坂本温美

フリーの声優・ナレーター/雪国にある小さな町で育った道産子。/バイトをしながら素敵な役…

坂本温美

フリーの声優・ナレーター/雪国にある小さな町で育った道産子。/バイトをしながら素敵な役者を目指して毎日コツコツ勉強しています。/怪談話や日本文学が大好きです。/日常生活で感じたことや気付いたこと、忘れたくないことを1日のどこかで書けたらいいな。

最近の記事

ラジオドラマに出た話

先日、渋谷ラジオtokyoさんのラジオドラマに参加しました。 作品名は『だれも知らないはなし』 (玉手めい 役で出演しております。) 夏にぴったりな涼しいお話です。 よろしければ是非。聴いて頂けると嬉しいです。 久しぶりにマイクの前でお芝居が出来て楽しかったなぁ… 渋谷ラジオtokyo ラジオドラマ 『だれも知らないはなし』:玉手めい 役

    • 猫と目が合う日

      さあ、出掛けようとドアを開けると強い視線とぶつかった。 カッと目を見開きこちらを見ているのは、いつも私を一方的に見つめては逃げていく茶トラである。 四足を塀にしっかりつけ、背中を丸め毛を逆立たせているのは何故なのか。 いつもに増して臨戦態勢である。 太陽の光で瞳孔が針金のように細い。左右に首を傾けては、何か言いたげに口をもごもごしている。 私、噛まれるのかな。 そんなことを思いながらいつものように挨拶する。 「おはよう。良い顔してんね。」 と言った刹那である。顔の前を茶

      • ニコニコしちゃった日

        レジに立っていると沢山の人に出会う。 普通にお会計をしてくれる人 泣きたくなるほど優しい人 こだわりと癖が強い人 お金を投げたり暴言を吐いてくる人 シンプルに口と態度が悪い人… レジ打ちをする度に 世の中いろんな人がいるもんだとしみじみ思う。 いつものように諸々の業務をこなしながらレジに立っていると、ゴンッとカゴが置かれる。常連さんだ。 いつも鋭い目付きで私の手元を見つめ、小さな声で一言「袋いらない。Suica。」と言ってくるお客様である。今日も毎度お馴染み

        • 真夜中にお風呂の音がする日

          上の階に住む住人は騒がしい。 昼間は静かなのに夜中になると元気に動き出す。 今日も水の音がする。このタイプの音は… 「お風呂だ」 せっかく良い感じにまどろんでいたのに、中途半端に目が覚める。 眠たいのに。寝たいのに。今何時だと思ってるんだ。もうすぐ丑三つ時じゃないか!真夜中だぞ!明日も早いのになぁ… 寝返りをぐるんぐるん打ちまくる。 眠れない。 pixivを開いて二次創作を見まくる。 眠れない。 くっそう…どうしてくれよう。 ラジオをつけて目をつむる。 眠

        ラジオドラマに出た話

          眠る猫と見つめる猫に出合った日

          視線を感じる。たぶん高いところから見下ろされている気がする。なによ、と上を見ると猫がいた。 黄色と緑が混ざったような瞳がこちらを見ている。すっごい見てくる。じぃーっという音がしそうなくらい見てくる。 な…なによ。どうしたのよ。 猫の視線に耐えられなくなってふと、近くの木に目をやると、そっちの方からも視線を感じる。オレンジっぽい茶色猫が先程の猫同様、こちらを凝視している。 一体なんなんだ…。 猫2匹からの視線に戸惑いながらも試しに聞いてみる。 「写真、撮ってもいいですか

          眠る猫と見つめる猫に出合った日

          ポエジャンを見つけた日

          電車に乗ってぼんやりしていると見覚えのある単語が目につく。 ポエジャン こ…これは… 高鳴る鼓動、紅くなる頬を密かに抑え、目にしたそれが確かにポエジャンかを確認する。何度見てもポエジャンだ。通路を挟んだ向かい側の席に座る綺麗なお姉さんが持つスマホに描かれた文字は間違いなくポエジャンだった。信徒はここにもちゃんと存在したのだ。 あまりの感動に思わず声をかけそうになる。が、それを私の理性が「不審者になりかねない。おやめなさい。」と制止した。優秀な理性に感謝である。

          ポエジャンを見つけた日

          インチキに踊らされた日

          普段どんなに気を付けていても、どんなに用心深くしていても、心の何処かに不安があると人は簡単に騙されてしまう…。 今日、己の愚かさに悶絶しながら悟ったことである。 早朝のバイトから帰宅し午後の予定の準備でもしようかと何気なくスマホを開いた時だった。画面の上をTwitterの通知が横切る。普段なら気にも止めないことだが、今日は違った。 何故なら、一瞬見えた文字が「6月5日マグニチュード…」だったからだ。 ひとまずツイートの内容を見てみる。簡単に内容をまとめるとこうだ。

          インチキに踊らされた日

          真夜中に洗濯機の音が聞こえる日

          真夜中になると上の部屋からコトコトパキパキ、音が鳴り出す。 嗚呼、今夜も始まったなと思いながらうとうとしていると、ゴウンゴウンという機械音と共に水が渦を巻く音が聞こえてくる。 おそらく洗濯機の音だ。 壁が薄いから音がよく響く。 コトコトパキパキゴウンゴウン。 1時間これらの音がしたかと思うと、今度はウィーンと聞こえてくる。 脱水してるな…。 これが毎晩である。毎晩、毎晩、上の住人は洗濯をする。 何故この時間なのかと いい加減 文句の1つも言ってやりたくなるが

          真夜中に洗濯機の音が聞こえる日

          目尻に皺が出来た日

          朝のバイトを終えてご機嫌にしていると、傍らの大きな鏡に写る自分と目が合う。 ふと、いつもと違う気がして笑ったまま顔を近付け目を凝らすと目の端っこにうっすらと皺が見えた。 笑い皺だ。 生まれてこの方、どんなに笑おうとつるんつるんだった目尻に僅かに皺が出来ていた。 長年、微笑み続けた成果が25歳にして現れたのだ。 目の回りの皮膚は薄い。すぐに年齢が出る場所だ。戻るかな、戻らなかったらどうしようとドキドキしながら何度か笑って皺を作る。 しゅうっと出来た皺は幸いなこ

          目尻に皺が出来た日

          良い面構えの猫に出会った日

          道を歩いていたら猫に出会った。 足元に気配を感じて俯くと猫が座っていた。 鋭い目付きで私の背後を見つめているから、何かあるのかと猫の隣にしゃがんで同じ方向を見てみたけど私には何も見えなかった。 「こんにちは」 話しかけてみる。 無反応。 「可愛いね」 耳がぴくっと動く。 「一枚、撮っても良い?」 「ヴんんんんんん」 喉の奥から文字に起こしにくい声を出しながら猫がこちらをちらっと見ると座り直し、改めて視線を寄越す。 「あ、失礼します」 私は猫にぺこぺこ

          良い面構えの猫に出会った日

          アラサーになった日

          よく晴れた日の朝のこと。 祖母はわらび採りに山へ、父は仕事に出掛けた頃、私は生まれた。 お見舞いにやって来た親戚を「まだ産まれないって~、大丈夫大丈夫」と家に帰した母はこの時、まさか若干フライング気味に産まれてこようとする私によって朝から1人で戦う羽目になるなんて予想だにしなかったのである。 病院から連絡を貰った祖母は山から戻るなりでっかい声で 「産まれとる!」 と叫び、祖母からの一報によって集まった親戚一同は 「早くない?ねえ、早くない??」 と眠い目をこすり、赤ん坊らし

          アラサーになった日