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【閑話休題#45】内田樹『うほほいシネクラブ』

こんにちは、三太です。

前回の記事で『ウォーターゲーム』に出てきた映画「カサブランカ」を紹介しました。
これは『ウォーターゲーム』内に出てくる映画3作のうちの2作目でした。
3作目は「セブン」で既出なので、『ウォーターゲーム』に登場する映画紹介は一段落にしたいと思います。


では、今回は閑話休題ということで、こちらの作品を読みます。

「吉田修一作品による映画ガイド」を作ってきて、これまでたくさん映画を見て、それに対する映画感想文のようなものを書いてきました。
そこで書いてきたことなどと比較しながら読んでみると面白そうだなと思い手に取ることにしました。

また、内田樹先生の本はこれまでたくさん読んできました。
私淑してきたと言っても過言ではありません。
他にも、神戸女学院大学におられたときは講演(パネルディスカッション)にも行きましたし、(関川夏央さんもおられました)凱風館で行われたイベントにも参加したことがあります。
内田樹先生の本でなおかつ映画について書かれている、これは読むしかないなと。


あらすじ

本書の帯には「怒涛の187本!圧巻の400頁!!」とあります。
その帯の謳い文句に違わず、内田先生が映画について語りまくった作品です。
本書は四章構成です。
第一章 うほほいシネクラブ
第二章 街場の映画論
第三章 小津安二郎断想
第四章 おとぼけ映画批評
以上の章構成ですが、メインは映画評で、特別に小津安二郎監督については一章が当てられています。

感想

映画評がメインを占める本書ですが、実は見たことのある映画の映画評はそれほど多くなかったです。
それでも、内田先生は良いものには良い、良くないものには良くないとはっきり述べられるので、とても信頼感のある評となっています。
ちなみに見たことがあったのは次の映画です。
「ブロークバック・マウンテン」(p.23)
「グラン・トリノ」(p.153)
「サイコ」(p.244)
「タイタニック」(p.247)
「悲情城市」(p.269)

やはり見たことあるものについては、自分の見方と比較ができたので、その分面白かったです。
映画評を始めるにあたって、内田先生は次のように断りを入れられます。

はじめにお断りを。この映画評では「あらすじ」「バックステージ情報」「監督、プロデューサー、俳優などの自作解説」には触れないということを原則としてゆきたいと思っています。そういう種類の情報について僕が書かなくても、提供してくれる機会がいくらもありますからね。

『うほほいシネクラブ』(p.14)

自分の評(感想)だけで読者を引っ張る自信がないと言えない言葉だなと感じました。
 
また、一つの作品に対して、複数作品をあげて述べられるのも特徴的です。
クリント・イーストウッド「父親たちの星条旗」を例に挙げてみましょう。

クリント・イーストウッドは偉大なフィルムメーカーです。もしかすると未来の映画史には20-21世紀で最も偉大なハリウッド映画監督として記憶されることになるかもしれません。なにしろ、『ダーティーハリー』と『ガントレット』で刑事映画のスタイルを完成させ、『ペイルライダー』と『許されざる者』で西部劇のスタイルを完成させ、『ハートブレイク・リッジ』と『父親たちの星条旗』で戦争映画のスタイルを完成させたんですから。

『うほほいシネクラブ』(p.58)

「父親たちの星条旗」について述べるだけでなく、監督にまつわる様々な映画が引用されます。
内田先生の映画好きなようすがとても伝わってきます。
 
あと、吉田修一さんのエッセイに出てきたことと通じるものがありました。
まずは引用します。

「よいニュースと悪いニュースがある。どちらを先に聴きたいか?」と問いかける、という場面にハリウッド映画ではよくお目にかかります。(p.60)

『うほほいシネクラブ』(p.60)

今ここで具体的にどのエッセイとは挙げられないのですが、このようなシーンは吉田修一さんのエッセイにも出てきました。
もしかして作品にも出ていたかもしれません。

映画好きの吉田さんがハリウッド映画を見ていたからこのようなシーンを作ったのかもしれないと少し思いました。
最後に、再読するときにはもう少し本書に出てきた映画を見ていたいです。(酷評されているものもけっこうあるけれど)

今回は内田樹『うほほいシネクラブ』の紹介でした。
内田樹先生も相当の映画好きだということがよくわかる本でした。
 
それでは、読んでいただき、ありがとうございました。

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