34 未来の地球と辺境の星から 趣味のコスプレのせいで帝のお妃候補になりました。初めての恋でどうしたら良いのか分かりません!
<4章:解決>
No.97 素敵な時間(沙織)
帝と私の挙式の日取りが決まった。
中世ヨーロッパのジュスタン伯爵が、ナディアと一緒に黒の秘密結社との示談に持ち込んでくれたと聞いた。
私はその話をサキのふわふわの白い背中を撫でながら、帝からお聞きした。
「ぜひ一度、お礼を申し上げたいのですが。」
私は喜びのあまり、声が裏返った状態で帝に申し上げた。
「難しいと思うが、挙式に招待はしてみようと思う。」
「こちらから連絡をとる手段がないので、颯介やナディアからゲームの召喚がきた時に伝えるしかないと思う。」
帝はそう言った。
確かに、あれからナディアと颯介からのゲーム召喚は途絶えていた。私がプテラではなく忍びだと分かったからであろう。
どうやってゲームから生還するのか、それはやはり私がプテラとして颯介を助けなければ無理なのだ。忍びの術が必要なのは間違いなさそうだと私も帝もわかっていた。
「赤の秘密結社のトップに就任した牡丹さんに相談してみましょうか。」
「そうだな。」
「まさみさんも何か方法をご存知かもしれませんね。」
「また、みんなで貴和豪一門のレエリナサウラの引く恐車に乗るのも楽しそうだな。」
「そうでございますね。」
私は帝とそのような話をしていると、浮き浮きした気持ちになるのを抑えられなかった。挙式も楽しみだけれども、恐れ多くもある。けれども冒険は、私の中にある何かをかき立てられてとてもワクワクするものだった。牡丹もまさみも同じタイプであろう。
「今日あたり、まさみの喫茶に顔を出してみるか。」
「ぜひ!」
一緒に行きたそうな顔をするサキの顔を眺めながら、私と帝は顔を見合わせて笑い合った。私は幸せだった。
No.98 まさみと牡丹の会話
「ね、私ってさー、失恋だよね。」
私は正直に牡丹に言った。
牡丹は今日も美しい振袖姿に、漆黒の髪を綺麗に結いあげていた。
「まあ、そうなるわね。」
牡丹は美しいお顔にふっと笑みを浮かべて私の顔をいたずらっぽく見て言った。
「なんかやるせないわー。」
「あら?沙織さんを認めたんじゃなかったかしら?」
牡丹はすっとぼけた様子で私に言った。
「もう、認めているけどさ。それとこれとは話が違うでしょう。」
私はイライラして言った。
「そうかしら?」
牡丹はちょっと首をかしげて言った。
「まさみが認めている方なら、帝と結婚しても良いのではないかしら?」
牡丹は静かに言った。
「それは、そうだけど。認めてないより、認めている人の方が良いのだけれども。」
私はうまく自分のもやもやを説明できなくて、ため息をついた。
「ちょっとさー、なんかうちらもぱあっとやる?」
私は思いついて、牡丹に言った。
「ぱあって?」
牡丹は私の顔を見る。
「どこで?」
「そりゃあ、決まっているじゃない。」
そう言って私はふふっと笑った。楽しいことを思いついてしまった。
No.99 結婚パレード(沙織)
城で行われた結婚披露宴は豪華豪華で盛大なものだった。私と帝は牡丹の貸し出してくれたレエリナサウラの引く屋根のオープンな恐車に乗って都の大通りをパレードした。
「おめでとうございます!」
「おめでとう!」
「帝!」
「沙織さま!」
沿道には多くの忍びや恐竜たちが詰めかけ、煌びやかな紙吹雪が舞う中、大歓声で祝福された。私たちのパレードの上空には軍のハツェゴプテリクスたち翼竜が守るように飛び交っていた。
音楽隊が音楽を奏で、私たちの恐車の後を軍の衛兵たちがオルニトミムスに乗って整然と並んでついてきた。
「沙織、私と結婚してくれてありがとう。」
帝は嬉しそうに私を見て言ってくれた。口づけをしてくれた。
途端に、沿道の大観衆はもっと大きな歓声を上げた。
「夢のようでございます。」
私は帝にささやいた。本当に信じられない思いでいっぱいだった。