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世にもレベルの低い詐欺洗脳にかかって家庭崩壊した話

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部落解放運動内で起きた事件を、ノンフィクションで連載中! 〜登場人物紹介〜 主人公・私→ 部落出身。部落解放運動体所属の父を持ち、その団体に所属させられた経験を持つ。父の運動…
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#5   「蟻地獄への招待状」

#5 「蟻地獄への招待状」

奨学金は、悪か否か。

私は、どちらだと一言では答えられない。

奨学金の制度がいくらブラックで、いくら批判する部分が多かろうとも、
それがなければ進学できなかった私がいる。

毎月引き落とされた金額の印字を通帳に見るにつけ、愛おしさに近いような、そんな気分にさせられるのは、きっと。

奨学金が私にとって、あの真っ白ないわくつきの家から出るために必須だった事実があるからだと思う。

未来を担保に多

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#4 どこより優秀らしい、地獄の職安所。

#4 どこより優秀らしい、地獄の職安所。

親父は私の青春時代ほとんど仕事をせずに
親戚や知人からの借金とか母名義での借り入れで生活していて
「働かないと生活できない」
なんて感覚は持ち合わせていない人なんだと思っていた。

例え地獄に落ちて
鬼に追い掛け回されたって
煮たぎる拷問を選んで
きっともう二度とは働かない、
そういう男。
煮られる際には酒を一緒に入れてくれと
厚かましく頼むことはするかもしれないが。
そして鬼の業火で丸焼かれよう

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#3 末期の水は経口補水液の方がいい

#3 末期の水は経口補水液の方がいい

私の知っている親父と言えば
仕事から帰ってきて一番にシャワーを浴びて
自分の飲む酒を作って定位置についたら
梃子でも動かない男。
自分のしまつですら動かない男。
それがゆえか丸丸と肥えた恰幅のいい男だった。

半面母は食事をしてないわけでもないのに
必要以上にがりがりで、
私の知っている一番細い時が160センチ38キロ。
私の母が異常に細過ぎることは、
友人との会話の中ですら
しばしば話題に上がる

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#2 六文銭は用意できないので、愛でどうにか。

#2 六文銭は用意できないので、愛でどうにか。

「兄貴に仕事誘われとる。
じゃけえ今の仕事は辞める。
3億円くれるって約束したんじゃ!!!
それあったらなんができる?
家のローンも終わる、
お前らぁの分の学費も生活費も全部払っちゃる。
のう、信じてくれ。
何回も説明したろうが。
絶対入る金なんじゃ――――。」

騙されてぼったくられて、親戚中から反対されながら親父が建てた真っ白な家。
そこに私が1年ぶりに帰省をしたら、腰の悪い50過ぎの親父が急

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#1 三途の川を渡る時、果たして洗脳は解けるか。

#1 三途の川を渡る時、果たして洗脳は解けるか。

十数年ぶりに親父の声を聞いた。
看護師さんに、トイレに行きたいがしんどくて歩けないと伝えているところだった。
診察室の隣の処置室から聞こえてくるそれは、あの頃家族がおびえた張りのある声とは、到底ほど遠い。
大好きなタバコや酒で、焼け切れきったことがすぐ想像の付く、懐かしくない声。それでもなぜか、すぐに私の親父と分かった。そして、今際の際だという連絡が、嘘でなく本当のことだとも。

親族への連絡を絶

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