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「やさしさ」について思うこと

出不精のわたしですが、たまに遠出すると思わぬ機会にめぐり合うことがあります。

あるとき不慣れな電車に飛び乗ると、

「恋は下心で愛は真心ね。で、人の真心って、つまり優しさのことだよ」

と、その土地の高校生が友人に諭している(?)場面に出くわし、ひそやかな感動を覚えました。

それは、漢字の成り立ちを用いた説明のたくみさというより、それまでうまく飲み込めずにいた「やさしさ」という言葉がこれ以上ない明快さで、ストンと了解されたことの驚きでした。

わたしにとって「やさしさ」とは長いこと、押しつけがましさの代名詞でした。

「困っている人がいれば、その人の気持ちを考えて、やさしくしなければいけません」と教えられてきた「やさしさ」は、良い子として要領よく生きるためのおまじないとしか思えずに、その無遠慮さが嫌でした。

しかし高校生の彼の言葉は、そんな手管とはまったく別のところにある「やさしさ」を見事すくい取ってくれたと感じたのです。

相手の思いも理解しきれないし、自分の思いも伝えきれない。

それが現実だと理解しつつ、それでも何とかそれを越えて、相手へ思いをいたそうとせざるをえない心持ち。

それならまったく理解できる、というより、心の琴線にあるものとはそういうものでしかないだろうと思いました。

後日、「やさしさ」という日本語が、もとからそうした機微を指していたと知るのですが(竹内聖一『「やさしさ」と日本人』ちくま学芸文庫)、わたし自身、いまだ「やさしさ」とはほど遠くありながら、以来、その言葉に触れるたびにあの制服の男の子を思い出します。

さて本年度、Living in Peaceこどもプロジェクトは「りっぷキッチン永和町」がある奈良県大和高田市で、認定NPO法人PIECESさんの「Citizenship for Children」を共同実施いたします。

地域における子どもの孤立を解決するために、「子どもと寄り添う優しい“間”を紡ぐ」市民性を育むことを目指すのが本プログラム。

その主体はプログラムに応募し、選考を通過された地域のみなさんであり、何よりそのなかでかかわる子どもたちです。しかし、わたしもまた遠巻きに進捗を見守りつつ、「優しい"間"」が生まれる瞬間に思いをいたすなかで「やさしさ」の意味を反芻し、きっと幾度となくあの彼に感謝することでしょう。

いよいよプログラムの開始です。

どんなことが待っているでしょうか。楽しみでなりません。

―お知らせ―

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