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154. 逆風が追い風に変わった瞬間

Bonjour!🇫🇷 毎週金曜日に更新のフランス滞在記をお届けします。
長く書き続けてきたフランス滞在記も、次号でいよいよ最終回です。

その一つ前の今号は、滞在記を書くことで自分の中で大きく変わった「時間感覚」について書いてみます。もう少しだけ、お付き合いくださいね。


2024年1月26日。
フランス滞在記の最終回はいつにしよう?とずっと考えていた。
普通の旅行記や滞在記ならば、日本に帰国した瞬間だろう。

しかし、いざ帰国した時のことを書いてみても、いまいち「帰ってきた」「終わった」という感覚がやってこない。なんだろう、この不完全燃焼感。仕方がないので「Stay Home編」として、そのまま書き進めてみることにした。

112.お米を食べながら泣いたあの日|Stay Home編①
113.起き上がれない|Stay Home編②
115.どうしてわたしはこんなに物に囲まれているんだろう!|Stay Home編③
117.「助けて」って言えたあの時の自分を褒めてあげたい|Stay Home編④
118.おじいちゃん、おばあちゃんが怖い|Stay Home編⑤
119.だって、母は看護師だから|Stay Home編⑥
120.非常時はその人らしさが如実に現れる|Stay Home編⑦
123.なぜ海外に「かぶれる」のか?|Stay Home編⑧
124.自分にカフェオレをいれてあげた朝|Stay Home編⑨
125.3歳児からコロナウィルスはどう見えていたのか?|Stay Home編⑩
126.コロナ禍に娘が作ったミュージカルStay Home編11
127.3年ぶりに開いたノートパソコンStay Home編12
128.秘境はすぐ近くにあるStay Home編13
129.自分でできることが多い時、ついつい忘れてしまうことStay Home編14

この時期、ちょうど娘の幼稚園卒業・小学校入学、帰国後に仲良くなったフランス人マダムが帰国するのでお別れパーティがあったりと現実生活も動きがたくさんあったので、そんなことも途中に挟みつつStay Home編を書き上げた。

わたしは2020年のStay Home中に、ある欅の木の下で二十四節気のインスピレーションを受け取って、noteでも発信を始めたのだけれど、後々ふり返ると、この辺りがターニングポイントになっていた気がする。


しかし、まだまだ終わった感がやって来ない。なので、さらに書き進めてみることにした。そう。人生最大の大断捨離&お引越し「すてっこし」についてだ。

なんでわたしが、こんなに家の中の物を管理しなくてはならないんだろう。
なんでわたしが、こんなに家事をしなくてはならないんだろう。
なんでわたしが、こんなに育児をしなくてはいけないんだろう。

この、「なんでわたしが?」という気持ちが「重たいものをすべて手放そう!」という大きな原動力となった。

それから、とにかく身の回りのものを一つ一つ手にとって捨てて、捨てて、また捨てて。引越し先に持っていくと決めたものも吟味して、自分たちで運ぶ。そんな狂気にも似たようなお引越しだった。

144. ゴミと一緒に引っ越すなんてごめんだ!
145. すてっこしのススメ
146. ちゃんと出会って、ちゃんと別れる
147. ゆずると押しつけるの違いって何だろ
148. 自分にとってはゴミでも、他の人にとってはギフトかもしれない
149. すてる痛みを忘れないで
150. 引っ越しをしたら荷解きする前にやるべきこと
151. 整えて、去っていく

もはや、フランス滞在記と書くのも苦しいくらい、フランスのことなんて何にも出てこないのだけれど(笑)。このお引越し編なるものを書いていると、ある瞬間からスーッとつきものが取れたかのように、力が抜けてきた。やる気がなくなってしまったというのとは全く違う。書きたい!という気持ちはあるのだ。ただ、それがとても軽くて気持ち良いのだ。助走をつけた自転車がスーッと車輪を回すような、今まで全力で漕いできたボートが急にスーッと流れて水や風に運ばれて進んでいくような、そんな感覚だ。

今まで自分に向かってビュービューと吹き付けていた風が、急に追い風にまわった。

険しい向かい風に抗えず、進行方向に背を向けて、ひたすら過去へ吸い込まれるように向かった。でも、引っ張られるがままに任せるのではなく、一歩一歩ゆっくりと戻った。すると、ある時点から過去へ戻っているのか、未来へ向かっているのか、わからなくなって今までとは全く違う歩き方をしている自分に気がついた。そこには毎瞬毎瞬「今」があった。

あぁ、そうか。
統合って、こういうことなんだ。

本当は未来も過去も、
存在しないんだ。

と、わたしはわかった。
腹の底で、わかった。

わたしは、わたしなりのやり方で「統合」の瞬間を感じたかったのだ。
誰かに連れて行ってもらうのではなく、自分で考えた方法で。
その方法が、わたしにとって「フランス滞在記を書く」ということだったのだ。

自分の人生に訪れた、ある特定の期間のことを、今と繋げながら、ものすごくゆっくりとふり返って書いていく。

それがわたしにとっての統合の方法だったかもしれない。
次回2024年の2月2日金曜日は、いよいよ最終回です。不思議なことに、すでに書き終えて、にっこりと微笑んでいる自分がそこで待っているような気がしている、2024年1月26日のわたしです。

フランスの革命博物館にて

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