センセイはどこへ行った?
昔同僚だったセンセイと話をしました。
第一声が「とにかく人が足りない」でした。
その人は退職した後、再任用でフルタイムで勤務しているのですが、学級担任が精神疾患で療養となったため、急遽学級担任を任されたというのです。
私も退職済なのでよくわかるのですが、定年退職するとやっぱりモチベーションは下がるわけです。
そんなことじゃいけないとは思うものの、普通は再任用はフルタイムといえども臨時任用扱いですから、当然給与は大幅に下がります。
都道府県によっても違うでしょうが、校長でも再任用なら少なくとも4割減くらいにはなります。
貰えるものが減れば、モチベーションが下がるのはある意味しょうがないと思います。
でも、普通はその分、重要な校務分掌はあてがわれません。
管理職としても、そこに頼るには結構気をつかうものです。
だから、授業はしてもらっても学級担任はよほどでないかぎり頼みません。
しかし、現実はそれどころではないようです。
本当に人がいないので、70代の人に無理を言ってきてもらっているそうです。それも複数。
また、中規模以上の学校では学年のまとめ役の人は通常学級担任からは外しますが、もうそんなことを言っていられないというのです。
いったい、先生はどこに行ったんだ、という感じです。
こんな状態では、子どもとゆっくり話をしようという余裕などまったくないでしょう。
寄り添うことが大切だと頭ではわかってはいても、精神的にも時間的にもほとんど無理です。
なぜこんなことになったんでしょう。
採用試験の倍率が全国的に急落しています。
世間では、新卒の学生がブラックを恐れて受験しないことが最大の原因だと思っている人も多いようですが、実は新卒の受験者はその年の新卒者全体数に対する割合でみても、あるいは実数で見ても、現場をここまで追い込むほどの減少ではないというデータもあります。
むしろ、学校を窮地に追いやっているのは、ある程度現場を経験した臨時採用(大学を出て2年以上の人)の若い人が急激に減っているのです。
私が中学校の校長をしているときも、教師としての資質もあるし、熱意も協調性もある人が採用試験に何年も合格しないのです。
それでいて、教員不足なのは、今後少子化が進んだ時に教員が余ってしまうことを恐れているのかもしれません。
でも、どうして過年度で経験もある人が合格せずに新卒者が多く採用されるのか(私の地域だけかもしれませんが)、どうも納得できません。
そもそも、不合格にされたのに、人が不足しているからやっぱり助けてくれと言われたら気持ちは複雑でしょう。
悪く言えば、最初から経験のある人を安く雇うために不合格にしたのではないかと疑いたくもなるでしょう。
また、将来的に少子化になることが予想されていても、今学校に通っている子どもたちが割を食うのはおかしな話で、将来人がだぶついたとしても、学校現場にはいくらでも仕事はあります。
人が多いからと言って、子どもに不利益が生じることはありません。
逆に、少ないことは決定的な悪影響を及ぼします。
今、これだけセンセイが少ないのに「もう少しの我慢」とばかりに、現職のセンセイを馬車馬のように働かせているように思えて仕方がないのです。
そして、全国で多くの新採用者が1年を待たずに退職しています(東京都では4%程度にも達しているそうです)。
結局、学校教育に国が本気でお金をかけてくれないところに話は行き着きます。
国会(予算委員会を含む)でも、教員不足に関してはほとんど話題になりません。
いわゆる裏金問題など、不正に対する糾弾も必要ですが、子どもを大切にしない国に将来はあるのかと思うのです。
その上、文部科学大臣もいろいろ言われているし……
学校のセンセイはどちらかというと、政治について発言したり、行動を起こしたりするのを嫌がる傾向があるように思います。
そんなことは教員の本来の仕事ではない、という人も多いでしょう。
私もそう思います。
でも、黙っていると、センセイは「もの言わぬ」として、次から次へと重い荷物が課せられていきます。
センセイの職場環境は、子どもたちにとっての教育環境である、と言った人がいます。
ある程度、行政を動かす発信をする必要もあるのではないでしょうか。
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