【映画鑑賞】『きっと、それは愛じゃない』観ました。
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ロマコメ映画が大好物な、黒木りりあです。
先日、ご縁がありFilmarksさんの実施するオンライン試写会に当選し、映画『きっと、それは愛じゃない』をひと足お先に鑑賞することができました!
ずっと観たいと思っていた作品だったのでとてもうれしかったですし、実際に作品を観て「あー、この作品好きだな」と思えて。そんな作品に出会えたことが幸せな時間でした。
ということで、本日は『きっと、それは愛じゃない』について語らせていただきます。
『きっと、それは愛じゃない』とは?
『きっと、それは愛じゃない』("What's Love Got to Do with It?")は、2023年2月にUKで封切られた映画作品です。
2022年に開催されたトロント国際映画祭にて初上映され、その後ローマ映画祭にて最優秀コメディ賞を受賞しました。2023年のNational Film Awards UKでは9部門にノミネートし、最優秀脚本賞、最優秀英国映画賞、最優秀監督賞、最優秀助演俳優賞の4部門で受賞を果たしました。
監督は『エリザベス:ゴールデン・エイジ』("Elizabeth: The Golden Age", 2007)でアカデミー賞7部門ノミネートを果たしたシェーカル・カプール(Shekhar Kapur)氏。主演は実写版映画『シンデレラ』("Cinderella", 2015)にてオーディションを勝ち抜き見事にヒロインの座を勝ち取り、ミニシリーズ『パム&トミー』("Pam & Tommy", 2022)のパメラ・アンダーソン役で数多くの賞にノミネートしたリリー・ジェームズ(Lily James)。また、ヒロインの母親役を、数々の名作に出演し、5度のアカデミー賞ノミネート経験を誇るデイム・エマ・トンプソン(Dame Emma Thompson)が演じていらっしゃいます。
『きっと、それは愛じゃない』あらすじ
ヒロインである白人女性のゾーイは、過去には賞も受賞したことのあるドキュメンタリー監督。実家の「お隣さん」で幼馴染のカズと、彼の弟の結婚式で再会したゾーイは、カズが「お見合い結婚」を考えていることを知る。カズは英国系パキスタン人。家族の文化と宗教を重んじて、パキスタンからお嫁さんを呼び寄せるというのだ。なぜ現代イングランドで、愛のない親に決められただけのお見合い結婚をする必要があるのか、と疑念を抱いたゾーイは、カズのお見合い結婚を題材としたドキュメンタリー映画を製作することにした。
ムスリムの結婚相談所をカズとその両親と訪れたゾーイは、パキスタンの結婚制度について学ぶと同時に、自身のうまくいかない恋愛遍歴を思い起こしながら、他人が選んだ相手との関係がうまくいくものだろうか、とやはり懐疑的にならざるを得ない。そんな中でも淡々と進んでいくカズのお見合い結婚。カズから婚約の報告を受け、結婚式にも招待されたゾーイは、複雑な気持ちを募らせていく。
共にパキスタンに飛び、着々と結婚式の行事を進めていくカズと過ごしながら、この結婚に対するカズの思いを聞き、ゾーイはそれまで「お隣さん」の幼馴染として近くで育ってきたはずのカズの見えていなかった一面、そして自分が彼に抱く気持ちと向き合うこととなる。
多文化社会で「家族になる」ということ
Filmarksでもレビューを書いていますが、こちらでは少し違うお話を。
本作のテーマは「恋愛」であるものの、「結婚」という視点から描かれています。「結婚」という角度から考えるからこそ、「異文化」「宗教」「移民」などの問題が大きく絡んでくるのは、まさに2020年代のロマコメ作品だと感じました。
同じように移民や異文化、異なる宗教をテーマにしながら結婚を描いた人気ロマコメ映画というと、『マイ・ビッグ・ファット・ウェディング』("My Big Fat Greek Wedding", 2002)を思い浮かべる方も少なくないかと思います。こちらはタイトルの通り、そして北米らしくとにかく明るい作品に仕上がっていましたが、『きっと、それは愛じゃない』はもっと地に足の着いた、落ち着いた作風で、「THE・UKロマコメ」な独特の世界観と重みを楽しむことができます。
また、パキスタン系移民によるお見合い結婚が扱われているロマコメ映画だと、『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』("The Big Sick", 2017)も大きな話題を呼びました。物語展開は全く違いますが、世界観としては『きっと、それは愛じゃない』と近しいものがあるように感じました。
様々な選択肢が広がっていて、逆に何事も選択することが難しくなっていると感じる現代。恋愛したい人にとっても、方法は様々あるし、結婚をしたい人にとっても、相手の見つけ方は様々です。多文化、多民族な現代だからこそ、自分自身のルーツの伝統や文化を尊重したい気持ちが、現代社会を生きる自分の気持ちと軋轢を生みやすいオケージョンの一つが「結婚」なのかな、と本作を観ながら感じました。
結婚とはすなわち家族になることで、恋愛とは似ていて異なるものでもあります。それが両立すれば幸せなのかもしれません。ですが、様々な人種や宗教の人々が共に暮らす社会だからこその難しさは、現代特有だと思いました。そんな人を縛り付けるような伝統だったり、宗教だったりから解放された方が良い、という考え方もあるのかもしれません。ですが、それって結局自分のルーツの伝統や宗教的価値観の押し付けじゃない?と言われればそうとも言えてしまって。そこが難しいところだと思うのですが、この映画ではその難しさや葛藤がきちんと登場していて、さすがだな、と唸ってしまいました。
伝統文化や特定の宗教、人種を否定するのではなく、あくまでもあくまでも個人の選択や決断として描写するというやり方は、簡単なようでいて非常に難しいことです。それをきっちりと脚本で表現していて、それをしっかりと着地させる確かな演技力のある俳優さんたちが演じていて、それらをまとめられる監督が映画として作り上げる。ぎっしりと中身が詰まっていて重みがあって、甘いけど苦くて、英国人が大好きなチョコレートケーキみたいな感覚のする映画かな、なんて思っています。
こんな風に書くと、とてもシリアスな作品かと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、本作はコメディ映画で、笑える場面もたくさん登場します。そのほとんどを担当するのが名女優エマ・トンプソンさん演じるゾーイの母親。ユーモラスとシリアスのバランスの取り方がやはり格別で、非常に安心感があります。作品自体の色彩感覚も素晴らしく、特にパキスタンでの結婚セレモニーの色合いはとてもきれいで、視覚を楽しませてくれます。
また、本作には複数のカップルが登場していて、それぞれ異なる背景を持っているのですが、個人的にはカズの弟夫妻がお気に入りです。この夫婦は台の「ハリー・ポッター」シリーズのファンという設定で、Potterheadならばニヤリとしてしまうセリフがちょこちょこと登場します。
さらに、この映画はエンドロールでも映像が続くので、本編が終わったからとすぐに鑑賞を終了することはお勧めしません。
『きっと、それは愛じゃない』は2023年12月15日(金)より日本全国ロードショーです。人恋しくなるこの季節に、是非、映画館でご覧ください。
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