見出し画像

三島由紀夫の関連本等の感想まとめ

「三島由紀夫の関連本多すぎ問題」というのがあります。(わたしの中で)
三島由紀夫は来年2025年に生誕100年、没後55年を迎えますが、彼に関しての研究は現在でも盛んにおこなわれています。
そんな素晴らしい研究とはなんの関係もないわたしですが、三島作品の面白さに夢中になり、彼の文学に心惹かれれば惹かれるほど、彼の人間性や作家活動以外の顔にも興味を抱くようになりました。
そんな思いから、三島関連の本をすこしずつ読み進めているので、文学の知識は浅いですが、いち三島ファンとして感じたことを素直に感想として綴っていきたいと思います。
数多の三島関連本の中から気になる一冊を発見するお手伝いができれば幸いです。
*感想は随時追加していきます。
*一部書籍以外も混ざっています。


三島由紀夫の直接交流者による評伝

三島由紀夫: ある評伝 - ジョン・ネイスン

おすすめ度:★★★★
三島作品の翻訳者による非常に緻密で客観的な分析。三島を知る上での教科書的な一冊だと思った!
「三島は、だれにでも自分こそいちばん三島に近しいと思い込ませる生まれつきの才能を持っていた」という言葉が三島の魅力と欠点を同時に表現しているように思う。
三島の「治りたがらない病人などには本当の病人の資格がない」という言葉は、太宰治への揶揄として取り沙汰されがちだが、著者がそれはむしろ「ほかならぬ自己自身を病人と見ている三島の感覚であり、そこから回復しようとする意志である」と指摘してくれているのが良かった。

五衰の人: 三島由紀夫私記 - 徳岡孝夫

おすすめ度:★★★★
三島事件の当日に三島から「檄」を託されたジャーナリストのうちの一人である著者が、自身の取材メモなどを交えながら三島由紀夫という人物を振り返る。
三島の死が報じられた時の各紙の見出し集もまとめられており、当時の衝撃の大きさが窺い知れる。
三島の最後を語るには、思想だけでなく当時の時代・政治的背景も考慮する必要があると再認識させられた。
よくヤジやヘリの音で聞こえなかったと言われる「檄」だが、徳岡氏がそれを否定し「聞く耳があれば聞けたはず」と書いていることに、言いようのない感情が込み上げた。
思い出話も面白い。バンコクで会って以来久しぶりに日本で再会した三島の第一声が「あなたとはいつも太陽の下で会う!」という気障な台詞なの非常に三島らしくて大好きだ(しかもこのとき三島は半裸で登場)(面白すぎるよ……)

三島由紀夫を巡る旅: 悼友紀行 - 徳岡孝夫、ドナルドキーン

おすすめ度:★★★★★
三島と親交の深かった両氏が、三島所縁の地を巡りながら友を回想する旅行記。
徳岡氏の記者らしく整然とした文章と、キーン氏の見識豊かな会話が面白い。三島だけでなく鴎外や鏡花について論じたり、グレタガルボの逸話までもが登場する。
「豊饒の海」の月修寺が法相宗であるが、法相宗の根本的な思想が「人間が見るものは全て幻想に過ぎない」というものであることを初めて知った。
この知識を得た上でもう一度作品を読み直したいし、モデルとなった奈良の円照寺にも行きたい。 あとニューヨークで孤独な夜を過ごした三島の話に強い共感を覚えたのでニューヨークにも行きたい。
読むと切なく、寂しくもなるのだが、なんだか旅に出たくなる! 読み終えるとそんな胸の熱さが残った。

三島由紀夫おぼえがき - 澁澤龍彦

おすすめ度:★★★★★
三島由紀夫という人物およびその文学について、同時代の文学者目線での記録。
澁澤から見た三島は、生真面目で、お茶目で、愛すべき人物にみえていたにちがいない。二枚の皿を使って阿頼耶識について熱心に語っていた三島に対して、澁澤が「そりゃ皿屋敷でしょう」と突っ込んだ話がツボ。澁澤の三島への愛あるイジリが好き。
「豊饒の海」について、「奔馬」のラストシーンと太陽崇拝の関連性にも納得したが、「三島作品はすべて観念(déjà/already)だったのに、天人五衰の最後の最後ではじめて現実(déjàでないもの)が入ってきた」という澁澤の分析が大変大変大変腑に落ちた!
泉鏡花への評価も面白かったが、稲垣足穂作品について三島も澁澤もあまりにかわいいかわいい褒めるものだから、三島おすすめの「フェヴァリット」を読みたくて仕方なくなった。(↓後日、読んだ)

