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大人の絵本『水かがみのむこうで』part2 by リーヴル・ Mei



↑物語のはじまり、part1はこちらからどうぞ……♪




「だれか、だれか助けて……」
少年の声が、聞こえます。
でも、そばにはだれもいません。
見ているのは、マーイひとりだけ。
けれど、遠いオアシスの国の、水かがみの前にいるのでは、
どうしてあげることもできません。
マーイはおもわず、水かがみにむかってさけびました。
「水よ 水よ この星の恵みよ
どうか、どうかあの子を助けて……!」
そして、大粒の涙をこぼしました。

そのしずくは、水かがみに落ちて――
少年がいる、遠くの景色の中にすいこまれてゆきました。

ほのおが、少年のすぐそばまでせまってきます。
熱くてくるしくて、もう、にげることもできません。
そのとき――


冷たいしずくが、ぽたりと落ちて、少年の手をぬらしました。
ぽたり。また、ぽたり。
冷たい雨が、あたりにふりそそぎ、ほのおを消していきました。


「天のかみさまが、助けてくれたんだ」
少年は、元気をとりもどして、
かけだしていきました。

少年は、しずまりかえった町をかけてゆきます。


見えるのは、焼けこげた家や、くずれかかった家ばかり。
安心して休める場所をさがしているとちゅう――
(あっ……!)


道に、だれかがたおれています。
となりの国の、兵士です。
この国も、となりの国も、食べ物がとれなくなったとき、
畑や食料の倉庫をとりあって、争いがおきました。
争いはみるまに広がって、この町を焼け野原にしてしまったのでした。

(となりの国のやつらが来なかったら、こんなふうにならなかったのに)
少年は、くちびるをかんで、兵士をにらみました。
でも、この兵士は、おそいかかってきたりはしません。
地面にたおれて、くるしそうに息をしているだけ。
(まるで、さっきのぼくみたいだ)
そう思ったとき――
兵士のそばにあったかべが、ぐらぐらとゆれてくずれだしました。

「あぶない!」


《つづく》


Story : 真西 結弓(Manishi Yumi)
Image : リーヴル・Mei
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