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『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーVol.3』孤独なアライグマの生き様に涙腺決壊!

 アベンジャーズでおなじみのマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の最新作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol.3』を観てきました。
 この作品は基本的に『ガーディアンズ』シリーズさえ観ていれば話についていけるので、ほかのMCU作品を観ていないという人も、ぜひ『ガーディアンズ』シリーズの前二作品を観て、劇場に足を運んでほしいです。

※以下、作品のネタバレ有り


ジェームズ・ガン作品で繰り返される「神に選ばれる人」

 最初のシーンは、アライグマたちが入れられている檻に人間の手が伸びてくる、という描写から始まります。これはジェームズ・ガン作品で繰り返し用いられる「神に選ばれる人」というモチーフであると読み取ることができるでしょう。
 『Vol.1』では、病院を抜け出したピーター・クイル少年が、空に現れた巨大な宇宙船に連れ去られる場面が「神に選ばれる人」の描写であり、自警団ものの傑作『スーパー!』では、主人公の脳に神の指が触れるシーンがまさにそうでした。『スリザー』では、マイケル・ルーカーが宇宙生命体に寄生されるというのが、「神に選ばれる人」シーンに当たります。
 つまり、今作『Vol.3』では最初のシーンから「今回はロケットでいきます」という宣言がなされているのです。

 

前二作とは違うオープニング

 ガーディアンズといえば、80年代ポップ・ミュージックと陽気なダンスで幕を開けるオープニングが特徴的でした。『Vol.1』ではピーター・クイルが Redbone の「Come and get your love」に乗って踊り、『Vol.2』ではグルートが Mr. Blue Sky の「Electric Light Orchestra」に乗って踊ります。
 しかし、今作のオープニングは、ロケットがしっぽりと Rediohead の「Creep」を聞いているところから始まります。
 自分は変人で居場所がないと歌うこの楽曲は、ロケットの内面そのものを表しています。


暴力的な親

 「暴力的な親」というのもジェームズ・ガン作品にたびたび登場するモチーフです。
 『Vol.2』のクイルの父親であるエゴ。DCコミックスの『ザ・スーサイド・スクワッド ”極”悪党、集結』ではポルカドットマンの母親がそうでした。また、スーサイドのスピンオフドラマ『ピースメイカー』でも主人公は父親から虐待を受けていたという設定になっています。監督のデビュー作『トロメオ&ジュリエット』ではジュリエットの父親が家庭内暴力を振るいます。
 今作『Vol.3』では言わずもがな、ロケットの父親的存在であるハイ・エボリューショナリーが「暴力的な親」のモチーフを持つキャラクターです。
 この「暴力的な親」というモチーフは、ガン監督の実体験から来ているものです。ガン監督の父親はアル中で家庭内暴力があったそうです。そんな父親を、ガン監督は憎みながらも、それでも父親が亡くなった際は「寂しいよ」とSNSに書いていました。今作のエンドクレジットでもSpecial Thanksのところに父親の名前を出していました。


劇中、何度泣いたか

 ジェームズ・ガンは本当に人情噺がうまいなあ、と思いました。以下、涙腺崩壊ポイントを書いていきます。
 
〇ロケットの声を聞いたネビュラの泣き。
 まさかネビュラが泣くとはね。一番泣かなそうなキャラなのに。
〇パパとしての一面を見せるドラックス
 捕まっている子どもたちとコミュニケーションをとる場面。
 その手前でネビュラにディスられて、マンティスが「知性と能力だけがすべてじゃないのよ」みたいなことを言う場面も熱かったですが、そこからの流れで、ドラックスの優しいパパとしての一面によって問題を解決する。
 フリとオチになっていて、人間は知性と能力だけじゃない、と強く感じられました。
〇タランティーノの『デス・プルーフ』みたいな決着
 みんなで悪党をタコ殴り。「The END」が出てたら完全に『デス・プルーフ』です。ハイ・エボリューショナリーが同情の余地なしのド畜生だったのもよかったです。
〇ロケットがセンターの横並びスロー歩き
 『Vol.1』でガーディアンズのメンバーが横並びになってスローで歩いていく場面がありますが、今回のセンターはロケット。やっぱり今作の主人公はロケットです。
〇ライラ「実はこれはあなたの物語」
 瀕死のロケットがあの世で恋人のライラから言われるセリフ。「あなた」はロケットのことであり、孤独な魂を抱える観客たちのことでもあると思います。We are groot. 私たち観客もガーディアンズの一員なのです。

 他にも語りきれないほど魅力のある作品で、完ぺきな三部作の完結編だったと思います。
 ありがとう、ジェームズ・ガン! ありがとう、ガーディアンズ!

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