羽田の見送りの話などはとても切なかった。三島の訃報を受けてすぐ筆をとるところに澁澤の作家魂を感じつつ、なんとも涙を誘われる文だった。

回想 回転扉の三島由紀夫 - 堂本正樹

おすすめ度:★★★
映画「憂国」の演出家による評伝。
だいぶパーソナルな内容が多く、コレ書いて良いんですか!?と読んでるこっちが不安になったが、「午後の曳航」にカットされた結末があった話や、映画「憂国」の制作裏話などは面白かった。
郡虎彦の「道成寺」と、三島が青春を見出したという春日井健の短歌を読んでみたくなった。(↓後日、読んだ)

研究者ではなく、友人かつ劇作家というクリエイター目線での矜持に満ちた言葉が新鮮で面白かった。三島の演技下手!とかバッサリ切ってたのもいっそ気持ちがよい。

伜・三島由紀夫 - 平岡梓

おすすめ度:★★★
三島の実の父親、梓氏による愛する息子の回想録。
露悪的でぎょっとする記述も多い。たとえば三島の切腹について「伜を肉屋に丁稚奉公にやった覚えはなし……」など、かなりシニカルで毒が強い文なのでちょっと閉口するかもしれない。
しかし、そこに隠されている紛れも無い愛情を読み解くほかはない。肉親ならではの挿話もあり興味深かった。
本当に三島は幼い頃から、富士山と大洋と夕映えに憧憬していたんだなあ。

剣と寒紅 - 福島次郎

おすすめ度:★★
三島の遺族により出版差し止めの訴訟のあった、きわどめの一冊。
三島のプライベート部分(特に性的な)へだいぶ踏み込んでいるので、ファンからすると読むのはちょっとはばかられるのと、読んでいてうーんとなる箇所も多いかも。
とはいえ、同性愛者の男性が当時どのように三島作品を受け止めたのかという点は興味深かった。「仮面の告白」が出たときの衝撃は想像するにあまりある。
三島の無邪気さや子どもじみた部分もまた三島の一面であり、多面体としての人間というものを感じた。
三島の持っていたであろう男性からの性的なまなざしへの渇望、それは彼が得られなかった母の愛への渇望にねざしているのかもしれない、誰かから求められ愛されていたいという不器用な欲求なのかもしれない。

級友 三島由紀夫 - 三谷信

おすすめ度:★★★★★
学習院時代の親友であり「仮面の告白」草野のモデルである著者による回想録。三島由紀夫、というより、「平岡公威」との思い出を大切に紐解いてくれている。
本書の中で著者は繰り返し、三島由紀夫は行き詰まって死んだのではない、と強く断言しているのが印象的だった。三島の天才性を認めつつ、彼の孤独と悲痛さを理解しているのが伝わってくる。「絶好の状態に自分をもってゆき、まさにそこで自刃したと思う」という言葉に同感する。

彼は類希なる作家、思想家、そして文化人であった。自分の思想のために、生涯の頂点で、世人の軽蔑は覚悟の上で死ねる者が何人居るか。彼と思想を異にするのは全く自由であるが、嘲笑するには先ず自分の考えに殉じて死ねる者でなければなるまい。なぜなら、彼の死は冷静な死であったから。

親友としての熱い思いと優しさを感じる文章たち。読めて良かった本。
前半に紹介されていた手紙のなかで、20歳になってはじめてタバコを吸い方を覚えた三島が「少しオトナになった気持」と素直に書いていたのがほほえましい。

