深い穴、深い闇

アリ坂は、
ヤマ地さんに呼び出され、
何やら真剣な話をしていた。

アリ坂は、
「あの女は檻に入れてます」
と言っているが、
何の話なのかはサッパリ分からない。

と、その頃、
生きる活力ゼロ人間の
今年で八十八歳になられるスギ田さんは、
地面に開いた小さな穴の底を、
ぼーっと眺めていた。

暫くそうしていると、
スギ田さんは口を開き、
「地の底が俺を呼んでいる気がする」
と呟いた。
そうかもねスギ田さん! そうかもね!

と、その裏では、
アリ坂とヤマ地さんの話が終わったみたいだ。
緊張が解かれた様子のアリ坂は、
ヤマ地さんの使用人に、
「ゆで卵ください!」
と大声で頼んだ。
なんで、ゆで卵なのかは分からない。
まぁ、食べたかったのだろう。

その日、アリ坂はゆで卵を五個食べた。

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