その会議いま必要ですか?コアタイムで超効率化されるキーエンス営業とは
株式会社キーエンスは、平均利益率5%と言われる製造業ながら
利益率50%で年商4000億。工場を持たないファブレスや営業が強い
高収益企業として知られている企業です。実際に社内にいた人間から見て、
ここはすごいなと感心したポイントをご紹介します。
今回ご紹介するのは「コアタイムの考え方・使い方」です。
キーエンスでは、コアタイムと呼ばれる8:30~17:30には会議が禁止されてます。1ヶ月通しても会議は1~2回程度しかありません。なぜ、キーエンスが会議を禁止するのか?コアタイムには何をしているのか?この辺りをご紹介いたします。
<ダイジェスト>
・お客様のためにすべてを使え
・日中のコアタイムは会議はしない
・1日150コールするための準備
・8:30から訪問すれば1日20件訪問できる
▼コアタイム
・8:30~17:30の8時間がコアタイム
・この時間は会議や資料作成などお客様と対峙しないことには時間を使わない、電話のみ
・3コール以内に電話を取る
・すべてはお客様のための時間
営業所にもよるだろうがキーエンスの営業の標準的な一日は以下の通りです。基本的には社内と外出の日を交互に設定することが多い。
一般的に1日のスケジュール、意外と思われますが21時過ぎには帰宅することが多いです。21:30には消灯で強制終了。
▼コアタイムには会議をしない
キーエンスは高い生産性、高効率というイメージを持っていただいているケースが多いと思います。その中身として、「コアタイムに会議をしない」というルールがあります。
8:30~17:30の時間は、朝会や会議などは一切行われません。お客様とご連絡できる貴重な時間帯なので社内にいる場合はすべてお客様にお電話している時間になります。顧客接点時間をどれだけ持てるかが問われるのです。私が所属していた頃は、一日最低150コール、200分通話がマストアクション(MA)として義務付けられていました。(今は無くなってしまったみたいですが)
8時間=480分しかないので、3分に1コールくらいのペースで電話しないといけません。実際は長電話して30分通話する事もあるので、感覚的には受話器を置いている時間は30秒もない感じでした。そんな状態なので、電話する前にWebをじっくり見る時間は全くありません。そのためには電話効率を上げるために以下の準備が必要でした。
1、コール先のリストは前日までに100件以上は準備する
2、コール先は業界や課題別など同じテーマで話が出来るようにしておく
例えば、食品業界のみにコール先を絞り、「黒い食材をセンサーで検知するときに苦労しませんか?」(黒は光を反射しずらく、食品など形が不揃いだと検知しにくい)などとその業界にピンポイントで内容を絞ってPRし、商談獲得確率を上げるとともに、客先ごとに都度調べてトークを変える必要を極力減らす工夫をしてました。
そのおかげで、30秒しかない次の通話までの時間は、電話番号を打ち込みながら、Webを閲覧しお客様の製品一覧や会社概要を見ながら電話して、先ほどのPRトークの後に何を話すかを考えながら電話ができるようになりました。今では役に立たないスキルですが、企業Webのトップページを見るだけで何の製品を作っているか、企業規模はどうか、会社の雰囲気、工場のラインなどが想像つくようになりました。
話が少しそれてしまいましたが、キーエンスでは上記のような徹底した生産性を求められます。キーエンスでは「最小の資本と人で最大の付加価値をあげる」という企業理念があります。この理念が色濃く出ているのがこのコアタイムの使い方ではないでしょうか。
社内会議はお客様にとって何の価値も生みません。お客様の課題をヒアリングし、課題解決の提案をしている時間のみ初めて付加価値を生むと教わります。(もちろん開発やマーケなどは別の観点ではありますが)
ですので、たとえ社長が営業所に訪問してきて、社員と話をしていたとしてもお客様からの電話であれば、3コール以内に出ることが優先されます。
上司<<お客様であることが徹底されてました。
どれだけお客様のために提案(電話)としての付加価値を生み出すか?
