コタルト

はじめまして、30代の主婦で2人の子供を育てるコタルトです。 自分にとっての息抜きと…

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はじめまして、30代の主婦で2人の子供を育てるコタルトです。 自分にとっての息抜きとは何だろうと考えたときに、絵や小説を書いている時間がそうだったなと、最近になって思い出したので新たに小説を書き始めました。 もしよかったらフォローしてください✨

最近の記事

一輪の悪魔(名前⑤)

中には、ハウステンボスのオリジナルスノードームが入っていた。 「綺麗だな」 見とれて思わず声が漏れた。 そんな僕を見て 「たっくん。これから離れ離れになって寂しくなったり、落ち込んだり、会いたくなったらこれを眺めて私を想像してほしいな。ずっと前に、たっくん言ってくれたよね。私達なら乗り越えられるって。だから、寂しいけど頑張ろうね。大好きだよ」 乙葉は、遠距離恋愛をする覚悟ができたんだなと感じた。強いなと思ったと同時に、涙を堪えているのも分かった。 「ちょっとトイレ行っ

    • 一輪の悪魔(名前④)

      「たっくん、おまたせ。待ったよね、ごめん」 お風呂に入っていたはずの乙葉だが、何故かメイクをし直している。 少し不思議だったが、今日は、東京へ旅立つ前の特別なデートだ。 きっと夕飯を食べてプレゼント交換をした時に、写真を沢山撮るんだろうなと思った。 コンビニで買ってきたパスタを食べながら、今日のデートを2人で振り返っ りながら、沢山笑って話した。普段は買わない高級スイーツも、あっという間に食べ終わりいよいよプレゼント交換の時間がやってきた。 「じゃあ、お互いにせーのでプ

      • 一輪の悪魔(名前③)

        長いレジから解放された僕は、乙葉と合流した。 乙葉は、僕に見えないようにプレゼントを両手で背中の後ろに隠しながら歩いている。 「ホテルに戻ったら交換しようね」 僕は乙葉の無邪気な笑顔が大好きだ。今までも何度もこの笑顔に救われてきた。 テストで悪い点を取って落ち込んでる時も、部活でうまくいかない時も、 いつも隣でニコニコ笑ってくれていた。 もう少ししたら、この笑顔を側で感じれなくなるのかと思うと凄く寂しくなった。 部屋に到着し、僕は今すぐにでも乙葉に覆いかぶさりたかったが

        • 一輪の悪魔(名前②)

          店内を歩き回り、乙葉へのプレゼントを探した。 イニシャル入りのキーホルダーにしようかなとも思ったが、なんだか修学旅行のお土産みたいでやめた。ハウステンボス限定のお菓子もあったが、食べてしまったら形として残らないしとこれまた却下。 どうしようかなと悩みながら歩き進めて行くと、かわいらしいマグカップを発見した。 (うん、これにしよう!) と、僕はマグカップが割れないように、大事に胸に抱きかかえレジの方へと並んだ。 僕の前には、ベビーカーを押した女性が並んでいた。 さすがハウ

        一輪の悪魔(名前⑤)

          一輪の悪魔(名前1)

          僕達は、無事高校を卒業した。高校の思い出といえば、ほとんどが乙葉だった気がする。 勉強自体は、別に嫌いじゃないけど乙葉との時間は凄く濃かったからだ。 大学はというと、僕は地元長崎の大学へ、そして乙葉は東京の大学に行くことになった。 乙葉が東京へと旅立つ1週間前、2人でハウステンボスへ行って思い出をつくろうということになった。 無数のチューリップに囲まれながら、僕と乙葉は将来の夢を話した。 「たっくんは、将来的にはどこに住みたい?」 「僕は、両親の近くに居てあげたいから

          一輪の悪魔(名前1)

          一輪の悪魔(高校3年生3)

          薄暗い部屋の中で見る乙葉は、いつも以上に可愛く見えた。 泣いた後だからか、目も少しトロンとして凄く魅力的だ。 僕達が付き合い始めてもう3年。今まで何度か乙葉を抱いたが、こんなにも声を荒げる乙葉は初めてだ。 汗まみれになりながら、何度も何度もキスをして僕達は愛を確かめ合った。 「たっくん、今日は最高だったね」 帰り道の交差点で、乙葉は満足そうに言った。 あんな乙葉を見たのは初めてすぎて、まだ頭にこびりついている。 これは帰ったら100%おかず決定だ。 僕がそんな変

          一輪の悪魔(高校3年生3)

          一輪の悪魔(高校3年生2)

