での認知が進んでいる分、外出自粛要請があってからのほうが、売上が増えているはずです。

伝えるプロジェクトデザイン企画書(仮説)noto用

うちのカフェも、以前からこういった展開をしたいと思っていましたが、目の前に、来店してくださるお客さんがいる間は、テイクアウトを本気で考えようとはしませんでした。

店の立地、規模、設備、スタッフの人数などによって、どう頑張ってもこれ以上の売上は見込めない、という限界は理解していて、その売上も実は十分ではない、ということも承知です。

ところが、テイクアウトで生き延びるしかない、というところからスタートして、もっと幅広い販売チャネルを考えるようになると、店舗の枠にとらわれれない自由な発想が生まれてきました。

<フローの多チャンネル化の効果>
店内の限られたキャパに合わせたリソースマネジメントが脱却して、ものごとを幅広く、柔軟に考えることができるようになる。また、作り置きができる商材を増やし、その生産体制をつくることで効率のよい人材マネジメントができるようになる。

テイクアウトも、実際にやってみると予想以上に売り上げになります。これはもともと「存在していたニーズ」であり、私たちはニーズを軽視していたのだと気づきます。

皆さん、ニーズは「見つけるもの」「気づくもの」だと思いますか? 

私は、お客さんに錯覚させるものなのかもしれないと思います。マーケティングでよく使われる、ベタな言い方をしますと「ウォンツ」がまさにそうです。今回、皮肉にも、生活者のニーズを錯覚させたのがコロナによる外出自粛要請でした。

私たちが見つけたわけでも、気づいたわけでもなく、お客さんのほうが店内で食べられないなら、せめて美味しいお弁当がほしい!という自分のニーズに気づいて、それにお店が対応したという構図ではないでしょうか。

店じゃなく、家で美味しい料理を食べられる。しかもそれを届けてもらえる。そんな便利なことを知ってしまえば、なかなか元には戻れません。そこで浮上してくるのが「では、店で料理を頂く価値とはいったい何なのか?」という、店のあり方の根底を揺るがすことです。

これは、飲食店経営をされる方であれば、誰でも考え始めている、あまりにも深いテーマなので、また別の機会にしておきます。

3.テイクアウト活況により、美味しい弁当が増えた?

今、SNS上は、テイクアウト弁当の写真で溢れかえっております。富山市にオフィスがあったころ、近所にこれほどのお弁当が充実していたら、当時のランチタイムは、もっと楽しかったはずです。

先ほどの「富山市のランチ需要を諦めないで!」に輪をかけて言いたいことが「店で食べてもらうだけがランチ需要じゃないよ!」ということです。これ、今となっては、もの凄く当たり前のことのようですが、コロナ以前に、お弁当が買える店は、本当に少なかったのです。

ですから、「Local food table」でつくる拠点では、きっと多くの店が気づいていないであろう、テイクアウトと宅配弁当の売上で、ビジネスの基盤をつくるという収支計画を立てていました。これからも、その考え方を変えるつもりはありません。

街中に美味しいランチの店が溢れ、テイクアウト弁当も充実して、ランチタイムが楽しくなるような未来を、今から楽しみにしています。

私は、お客さんとなる生活者やビジネスワーカーたちのランチ体験が、より豊かになることを第一と考えて、経済的な成功は付録のようなものだと思っています。結果がついてこなければ、努力が足りない、それだけの話かと思います。

今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございます。次回は、店のメニューの価格は変動できるか、についてお話します。

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