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【夢日記】シャワー越しの涙

 ガーニュ、プリューヌ、オヴォールと僕は、約地下100階まである地下迷宮へ遠征に潜っていた。無事目的を果たして帰路に着くと、20階にある「ネバー」と呼ばれる大きな砦が見えてきた。その時僕は本当に大きな喜びを覚えた。というのも、本当に長い旅であったからだ。2.3ヶ月地下の中に閉じ籠って、ようやくここまで戻ってきたのだ。

ガーニュの涙
地上に戻って来た時、僕は久しぶりに夕陽を見た。空は虹色で、大気の中の光の屈折はこんなにも綺麗なのかと思ったが、皆は花より団子といった様子で、今はバーベキューをしている。やがて地上で僕らを待っていた友人がやって来て、肝試しがてら夜のキャンプ地を歩いた。途中、二階のベランダへの階段が地上まで伸びる建物が右手側に見えてきて、数名がその建物に登っていくが、下から脅かすような声を出すと、上では「きゃー」と、恐怖と喜びが混じった声が聞こえて来た。
そのうち建物一階部の車庫でバーベキューが始まった。中には社会奉仕団体のお偉いさんが来ていて、使いたくもない気を使ってもてなしていた。会場の中には一人クマの着ぐるみを着ている奴がいて、着ぐるみの頭の部分を取ると中にはガーニュがいることが分かったが、ガーニュは目を合わせると何処かへ去って行った。
僕はしばらくガーニュを探しに行ったが、彼はどこにも見つからなかったが、月明かりが綺麗に差し込む廊下を通った時、少しの物音が小さな二畳半ほどの物置から聞こえて来た。僕は好奇心と疑心を胸に恐る恐る戸を開けると、一部始終を見ていた。
ガーニュの隣には知らない男が寝ていた。ガーニュは普段からよく自分は女好きで自分の女遊びを武勇伝のように語っていた記憶があるが、今日のガーニュはどこか謙虚で奥ゆかしい様子であった。何か小さな声が聞こえた。僕は耳を澄ませると、ガーニュは彼と重なりたいと周りくどく伝えていた。彼はガーニュとは親友でありそれはできないと断ったが、ガーニュもしつこく彼に言い寄った。そしてついに男はガーニュの肩にもたれかかった。少しばかりの興奮と嫉妬は、二畳半ほどの空間に置き去りにされた。

プリューヌの涙
バーベキューをしている車庫の前には多くのデスクが並んでおり、僕はいつもの場所で、普段とは90度左に体の向きを変えて少し作業をした。僕は何かを切り貼りしていて、後ろでは社長と上司が何か重要な話をしているが、後ろの社長との距離感があまりにも近く、何度も椅子がぶつかってしまい、彼らはデスクの周りのミーティングコーナーへ行ってしまった。
暫くして僕は席を立ち、柱が乱立する広間に行くと、プリューヌがある柱の下に座り込んでいた。彼女とふと目が合い、僕は彼女に話しかけたが、彼女の背丈はいつもよりかなり小さく、彼女は内心喜んでいることに気づいた。次第に彼女は魅力的な表情に変化していって、僕はいつの間にか彼女にキスをしてしまい、少しの沈黙が訪れた。
皆食事も全て終わり、家や宿に帰っていったが、彼女はその場に座り込んで残っているようで、ドアから反対側の柱の影にもたれ込んだ。僕は彼女の前に立ち、スマホをポケットから出すと、彼女の連絡先を聞いた。彼女はそれに何か返答したようだったが、僕にはそれがいいのかダメなのか分からなかったので、もう一度尋ねた。彼女がスマホを取り出している間、僕はどうしても堪えられなくなって彼女に詰め寄り、もう一度キスをせがんだ。すると彼女は、「何の記念?」とキョトンとした顔をして聞いてきた。「別に何かの記念じゃない。君がかわいいから、好きだから」と僕は、言うと彼女は恍惚とした表情を浮かべ、僕を受け入れた。僕は無感動に善意を柱になすり付けた。

オヴォールの涙
ちょうどネバーに着いた頃、僕の隣にはハイヒールを履いたオヴォールが歩いていた。僕は困難な旅から帰ってきたという達成感を感じると共に、彼女が明日からいなくなると言う悲しみに心が支配されていた。「明日からはもう会えないのですね。本当にこれまでお世話になりました」と言うと、僕は膝から泣き崩れた。すると彼女は僕の名前を呼んで「そうだね。寂しいね」と肩をさすり、肩を抱えてくれた。僕は子供のように「そんなの嫌だ」としばらく泣きじゃくっていたが、彼女も少し恥ずかしそうに顔を隠しながらも、おそらく僕と同じように下を向いて同じくらい多くの涙を流していた。
オヴォールと僕は、キャンプ地となる建物に他のメンバーより先に帰ると、まずお風呂に入った。僕は先にシャワーを浴びていると、数分後に突然浴室のドアが開き、彼女が入ってきた。彼女は白のフリルがついた下着姿で驚きはしたが、彼女に少し温いシャワーをかけてあげた。
その頃プリューヌはどこか心配をしていた。汗が溜まった器に雨を注ぐと、間違いは起きないと彼女は願っていた。だた、その器は雨で決壊し、中の汗とも雨とも言えないものは急に決壊した。
 僕は彼女を見つめた。きめ細やかで白い肌、長い髪、思ったよりもはっきり見える産毛。僕は彼女の全てを撫でた気がした。長いまつ毛から水が滴る。湯気は僕らを世界から隠していく。そして君の目の奥には滝が見えた。おそらく彼女も同じ気持ちだったのだろうか。僕らはシャワーの中で唇を重ねるしかなかった。

2023年1月11日

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