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Authencication v.s. Authorization

はじめに

「英語の語源で身につく技術用語」で最初に取り上げるのは Authentication v.s. Authorization です。どちらも Auth から始まり、何かを「認める」ことに関連していて混同しがちな用語だと思いますので、これらの語源を掘り下げることで、その違いを浮かび上がらせてみようという試みです。


Authentication

日本語では「認証」という訳が定番のこの単語、原義は何でしょうか?

中世ラテン語 (Medieval Latin, ML)

Authentication は authenticate の名詞形ですが、中世ラテン語の authenticātus に由来するようです。この authenticātus は authenticāre (to give validity to) の過去分詞に当たります。

後期ラテン語 (Late Latin, LL)

中世ラテン語の authenticāre は後期ラテン語の authenticus に由来するようですが、詳細は形容詞の authentic を参照する必要がありました。

古フランス語 (Old French, OF)

上述の authentic は古フランス語 (autentique) を経て、結局は後期ラテン語の authenticus に繋がっているようです。

ギリシア語 (Greek)

後期ラテン語の authenticus はギリシア語の αὐθεντικός (authentikós) = original, genuine, principal に由来するようです。そして、それは αὐθέντης (authéntēs) = doer, perpetrator, master に繋がっていて、さらに αὐτο- (auto-) + *ἕντης (*héntēs) に分解されるようです。なお、*ἕντης は συνεργός (sunergόs) = fellow-worker に関連しているようなのですが、詳細はわかりませんでした。
そして auto- = self, *héntēs = doer, being であるとすると、自ら実行する者、自ら存在する者ということになりそうです。
なお、KDEE には *héntēs は sunentes を参照となっているのですが、これと συνεργός とが同じものであることは Craig Keen の Working Out the Body and Blood of Christ on the Eighth Day of Creation: Toward a Martyr-Ecclesiology を参照しました。

印欧祖語 (Proto-Indo-European, PIE)

上述の *ἕντης (*héntēs) はさらに印欧祖語の語根 *sene- = to accomplish, achieve にまで遡るようです。

Authorization

日本語では「認可」、「承認」、「権限付与」などの訳が定番のこの単語、原義は何でしょうか?

中英語 (Middle English, ME)

Authorization は authorize の名詞形ですが、中英語では au(c)torise(n), autoriser といった形だったようです。注目すべき点としては、そこには th がないことです。

古フランス語 (Old French, OF)

中英語にもそのまま取り入れられている autoriser あるいは auctorisier という形だったようです。

中世ラテン語 (Medieval Latin, ML)

古フランス語から中英語にも引き継がれていた auct を含む auctrizāre に行き着くようなのですが、Latin Dictionary で検索しても、それらしき単語に行き当たりませんし、そもそもラテン語なのに z 綴りというのもおかしいように思えてもやもやしているところです。関連する単語としては auctōrĭtās が見つかりましたが、これが OED の誤記によるものなのか、あるいは、ラテン語の時代に依存するものなのかまではわかりませんでした。

語源誤りによる綴字変更!?

Authorize の同根語として author (こちらは次回追ってみます) がありますが、もともとラテン語由来の auct- を残していた auctour が aucthour へ、古フランス語由来と思われる c の落ちた形の autor が author へと変化し、発音もそれによって /t/ から /θ/ へと変化したようです。これはフランス語で aut- の異綴りとして auth- が使われるようになったことの影響であると KDEE では説明されていますが、Etymonline では中世ラテン語の変化に倣ったものであろうとされていて、その原因がギリシア語の語源に対する誤解および authenticate との混同とから起こったと説明されています。これが本当だとすると、そもそも昔から authenticate と authorize とは混同されていたということになり、そりゃ、現在の我々が混同するのも無理はないと開き直る根拠になって大変ありがたいことです。違いを浮かび上がらせようという試みが、初回から混同上等という開き直りで終わるのもなんですが、今回は以上です。

この記事における参考文献・サイト

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