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雑感記録(112)

【僕が僕であるために】


僕の雑感記録を読んでくれている稀有な方はお気づきだろうが、僕は転職に成功した。およそ2年の活動を経て、自分の行きたいところから内定を貰った。ここまで長かった。そんな訳で、僕は先日上司に退職の意向を伝えた。実際「まだ職場の人たちには黙っているように。」と言われたが、職場の人がこの僕の記録を読むわけもないと思っている。だからこうして書いている。

転職先が決まってから、言うべき人には伝えた。家族、大学の友人、いつもお世話になっている社長…。今後直接会う友人たちには自分の口から伝えようと思っており、まだ言っていない。言う前にこれを読まれたら…なんて考えてしまうが、それはそれで仕方がないと思っている。それに友人全員が全員僕の記録を読んでいるとも限らない。そもそも別に読まれる必要もないのだろうが…。


僕が行く新しい先は銀行とは大分かけ離れた職種ではあるものの、僕の趣味、いやライフワークである読書に密接に関係した仕事だ。事実、僕が学生時代に大学で利用していたサービスに関係した職種だ。これは非常に嬉しいことこのうえない。今まで自分が学んできたことが全く以て活かせずただ悶々とした日々を送ってきた訳だが、それがついに陽の目を浴びる機会を得ることが出来た。

しばしば、というか僕自身、「好きなことを仕事にすることは大変だ」「好きなことを仕事にするのは良くない」と何となく思っていた。しかし、いざこうして決まってみるとそれすら忘れてしまう。自分のこれまで考え続けていたこと、学んだことが、学び続けていることが役に立つ。これ程までに嬉しいことはない。屍が初めて人として息を吹き返す。

僕は転職先を決める際に考えていたことが2つある。1つに将来的に地元で本屋、マイクロライブラリーを開く為に役に立つ職種。もう1つは自分の持ち得るスキルを磨きながら生活を豊かにする職種。このどちらかに就こうとしていた。僕は後者を選択した。僕の中ではマイクロライブラリーを開こうと考えているが、それで飯を食っていこうとは思わない。小さくこじんまりと、身内でワイワイしているぐらいが自分には合っていると感じ、だったら好きなことをと考えた。

正直、将来的に本屋、マイクロライブラリーを大々的にやりたいという気持ちが先行し興味がある分野ではあるものの、よく考えず突き進んでしまっていた。本当に自分が目指してる姿は何かを考えずに、外的要因に着目しすぎ、目先の利益を考えていたような気がする。僕の本心を包み隠して選考を受けていた。結果としてそこは最終面接で落ちた訳なのだが…。

面接を通して、色々と分かったことがある。面接官、ご縁があったら将来的に上司になる人に対して興味を持つ場合と、面接を通して人ではなく会社そのものに興味を持つ場合の2種類があること。僕が行きたかった第1志望は面接官の人に興味を持った会社だった。言ってしまえば、その人と仕事をしたいという感情のみで、畢竟するに会社なんてどうでもいいということだ。その人が居れば、業種は何でもいいということになってしまう。

僕がこれから行く会社は面接を経ていくごとに会社そのものに興味が湧いた。それに自分が考えていること、自分が感じていることと会社の考えていることが非常にマッチしていた。何というか親和性が非常に高かった。「この会社なら心置きなく働けるな」と感じた。さらに幸か不幸か、本来は4次面接まであるらしいのだが、2次面接時点で「ぜひ来てほしい」とのことで3次、4次面接をすっ飛ばして内定を貰えた。非常にありがたい話である。

これが僕の転職の顛末である。


上司に伝えた時に言われた一言が心に刺さる。

「なんか転職して天職に就けたって感じで凄く良いよな。お前らしくて凄く良いところだと思うよ。」

僕は正直、怒られること、文句を言われることを想定していた。係替えをしてからまだ3ヶ月しか経っていないし、これからだっていう時に転職する訳だから文句を言われるのだろうと思っていた。ところが、話をしても別に文句を言われることもなく、怒られることもなく、むしろ応援して貰えた。何だか拍子抜けしてしまった。しかし、それ以上に嬉しさの方が大きかったのかもしれない。

退職を伝えた日、僕は相も変わらず煙草を蒸かして帰った。その時にウォークマンからMOROHAの『花向』が流れてきた。

海 月 星 光 草木 大地 沈む夕陽
美しき全ては神様が創り
唯一 愛だけは人が生み出した
それなのにこんなにも手に負えないのだ
胸が切なくて痛むのだ 泣ける程
叶わない恋よりも叶えちゃいけない恋は辛い

MOROHA『花向』(2023年)

僕は曲を聞いて泣くことはない人間だが、これだけは泣いた。内容自体は端的に言えば「叶わない恋」である訳なのだが、僕は内容に感動した訳では決してない。言葉の美しさに泣いた。最初の「海 月 星 光 草木 大地 沈む夕陽/美しき全ては神様が創り/唯一愛だけは人が生み出した」というこの言葉の波にやられてしまった。

この曲を聞きながら僕はこれまでのことを思い出し、煙草を蒸かしながら泣いた。地元であった様々なこと、無論曲の内容が内容だから元カノのことを思い出して見たり、これまで見てきた景色や様々な人と触れてきた想い出が一気に溢れ出してきた。友人の顔、これまで付き合ってきた人たちの顔が頭の中に沢山出てきた。

美しいもの全ては神様が創った…。正しくそうだなと思った訳だ。何かの縁で僕と出会ってくれたこと、その美しさは僕がどうこうできる訳ではなかったはずだ。そこで僕が深く関われたこと、それは確かに僕と出会った人とで作ってきたことである意味での愛な訳だ。僕の一方的な愛かもしれないが、それでもそれは人間である僕が身勝手にも生み出した訳だ。例え一方通行であったとしてもだ。

「友達に戻ろう」なんて言わないでくれよ
二度と会わない約束をして別れよう
写真もラインも残さない
だから 寂しさくらいください
せめて「さよなら」じゃなくて
「ありがとう」で終わろう
「会えてよかったね」って強がって笑おう
覚悟の言葉の前の深呼吸
肺いっぱいに愛しさが行き渡る
思い出す 君の立てた寝息をshazamした夜
検索できずに勝手につけるタイトル
美しいリズム 気が付けば日が出ずる
儚くもあの日々に『幸せ』と名前を付ける
いつの日か人が星になれるなら
君がどこの空に輝くか教えて欲しい
俺その隣りへ必ず駆けつける 今度こそ
二人で一つの星座になろう

MOROHA『花向』(2023年)

「さよなら」じゃなくて「ありがとう」で終わろう。

酸いも甘いも、僕は様々な経験をさせてもらった。色んな人に出会って、色々な経験をして。その関係性が疎遠になるのは寂しい。嫌なことや辛いこともあったが、それに僕も『幸せ』と名前を付けるだろう。疎遠になっても、何かあれば僕は駆け付けたい。今はLINEやら何やらで物理的に会うことは不可能でも、連絡ぐらいは出来る。それを"繋がり"と呼ぶのは変な気もするのだが、それでも僕はこれまでの"繋がり"を大切に生きていきたい。


これまで僕に関係してくれた人たち、そしてこれからも関係し続けてくれる人たちへ僕は感謝の気持ちで一杯だ。ただそれだけに尽きる。

僕がこれからも僕であり続ける為に。

よしなに。

水中書店にて




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