Lil P Xanny

物語について勉強中の芸大生。基本的には自分が観た作品の記録。小説や映画についての感想や…

Lil P Xanny

物語について勉強中の芸大生。基本的には自分が観た作品の記録。小説や映画についての感想や少し深掘りした内容の記事を書こうと心がけています。

最近の記事

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーVol.3』孤独なアライグマの生き様に涙腺決壊!

 アベンジャーズでおなじみのマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の最新作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol.3』を観てきました。  この作品は基本的に『ガーディアンズ』シリーズさえ観ていれば話についていけるので、ほかのMCU作品を観ていないという人も、ぜひ『ガーディアンズ』シリーズの前二作品を観て、劇場に足を運んでほしいです。 ※以下、作品のネタバレ有り ジェームズ・ガン作品で繰り返される「神に選ばれる人」  最初のシーンは、アライグマたちが入れられ

    • 韓国映画『南極日誌』を観て感じたポン・ジュノ

       韓国映画『南極日誌』は2005年に制作された作品で、監督はイム・ピルソン、共同脚本に『パラサイト 半地下の家族』で有名なポン・ジュノがクレジットされています。  主演のソン・ガンホ率いる南極調査隊が、到達不能点を目指してひたすら歩く、というのが大まかなあらすじです。  ぶっちゃけ、めちゃくちゃ面白かったってわけじゃないんですが、ポン・ジュノの作家性みたいなものが現れていたので、気づいた点をゆる~く書いていこうかと思います。  この作品を見ていて一番思ったのは、『海にかかる霧

      • 吉本ばなな『キッチン』を徹底解説 なぜキッチンなのか?なぜえり子はジューサーを買うのか?

        基本情報 この作品は1988年に福武書店から刊行された、吉本ばなな氏による短編小説です。家族を亡くした女子大生の「みかげ」の視点で語られる一人称小説で、田辺家との交流を描いた作品となっています。 登場人物桜井みかげ(私)  この作品の語り手。彼女は両親が早死にし、祖父母のもとで育てられました。中学へあがる頃に祖父が亡くなり、そして大学生になった現在、最後の肉親である祖母が亡くなり、田辺家に居候することになる、というところから物語が始まります。 田辺雄一  天涯孤独となった

        • 書評:第167回芥川賞受賞作『おいしいごはんが食べられますように』完全解説

          ※この記事は作品のネタバレを含んでいます。未読の方はご注意ください。 芦川さんの周りを公転する2つの衛星 この作品は2つの視点から語られています。  三人称で語られる二谷の視点と、一人称で語られる押尾の視点。  そしてこの2つの視点から語られる主な事柄は、芦川さんという同僚社員についてのあれこれです。 弱くて巨大な存在:芦川さん  芦川さんは体が弱く、仕事もあまりできないタイプの人です。また、前の職場でハラスメントを受けていたらしく、声の大きい男性と話すのも苦手。しかし

        『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーVol.3』孤独なアライグマの生き様に涙腺決壊!

        • 韓国映画『南極日誌』を観て感じたポン・ジュノ

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        • 書評:第167回芥川賞受賞作『おいしいごはんが食べられますように』完全解説

          第167回芥川賞受賞作『おいしいごはんが食べられますように』徹底解説②

           前回の続きです。(前回の記事はこちら ↓ ) 視点チェンジ(押尾→二谷)  押尾がなぜ芦川さんを苦手だと思うようになったのか、二谷は自分なりに想像します。  二谷は自分の経験から、押尾も自分と同じように芦川さんを尊敬できなくなったのだろうと考えます。(押尾は芦川さんの一年後輩で、芦川さんが指導役の先輩でした)  ここで明らかになるのは、二谷のすこし偏った価値観です。  引用部分の最後の三行、 「尊敬がちょっとでもないと、好きで一緒にいようと決めた人たちではない職場の人

          第167回芥川賞受賞作『おいしいごはんが食べられますように』徹底解説②

          第167回芥川賞受賞作『おいしいごはんが食べられますように』徹底解説①

          はじめに 今回は第167回芥川龍之介賞を受賞した高瀬隼子さんの作品『おいしいごはんが食べられますように』を徹底的に精読していこうと思います。  作品の概要については下記にAmazonのリンクを貼っつけておきますので、そちらからご確認ください。 冒頭 この作品は視点者が途中で変わるのですが、冒頭部分は二谷の視点で描かれています。  みんなを食事に誘う支店長と、その誘いに乗らない二谷と藤さん、少食な芦川さん、の三名が登場します。  このあとに「打ち合わせ入っててよかったな」とい

          第167回芥川賞受賞作『おいしいごはんが食べられますように』徹底解説①