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サンタさんの正体

毎年自分にプレゼントを届けてくれるサンタクロースというものが、白いひげの外国人のおじいさんではなく、自分の親(あるいは祖父母や親戚など)と気づいたのはいつだろうか。

私はというと、かなりはっきりと覚えているが、4歳の頃には既に親がクリスマスプレゼントをくれていると気づいていた。ただ、空気を読んでかなり大きくなるまでそのことについて誰にも言ったことはなかった。小学校高学年でサンタさんを信じているのか論争が流行っても、関わらないようにしていたくらいである。

私が早々にサンタさんの正体に気づいた理由は、親が特別凝った演出をしなかったことが大きいと思う。サンタさんに手紙を書かすとか、欲しいものを聞き出そうとか、そういったことは記憶にない。「いい子にしていないとサンタさん来ないよ」と言われたこともない。

毎年プレゼントが複数あったことも大きい。孫の少ない祖父母や未婚の親戚等から、クリスマスプレゼントが色々と届き、両親にこれは誰からのプレゼントなのかと説明を受けて、祖父母達にお礼の電話をかけていた。必然的に、親から説明を受けない包みは親=サンタさんからだろうなと勘づく。おまけに、その差出不明のプレゼントの入ったパッケージには“〇〇ちゃんへ くりすますおめでとう”等と見慣れた字で書いてあったし、赤い三角帽子をかぶった変なピエロみたいな絵が描いてあった。(私の両親は壊滅的に絵がヘタクソである、、、)

流石にもう時効だろうと思い、14、5歳頃に他愛もない会話の流れで
「私、多分4歳の時にはもうパパとママがサンタさんやっていたって気づいていたんだよね。何となく言っちゃいけない気がして友達にも言わないようにしていたんだけどさ」
と言ったことがある。そうすると父はなんともないという顔をして
「知っていたよ。気づいたのは6歳くらいの時かなと思っていたけど、そこはパパの想定よりも早かったみたいだね」
と言って続けた。
「6歳の時にジーノのお家のクリスマスパーティーに行ったのを覚えている?」
よく覚えている。当時私たちは米国に住んでいた。父の会社はホームパーティーに招きあうのが盛んで、父の同僚であるジーノさんがクリスマスパーティーに呼んでくれたことがあった。
「そこでジーノがサンタに扮装して子供たちにプレゼントを配ってくれたでしょ?その時のやり取りでジーノは『リリーはもう既に色々と気づいていて、でもそれを他の子に言わないように気を付けているんだね。賢い子だ。』ってパパに話してくれたんだよ」
小さい子供がごまかそうと思っても、大人にはバレバレだったというわけか。

父によると、ジーノさんのお子さんたちはその時もう大学生になろうかという年齢だったらしい。サンタとして自分が登場した時の私の反応やプレゼントを貰った時のお礼の言い方が、かつてティーンズに差し掛かった頃の自分の子供たちの反応とそっくりだったらしい。サンタの正体に気づいているけど、敢えて言わないでおいている年頃の子供の振る舞いだったようだ。

「賢い子だって褒めてくれて、嬉しかったからよく覚えているよ」
と父は笑った。数年越しでその話を聞いた私もなんだかとても嬉しかった。年のわりにませていたり子供らしくない反応をすると、生意気だとか可愛げがないといった批判的な見方をされることの多かった幼少期に、とてもポジティブに受け取ってくれたジーノさんがありがたかった。

毎年この季節になると、ジーノさんのクリスマスパーティーと父から聞いた話を思い出す。思い出すたびに、クリスマスプレゼントを貰っているような温かい気持ちになる。その時ジーノさんに貰った水色のテディベアは、今も大事に実家で保管している。

#エッセイ  #クリスマス #クリスマスプレゼント #サンタさん #サンタクロース #サンタ #幼少期 #思い出 #12月

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