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著: あきふゆ

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あきふゆによって書かれたお話たちです。
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#小説

【短編小説】モフモフ

【短編小説】モフモフ

街中が緑と赤に染まり始め、クリスマスを感じさせられる季節になってきた。だが、俺には関係ないことだ。毎年クリスマスもバイトの俺は、どれくらい忙しくなるんだろう、ワンオペとかになったら嫌だなあとか、繁忙期くらい時給あげてくんないかなあとか、そんなことばかりを考えながら家に帰った。家に着くと、扉の前に白くて丸いモフモフしたものが落ちていた。いや、何だこれ。家出たときはなかったよな?手のひらサイズで、かわ

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【短編小説】月

【短編小説】月

「サービスですよ」いつものように俺にだけのステージがはじまる。月に1度、満月の夜にしかこの街に訪れることはないが、毎度天女と見紛うほどの、美しく、力強い舞を見せてくれる。「今日も見に来てくれたんですね、晴(はる)」「ああ。今日も綺麗だったよ、葉(よう)」「ふふ、どうもありがとうございます」「言っておくが、お世辞とかではないからな」葉は、わかったわっかたとでもいうかのように、ふふとほほ笑むだけだった

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【短編小説】お前ってやつは

【短編小説】お前ってやつは

「おーい!梓(あずさ)~、今からラクダに乗りに行かない?」「はぁ???ラクダ?あんたここがどこだかわかってんの?」「うん!東京!」「東京のどこにラクダがいるってのよ」「うん、だから今からエジプトに行くの!!」「エジプト!?鳥取砂丘とかじゃなくて?」「じゃなくて!」今日も今日とて分からない。本当に分からない。この訳の分からないことを言っているのは幼馴染の棗(なつめ)。小さいころから家も隣、小、中、高

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