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はじめてを見られるのは恥ずかしいという話

はじめてを見られるって、ちょっと勇気がいる。

現在進行形であれば、「これであってんの?」「ちゃんとできてる?」「ぜんぜんダメかも」って自信ないし。「失敗したらどうしよう」「変なことしちゃってない?」と不安が終始つきまとう。

今になって、過去の「はじめて」を見せるのはもっと恥ずかしい。
なんだったら「はじめてにしては上出来じゃない?」なんて思っちゃった自分も含めて恥ずかしくなる。

あんまり引っ張ると余計恥ずかしくなるので、とっととお見せすることにします。これです。


わたしの処女作、「小面(こおもて)」です。
アップでお見せできるシロモノではないので若干引きの写真で。
我が家では、なぜか北欧風のファブリックパネルに飾られてます。


で、今日のテーマは何かとなにかというと、「オムレツに始まり、オムレツに終わる」ならぬ、「小面に始まり、小面に終わる」というお話。


「小面」は、あまたある能面の種類の中でも代表的な面
たぶん「能面」と言われたときに一定数の方が思い浮かべるのはこれじゃなかろうか。

「小面」は、女面の中で最も若い面で、その年の頃、15~16歳。清純な愛らしさをもつ可憐な少女の面です。天女や巫女の役にも用いられる。

うちの師匠の教室では、初心者は小面から始めると決まっている。

そのくせ師はなにかと「小面はむずかしいからな~」と言う。
じゃあ、なぜ最初に小面をやらせるのか、と問うと、先程も言った通り、「小面」は能面のスタンダードであり、代表的な面だから、との答え。


つまり、小面は能面界のオムレツなのである。


この小面は「そのままとっときなさい」と師匠に言われている。
売ったり、あげたり、捨てたりせず、手直しもしないでそのまま。

正直、ちょっと腕が上がってくると、この小面のダメなところばかりが目についてくる。ここもできてない、そこもできてない、あ、ここも全然ダメじゃん。

あまりの下手さ加減に恥ずかしさがこみあげてくる。直したい。直しちゃダメって言われたけど、直したい。無性に直したい。問答無用で直したい。
でも、その気持ちをぐっとこらえ、そのままにしてあります。

つまり、処女作「小面」は、私の基準となり、戒めとなるってこと。
ここからスタートして、その時は「できた!」と思ったものが、今の時点でどう見えるか。

「初心忘るべからず!」である。



でも、この小面ちゃん、なんだか嬉しそうなのである。
そう、あの時、楽しくてしょうがなかったのだ。ワクワクが止まらなくて。
その気持ちも含めての「初心忘るべからず」、なのだろう。


能面を始めて5年目に突入。初作以来、小面は打っていない。
そろそろ、また小面に取り組もうと思う。
スタンダードで、難しくて、オムレツな小面に。

わが師とともに、2022年11月15日から東京で能面展を開催します。
詳細は、この記事にあります。
入場無料なので、お気軽にご来場くださいませ。


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