三島由紀夫の日蝕 - 石原慎太郎

おすすめ度:★★★
戦後の新進作家として交流のあった著者が、三島の死後二十年を経て執筆した本。
全体を通して、三島の完璧主義の裏にある虚構や破綻を痛々しく思い出している内容で、「破綻を恐れ完璧な均衡を願望する人間にとって、実はそう願うことそのものが破綻の引き金となるという逆説を、三島氏は自分の命の代償に一体誰のために証してみせたのだろうか」と指摘している。
ファン心としては三島が運動音痴なのに無理しすぎとか下手くそとかなにもそんな言わなくても……(涙)と感じてしまう部分が多かった。
しかし、そんな中で、「なぜ誰も三島を止められなかったのか」という悔しさや、三島をまつりあげた周囲の責任を問うているのだろう。一見手厳しいが、これは著者から三島へのラブレターなのかも、とわたしは思った。

三島由紀夫の世界 - 村松剛

おすすめ度:★★★
親の代から三島家と親交があった著者による評伝。
「三島由紀夫」というイメージにつきまとうスキャンダラスな曲解や伝説の数々を払拭しながら、ぶあつく、こまかく、丁寧に三島(むしろ平岡公威)の人物像をたどっていく。作品やエッセイなど三島の文章をしっかりと引用しながら論じてくれるため安心して読めた。
三島が同性愛者であったという説をはっきり否定しているのが印象的。
ある程度三島作品を読んでからこの本を読んでみると、作品および三島についてより一層理解が深まることと思う!

それ以外による評伝

三島由紀夫 悲劇への欲動 - 佐藤秀明

おすすめ度:★★★★
三島由紀夫文学館三代目館長による三島の分析。
仮面の告白から登場する「身を挺する」「悲劇的なもの」たらんとする渇望を「前意味論的欲動」と定義して、三島の生涯と文学を論じている。
三島の演劇における役者と役の分離志向を「シアトリカルな天皇」という考えに重ねる視点は目から鱗だった。
強すぎる感受性やセクシュアリティによる生き辛さを抱えていた三島が、熊野神社の夏祭りで神輿を担いで見た青空は、「『自分がそこから隔てられてゐるといふ悲劇的な諦念』が消え、皆と同じだという実感を味わった、その瞬間の『青空』なのである」という文章に胸が詰まった。

「三島由紀夫」とはなにものだったのか - 橋本治

おすすめ度:★★★
「生きている間の三島由紀夫が嫌いだった」と述べる筆者が、三島のスター性や伝説がいかにして作られたのかを自問自答しながら分析している。熱心な三島ファン目線ではない分析がかえって面白い! というかファンでないのにこれだけ読み込んでいることに流石橋本治としか言いようがない。
「豊饒の海」の最難関である阿頼耶識についての解説がわかりやすく、非常に勉強になった。
「春の雪」の清顕と「禁色」の悠一という三島作品における二大美少年の関連性についての記述も興味深かった。
「禁色」は悲劇に終わるマイフェアレディ……なるほどね!

ペルソナ 三島由紀夫伝 - 猪瀬直樹

おすすめ度:★★★★
官僚一家の生まれである三島を、作家であり政治家である著者が、日本近代化の歴史や政治史を踏まえながらファミリーヒストリーをたどった本。
約400ページある大作だが、まず最初に祖父の代から話は始まり、祖父だけで約100ページ以上が費やされている。もはや歴史の勉強。
でもたとえば三島が資源不足の戦時中でも「花ざかりの森」を出版できたのは、樺太庁長官だった祖父がかつてパルプ工場を樺太に誘致したことから、その恩義のある王子製紙とのコネクションが活きて、三島が用紙の手当てを要請できた……など、こことここが繋がるのか!とか、今まで他の本で読んで知っていた事柄もこういうバックグラウンドがあったのか!とか、新たに深掘りして知ることが多くて非常に面白かった!
読み終えると壮大な一本のドラマを見きったような気分になった。

書簡集

三島由紀夫十代書簡集

おすすめ度:★★★★★
学習院時代の文芸部の先輩、東文彦との手紙のやりとり。
ハイティーンが書いたとは思えない精緻な文章で、互いの作品批評や文学談義、学校の愚痴までもが素直に綴られており、たいへん面白かった!
三島の文学活動の原点を知ることができるおすすめの本!
わざわざ手紙の日付部分の横に波線をつけて自分の誕生日をアピったり、谷崎の「悪魔」を読んであまりの特殊性癖に「思い出してはゲエゲエ云ってます」と書いていたり、一人称が「公威」の注釈をつけていたり、なんと若く愛らしい三島少年……。
余談ですが、これを読んで東文彦先輩が気になった方は、ぜひ「東文彦作品集」もお手にとってみてください。「凩」という作品がすごくよいんです。

