43.ろぐとこ
日々のエセー『まいにちとことこ』。
第43回は、「ろぐとこ」。経歴について。
経歴には前歴も記録される――。
ふと、そんなことを思った。小説の書き出しみたい。
黒歴史というのは、誰にでもあるだろう。それが、誰からみても黒である前歴なのか、そのひとがそう思い込んでいるだけなのか、わからない。
ありとあらゆることに身の潔白を求められる「漂白の時代」に、この「黒」というのは、足手まといで、忌避される。
でも、奇妙なことに、みんな「白」が好きというわけではない。嫌いというわけでもない。ただそれが望ましいとされているだけで。
「白」はあたかも自然にあるかのような、まるで法や倫理の体を成している。そのどれもが――「白」のみならず法も倫理でさえも――自然には存在しないのに。
そんな歪な状況は、経歴の改竄を、詐称を、訂正に留まらない行き過ぎた修正をこの世に生み出した。白の輝度を強めるたびに黒の明度は低くなる。
ところで、こんなことを書いといてなんだが、白=正/清、黒=誤/汚、という構図は、はたしていつもそうと言えるだろうか?
それは、後悔のない人生がないのと同じくらいに、言えないものである。
写真のネガとポジには、それぞれのよさがあり、役割がある。たとえ修正されなくとも。
[2024.9.23]