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「モダン」とは?イギリスのコートールド美術館・研究所のサマースクール受講【1日目】

「ラファエル前派はモダン(近代的)」がテーマ

イギリスのコートールド美術館・研究所のサマースクールのオンライン受講。1日目のレクチャー動画2本(それぞれ約1時間)のテーマは次のとおりです。

Lecture 1: Modern Painters: Art and Modernity in Britain, 1848-1900
Lecture 2: Ruskin and the Pre-Raphaelites

ラファエル前派は「モダン」(近代的)なのか?を、当時のヴィクトリア朝イギリスの社会状況を踏まえながら考察。また、ラファエル前派結成時の主要メンバーである3人の画家、ダンテ・ガブリエル・ロセッティ、ウィリアム・ホルマン・ハント、ジョン・エヴァレット・ミレイの作品の特徴を検証。およびジェンダーの観点から、ダンテ・ガブリエル・ロセッティの妹である詩人、クリスティーナ・ロセッティの詩を分析。

担当講師が早口(もちろん英語)で、薄暗い自室(ヨーロッパでは日中は基本的に電気をつけない)からZoomを使って講義を行った動画を視聴します。動画はYouTubeの限定公開で、リンクが知らされます。

動画を見ながら所々で意識が飛び、内容が頭に入ってこないのは、事前資料のリーディングと同じ(笑)。ModernとModernityとModernistsの違いとか、難しい。2本目の動画は、具体的な絵の解説だったので、少しはわかりやすかったです。

ディスカッションのトピックは?

イギリス時間(サマータイム)の14時、日本時間では22時から1時間、Zoomで行われるディスカッションのトピックは、事前に提示されているものとしては次のとおりでした。

• What makes the Victorian period modern?
• Are the Pre-Raphaelites ‘radical’?
• Does art have to engage with contemporary subjects to be considered ‘modern’?

・ヴィクトリア朝をモダンにしているものは何か?
・ラファエル前派は「急進的」か?
・芸術(美術)が「モダン」と見なされるには、同時代の題材を扱う必要があるか?

日本語でもこれらに対する自分の意見があまり出てこない・・・。

しかも、実際にディスカッションが始まってから提示されたトピックは、これらとは少し違っていました。

初回のディスカッションの様子は?

時間になってZoomにアクセスすると、参加者は10人ちょっとで、ウェルカム・セッションのときとだいたい同じでした。開始後、数人くらい増えて、最終的には、講師(とスタッフ?)を入れて17人に。

一部の人には間違ったZoomのリンクが伝えられていた(?)らしく、別のミーティングルームで待っていた人たちもいたようです。

冒頭で講師から、どんな内容を話し合うかが提示され、話したい参加者が話していくスタイル。指名されることはないので、ほっ。

私は発言せず、聞いているだけでした。本当は何か言った方がいいのですが・・・。私のほかにも何も言わない人はいて、発言する人は2、3回話す場合が多かったです。

学んだことは?「ラファエル前派」と「モダン」の意味

ラファエル前派の名称は、支持した美術評論家のジョン・ラスキンにとってさえ、わかりづらかったそうです。正確には、「(ラファエル自身ではなく)ラファエルの追従者たちより前の時代の美術をよしとする」という意味なのだとか。

ルネサンス後期やマニエリスムの時代になると、過去の巨匠たちの作風をまねて洗練させていくことになり、それが19世紀のアカデミズムにもつながっているから、ラファエル前派ではそうではなく、自然や社会をきちんと観察して、理想化することなく描こう、ということなのだと思います。

その決意、方針が、自然に忠実に描き、初期ルネサンスの絵画を手本とし、社会的な題材を盛り込む、といった特徴につながっていきます。

「モダン」であるというのもそうした点と関わっていて、ラスキンが書いたように、ラファエル前派の画家たちは、理想化して美しく見せるために何かを選び取ったり消してしまったりすることなく、緻密に描いています。

そのため、見るべき細部がたくさんある作品が多いわけです。原色で明るい色調なのも、すべてを明るみに出すという意味合いがある?

現代では「ラディカル」に見えないかもしれないが・・・

日本ではラファエル前派の作品は少女漫画っぽく受け取られているのではないかと思いますが、ラファエル前派の絵やアーツ&クラフツ運動のウィリアム・モリスの図像が、ポストカードや菓子の缶のように見慣れたありふれたもの、クリシェになってしまっているのは、イギリスでも同じのようです。

ただ、当時としては、理想化されていない労働者風の聖家族の絵などがショッキングであったことを忘れてはならないだろう、という話もディスカッションで出ました。

当たり前のことではありますが、当時の視点を知るようにすることが大切です。

ディティールが浮かび上がらせる感覚

ジョン・エヴァレット・ミレイの『盲目の少女』から感じられるものとして、「触覚」「感触」の話もしました。

これもよく言われることではありますが、ラファエル前派の絵は、視覚以外の感覚も呼び起こす描写がされていることが多いです。

あまりにも売れなくて4号くらいで廃刊したという、ラファエル前派のメンバーたちが発行していた雑誌『The Germ』も、機会があれば読んでみたいと思いました。論評や詩を掲載していたとのこと。

▼続く

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