ニコニコしちゃった日

 レジに立っていると沢山の人に出会う。
 普通にお会計をしてくれる人
 泣きたくなるほど優しい人
 こだわりと癖が強い人
 お金を投げたり暴言を吐いてくる人
 シンプルに口と態度が悪い人…
 レジ打ちをする度に 世の中いろんな人がいるもんだとしみじみ思う。

いつものように諸々の業務をこなしながらレジに立っていると、ゴンッとカゴが置かれる。常連さんだ。
 いつも鋭い目付きで私の手元を見つめ、小さな声で一言「袋いらない。Suica。」と言ってくるお客様である。今日も毎度お馴染みの文言を唱え、彼は私の手元を見つめる。見つめるというより睨んでいる。何か恨みでもあるのだろうか。
そんなことをぼんやり考えながらレシートを渡し、ふと顔をあげると彼と目が合った。
 いつも私の手を見つめ、こちらを一瞥もしない鋭い目が、今は私の目を見ている。
 何かやらかしたか。背中に変な汗をかきだした時、ぼそりと微かな声が聞こえた。
「ありがと」
「・・・・・・。」
しかめっ面がわずかに笑い、ペコリと頭を下げていった。

マスクがあって良かったと心の底から思う。たぶん私は今、気持ちが悪いくらいに口角が上がっている。
彼の背中を見つめながら言った「ありがとうございます。またお越しくださいませ。」の声はきっとカッコ悪いくらいうわずっていただろう。でも いいのだ、それで。

よく分からないけど笑って帰っていったのだから。


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