川端康成・三島由紀夫往復書簡

おすすめ度:★★★★★
二人の師弟関係の変化を感じることのできるやり取り。
情熱的で筆マメな三島青年と、寡黙だけど面倒見の良い川端先生という印象を受けた。
20歳の三島が川端との初対面の直後に書いた手紙に、創作中の孤独と不安が直裁に吐露されている。「自分の腕が誰かを抱くやうに出来てゐるのを、心底から呪はしく感じます。私は手を失くしたいと思ひます。触手を喪いたいと思ひます。」 ……こんな苦しい手紙をもらったときの川端先生の気持ちを知りたいよ。尊敬の気持ちの背後に、愛されたい・理解されたい心の叫びを感じた。
「いま猫が膝に乗ってて重いです」的なことを書く三島の猫好きっぷりに和んだ。また、手紙で話にあがる作品はどれもこれも読みたくなる魔法。川端がみずうみを「やけくそ」に書いてると言っていたのが面白かった。

写真集

三島由紀夫の家 - 篠山紀信

おすすめ度:★★★★
生前三島が暮らしていた家の写真集。出版は1995年。
美しい写真を通して、既に存在しない三島の息吹が今なおそこに宿っているのを感じられる。愛読書のならぶ書斎や、愛用のカフスボタン類の入った箱など、ページをめくりながら、かつて三島が心ときめかせたものたちの煌めきが凝縮された、優雅だが明快な白亜の家に想いを馳せる。
ここでも愛用のメモ帳がかわいい子猫のデザインだったり、そのメモ帳に海外旅行中「アクロポリスのパルテノンに黒猫棲めり」エジプトで「沢山の猫」など逐一書いているところに、猫好きの三島を発見してちょっと癒された。
大きいサイズのと小さいサイズの普及版と、2パターンあるようだが、ぜひ大きいサイズで三島の見ていた世界を楽しんでほしい。

グラフィカ三島由紀夫 - 新潮社編

おすすめ度:★★★★
没後二十年記念に出版された、未公開写真を含め三島の生涯を追うことのできる一冊。
あまりネットでも広まっていない写真が多いので見応えがある。一歳のふくふくした三島、レアなメガネ姿の学習院時代の三島、カラー写真の綺麗な瞳をした三島などなど……。
直筆原稿も多数掲載されており、その字の美しさに惚れ惚れしてしまう。大人になってからは当然として、そもそも初等科二年時の作文「ほめられた事」の時点で綺麗すぎる。
個人的には巻末の翻訳書目リストも興味深かった。三島文学が幅広い言語に翻訳されて世界へ広がっているのがよく分かる!

映像

Mishima: A Life in Four Chapters

おすすめ度:★★★★★
関連書籍ではなく映像作品だが、三島作品の世界観の解釈・芸術的表現として非常に良かったので記載しちゃう。
日本未公開、ポールシュレイダー監督による日米合作の映画。主演(三島役)は緒形拳。金閣寺・鏡子の家・奔馬の3作品がフィーチャーされているが、舞台セットと心象風景がリンクした演出が本当に素晴らしい!!
金閣寺がパカーーーっと開いて溝口の目の前に黄金が広がる場面、勲が真っ白な神社の前で同志たちと宣誓をする場面、勲が暗い蜜柑畑を駆け抜ける場面からの憂国へのトランジション、そして全ての作品と三島の最期が一挙につながるラストシーンなどなど……一度みたら忘れられないほど印象的な画面の連続!
わたしが三島好きだからというのは関係なく、ふつうに今まで自分が見てきた映画のなかでも上位に入るのではというほどに衝撃を受けた。
劇伴も良いし、パッケージデザインも美しい。