これが全てでした。
▼アポイントは8:30から、会って会って会いまくる
みなさんは訪問営業といえば1日何件くらい訪問していますでしょうか?1~3件/日とかでしょうか?新卒でキーエンスに入社(キーエンスの営業は新卒入社しかいない)したので、普通だと思ってましたがキーエンスでは1日10件でも平気で訪問します。多い時は20件近く訪問することもあります。
キーエンスを退職して気づきましたが、これは本当にすごい数値だと思います。一般的には1日2~3件程度ではないでしょうか。なぜキーエンスがここまで徹底して顧客接点時間を持てるかというと、以下のことを意識して行動してました。
1、組織営業(複数担当者へのアプローチ)を行う
2、移動効率
3、顧客紹介
4、訪問は朝8:30から設定
1、組織営業(複数担当者へのアプローチ)を行う
以前、3つのキーマンの話をしましたが、法人営業の場合はカウンターパートナーが複数になることがほとんどです。ですので、そのお客様だけではなく、関連部署や購買部など関係各所の合意が必要になります。必然的に組織全体へ営業することが求められるため、一度の訪問で複数担当者に会うことが求められました。
2、移動効率
外出時の一番の無駄は「移動」です。電車に乗ろうが車に乗ろうがお客様にとって1円の得にもなりません。ここをいかに減らすか、1日7件がミニマムに設定されていたため必然的に移動効率を上げるほかありませんでした。
アポイントも前後の訪問先を意識して調整し、商談自体も30~40分程度で終えることが必要です。そのために、何のために訪問したのか?商談のゴールは何か?を明確にして臨むことも合わせて求められます。キーエンスでは全営業が郵便番号ごとに営業が割り当てられるエリア制を引いているため、この辺りも組織として意識されてました。
3、顧客紹介
ここが結構差分の出るポイントです。一般的にやっていないことが多いのでは無いでしょうか?「ちなみに、今日の話だとどなたに喜んでいただけそうでしょうか?」と商談の最後に聞くことを徹底してました。もしその商談自体が購入に繋がらなくとも、繋がっても他の余地がないのか?ここを徹底して抑える。その商談自体がお客様にとって有益な提案になっていれば、大抵のお客様は他の担当者をご紹介頂けます。そしてすかさずその場で担当者のところまで紹介をお願いするケースはよくありました。その場で名刺交換をし次回のアポイントを設定する。この場合はほぼ100%アポイントを断られることもないので、確実でかつ高確率です。キーエンスでは100万人以上の顧客データベースを持っているとも言われており、このデータベースが
毎年更新され、かつ新しい顧客が増え続けている所以もここにあります。
4、訪問は朝8:30から設定
最後にコアタイム8:30~というところがミソでして、訪問は8:30に設定するという事も良く言われてました。製造業は朝が早いので業界習慣的なものもありますが、この時間に訪問してくるのはキーエンスだけです。競合のO社さんやP社さんは10時以降にしか来ません。(私のエリアでの体感値なので、違ったらすみません)2点メリットがあって、1つは忙しいキーマン、重役の方は日中捕まりません。ただ朝早く出社されているケースが多いためアポイントが取りやすい傾向にあります。2点目は競合排他です。朝から一緒にラジオ体操をやる営業がいるでしょうか?キーエンスだけです。お客様も朝礼など一堂に会しているケースも多いため、そこで担当紹介をしてもらえるケースも多いです。しかも8:30~訪問すれば、午前中だけでも4件訪問できます。
以上、コアタイムの生産性を上げる取り組みをキーエンスでは徹底して行われいます。正直これは普通の会社がやれと言われたら営業から相当なクレームが来そうなものですが、新卒のみ採用して当たり前の文化やっているからこそ実現できているのかもしれません。
今思い出すと、社内の日は1日20件アポイントを取って、翌日20件訪問する。こんな生活良くしていたなと思います。ただそれが出来ていたのも、このコアタイムの徹底度があったから。キーエンスの高い生産性を生み出すひとつの強みではないかなと思います。
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