          僕自身、特にこうなりたいとか絶対にこうなってやる!みたいな熱い気持ちがないので、公務員でいっかなと軽く考えている。 そんな僕の気持ちを聞いた乙葉は、 「私ね、東京行きたいなって思っているんだ。やっぱり人生って1度きりじゃない?やりたいことやりたいなって。でももし、私が東京に行って、たっくんが地元に残ったら、遠距離恋愛になっちゃうじゃん?そうなったら耐えれるのかなって」 少し寂しそうにうつむいた乙葉に、僕は 「乙葉、ごめん。僕は東京に行くつもりは今のところはないから、そうな

          一輪の悪魔(高校3年生2)

          一輪の悪魔(高校3年生1)

          初キスの翌日から僕は、山本のことを「乙葉」と下の名前で呼ぶようになった。 乙葉は、下校中はもちろん校内でも僕にくっついて歩いてくるのもあって、クラスメイトだけではなく先生達の間でも、僕達が付き合っていることが諸バレだった。 「お前ら幸せなのはいいけど、ちゃんと勉強しろよー」とか「1組の中村匠さん、しっかりやることはやりなさいね」とか親みたいな事を言ってくる先生も中にはいて、正直しんどいのも事実だ。 そんな感じでみんなに見守られながら、僕達は順調に付き合い続けあっという間に高

          一輪の悪魔(高校3年生1)

          一輪の悪魔(キラキラ4)

          「その好きな人って同じクラスの人なの?山本ってさ、クラスの中でも明るいし、こんなこと言うのもなんだけどさ、結構可愛いから大丈夫なんじゃないかな?告白したら?」 すると、山本は小さく頷いて言った。 「そうだよね、やっぱり自分の気持ちは伝えるべきだよね。決めた!私、告白する! たっくん、私、ずっとあなたが好きでした!付き合ってください!」 山本の油まみれの唇が震えている。 所詮、僕も高校生だ。 今まで山本の事なんて女として意識したことがなかったのに、何故だろう。 好きだと言

          一輪の悪魔(キラキラ4)

          一輪の悪魔(キラキラ3)

          虫が怖いし、ポテトも食べないで先に帰ろうかと思っていたが、何故かコーラを飲みながら僕は、山本の姿をずっと見つめていた。 ポテトのように細くて長い指先と油でギトギトになった唇にはゾクゾクした。 そんな僕に気付いたのか、山本が僕の方を見て言った。 「たっくんって好きな人いる?」 このタイミングでその質問がくるなんて予想外すぎて頭が真っ白になった。 答えれないでいると、続けてこう言った。 「私はいるんだけどね、その人に告白する勇気がなくてさ。その人、高校の入学式の時に初めて見

          一輪の悪魔(キラキラ3)

          一輪の悪魔(キラキラ2)

          (ふざけんな!)と言いたいところだったが、相手は一応女子だ。僕は自分の感情を押さえつけながら山本に伝えた。 「ポテトぐらいしか奢ってあげれないんだけど、いいかな?」 すると、山本は子犬のように僕のところに走って近づいてきて、 「たっくんって優しいね!好きになっちゃいそう」 満面の笑みでそう言って、僕の前をスタスタと歩きだした。 向かい風で山本の髪がなびいたせいか、フワっと甘いシャンプーの匂いがして少しドキっとした。 ファストフード店で、MサイズのポテトとSサイズのコ

          一輪の悪魔(キラキラ2)

          一輪の悪魔(キラキラ1)

          「たっくん、一緒に帰ろう?」 下校中、赤信号につかまって足止めを食らっていた僕に声をかけてきた子がいた。 同じクラスの山本乙葉だった。 山本は普段から凄く明るい子で、いわゆる友達多い系キラキラ女子だ。 なので、どちらかというと僕が苦手なタイプだ。 そこまで仲良くもないのに、あだ名で呼んでくるところも正直あんまり好きじゃない。 信号が青に変わり、歩き出した僕に山本はついてきた。 特に何かを話すわけでもなく、ただただ隣で携帯をイジりながら歩いている。 友達多い系キラキラ女

          一輪の悪魔(キラキラ1)

          一輪の悪魔(プロローグ)

          明日、一人の男の死刑が執行される。 中村蓮、30歳だ。 殺人を犯したのだ。薄暗い独房の中、鼠色の天井を見上げながら涙を浮かべ、愛する嫁と息子との思いでを振り返っていた。 (そういえば鈴と付き合って、初めて俺に作ってくれたハンバーグ、少し焦げてたな。恥ずかしかったのか頬を桃色に染めながら、色んな言い訳をしてきて可愛かったな。そんな鈴を見て決めたんだよな、絶対結婚するって。 で、あっという間にときが流れて紫苑が産まれたんだよな。あんなに小さかった紫苑も、もう2歳か。来年には幼

          一輪の悪魔(プロローグ)