三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実

おすすめ度:★★★★
三島が自決一年前におこなった公開討論会のドキュメンタリー映画。
もっとはい論破!みたいにやりあってるのかと思っていたらそんなことはなく、熱量とリスペクトのある対話をしていてすごくよかった。
三島は書く力も話す力も聴く力も備えていた人だったのを感じられた。
文豪と呼ばれる人物がこれほどまでに動いて話す映像が残っているのは三島由紀夫くらいのものかもしれない。本人の人間的魅力も知ることができるのでおすすめ。現在はNetflixで視聴可能。

雑誌、その他

中央公論特別編集 彼女たちの三島由紀夫

おすすめ度:★★★★
「サド侯爵夫人」に倣い、執筆者・対談相手はすべて女性限定というコンセプトに惹かれた。三島の婦人公論への寄稿などが主に収録されている。
森茉莉との往復書簡が濃密で良い!
三島の女性観、そして女性から見た三島像が双方向から見えるのが面白かった。三島の女性観については、(特に現代の規範に照らしあわせれば)さまざまな意見があると思うが、わたしはこの本を読んで三島が女性と対話する姿は素敵だなと感じた。当時から多くの女性読者がいたこと、いつの時代も三島文学を愛した女性が存在することを再認識した。

おれの三島由紀夫 - 大橋義輝

おすすめ度:★★★★
おれと三島由紀夫、ではなく、おれの三島由紀夫。
三島好きすぎるあまり恋人も作らず、約十年間、青春を三島にフルコミットしてきた著者(当時26歳のフジテレビ社員)が、三島という「金閣寺」を燃やし自分の人生を生きるために執筆した、三島関連で最も非アカデミックで最も純粋に共感できる一冊!
これも評伝ちゃ評伝なんだけど他の本に並べるのもちょっと異色すぎると思ったので、ここに記載。

異様なオーラを放つ本書↑
べらんめえ口調のユーモラスな文章ではあるが、熱心な読み込みで鋭い指摘や独自の考察を論じている部分もあり、ファンとして尊敬する。
どうしてそんなに三島が好きなのかと尋ねられると、「好きだから好きなんだよ」と答えるが、あえていうなら「天才の魅力だ。その天才も努力という磨きのかかった天才なんだ」という言葉を始め、そうなんだよ!!!と同志と熱く握手したい気持ちに駆られた。
奇しくも本書の脱稿5日後に三島は本当にこの世を去った。あとがきにある「おれはそんなお前が好きだったぜ。心底好きだったぜ。」という素直な愛が、はげしく胸をうつぜ。
古書店の通販で買えると思うので、三島ファンに限らず、何かのファンやオタク、「推し」がいる全ての方々に一読してみてほしい! きっと時を超えてあなたのハートも共鳴するはず!

作家の診断 ロールシャッハテストから創作心理の秘密をさぐる - 片口安史

おすすめ度:★★★
ロールシャッハテストを通じて作家の心理診断レポートをまとめてある本を読んだ! 確実性はともかく、その人が世界をどのように見ているかというのが覗き見られてなかなか興味深かった。
三島が心理診断にノリノリになるとはあまり想像がつかないんだけど、こういう企画を冷やかしたりすることなく、協力的かつ真摯に受け答えする三島の姿が素敵。
テストの結果、三島は想像力豊か、自己統制が強い、愛情飲求を抑える傾向が強い、「おそらく氏においては、外的な刺液になんとなく引きずられてゆくということはなく、自らの独自の世界の中に、対象を引きずり込んでしまうことになるだろう」などと分析されていて、インクのシミでこんなことまで!?と驚き。同性愛傾向なども指摘されていた。
ちなみに三島のほかにも佐藤春夫、森茉莉、江戸川乱歩など全21名の診断結果およびそれらから導き出される作家の共通的人格像が分析されている。
好きな作家がいる方は見てみると面白いかも!

おわり

不世出の天才と形容される三島由紀夫も、当たり前ですが、人間なのです。
こうした評伝をはじめとする関連書籍等々を読んでいくことで、三島由紀夫の思想、哲学、感情、俗っぽさ、チャーミングさ、というものをより深く感じ取ることができるのではないかなと思います。
まだまだ新しい関連書籍も出ているので、今後もいろいろと読んで三島の魅力をどんどん発見していきたいです。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?