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117. 「助けて」って言えたあの時の自分を褒めてあげたい|Stay Home編④

bonjour!🇫🇷 毎週金曜日更新のフランス滞在記をお届けします。今号はコロナ禍のフランスから帰国し、自主的に14日間の自宅待機に入ったときに感じていたこと。当時、SNSに投稿した言葉をそのまま綴ります。

あの時、わたしはどんな思いでこの言葉を書いたのだろう。喉元過ぎればという状態になった今だからこそ、コロナウィルスとは一体わたしに、わたしたちに、そして世界に、何をもたらしたのか。じっくり振り返る時に来ているのではないでしょうか。



2020年3月22日。
先週木曜日に、急遽フランスから帰国しました。
今、2週間の自宅待機中です。心配してご連絡くださった方々、ありがとうございました。今のところ、家族共々、コロナウィルスらしい症状は出ていませんが、わたしは人生で初めての軽いぎっくり腰を経験しています^^;アドレナリン全開で重い荷物を抱えて走りましたから、それはそうだなと思っています。

帰国組は時差ぼけもありますし、身体が疲れています。自分のためにも周りのためにも、外との接触を避け、休むことが何より大切です。帰国する前は「帰ってこられるの怖いなぁ」という世論に触れ、罪悪感を覚えたものです。でもそんなときこそ、きちんと状況をオープンにして、周りに助けを求めることは大事だなと思います。

「フランスから帰ってきました。でも感染しているリスクがあるので自宅にこもります。その旨、不安に思っている方がいたらお伝えください」と、近所に住むお話が上手い方にメッセージしました。

フランスにいながら助け合いの大切さを痛感しました。そして、色んな方に助けられて帰国できました。出国時は荷物を日本に送る余裕なんてなかったので、お世話になった現地の日本食料理屋さんが、娘のおもちゃや子供椅子などを引き取ってくださいました。外出制限に備え、多めに買っておいた食品類は、現地で仲良くなった日本人留学生の方が引き取ってくれました。

この状況で食品ロスを出すこと、何よりみんなが自宅待機になる中、働いてくださるゴミ収集員の仕事を増やすことはすごく嫌だったので、本当に助かりました。それでも、色んなものを捨てて来ましたが、大事な思い出は持ち帰って来ました。

日本では、自宅待機に備え、友人が家の中を綺麗にし、お布団を干して、食品や生活用品を買っておいてくれました。お家でとれた美味しいお米と一緒に。ご近所さんが、沢山買ったからとトイレットペーパーやティッシュペーパー、これまた美味しい自家製米を届けてくれました。

今は濃厚接触を避け、距離をとってお礼を言うしかありませんが、14日間が明けたらしっかりお礼を伝えたいです。

コロナウィルス培養地みたいな所ばかり通過して来たので、今は徹底して引きこもります。わたしの住む里山は高齢者がとても多いので、うつしては大変です。フランスでの外出制限などの措置、当初は正直大袈裟だなぁ、いきなりだなぁと思ったりしました。しかし、日々刻々と変わるヨーロッパの現状を見るにつけ、用心に越したことはない、備えよ常にでいることがどんなに大事かわかります。

さて、今日は結婚記念日です。
誕生日に引き続き、まさかこんな記念日になるとは...ですが、一生忘れないことでしょう。友人が食品と共にお庭に咲いたお花を届けてくださいました。フランスとはまた違った、日本のピンク色。椿が綺麗です。


以上が2020年3月当時書いた文章。
読み返しながら、感じていること、伝えたいことはいっぱいいっぱいあって、いても立ってもいられなくて、自分が動くことで何か人の役に立ちたいという思いに溢れていたのだなぁと感じます。

けれど、その思いに反して動けない体、そして動けない状況。
あの時、わたしにできる唯一のことは「動かないこと」だったのでした。そして、ひたすら人に「助けを求めること」でした。

それはわたしにとってとても苦手なことで難しいことでした。でも、助けに来てくれる人は皆さん本当に素晴らしい笑顔で、中には「こうやってお返しができる日を待っていました」と言ってくださる人もいて、大袈裟ではなく人生丸ごと大きく掻き回されたような気分だった。

わたしの人生にはこれまで誰かを助けたいと思って動いたことはたくさんあったけれど、助けを求めて待つということが明らかに欠損していた。きっとその裏には助けを求めても誰も助けてはくれないんじゃないだろうかという不安があったのかもしれない。けれど、いざ勇気を振り絞って助けを求め、ひたすら助けられるという14日間を送ってみると、「誰かを助けたい」というのはすべての人間に通底するとても力強い欲求そのものなんだなという確信めいたものが湧いてきた。

自宅待機の14日間という時間はそんなわたしの人生の裏側に触れさせてくれたかけがえのないものでした。2023年現在、引っ越しの荷解きをし春の混沌に身を浸しながら絶賛「助けたい」「役に立ちたい」モードのわたしに問いかけるような言葉を過去の自分から受け取りました。

2020年の自分に。
「助けて」って、「不安だよ」ってよく言えたね。
そう言って、褒めてあげたい。

2023年の自分は、相変わらず助けてっていうのは苦手です。
でもね。あの時、あなたが頑張ってくれたから、今、ちょっと勇気を出して助けてって言えそうな気がするのです。

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