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【柳町光男シリーズ#1】「サイコ」『さよなら渓谷(文庫解説)』より

こんにちは、三太です。

期末考査が一段落しました。
ここから採点の祭典があり、成績、通知表と怒涛の1学期末を迎えます。
他にも部活動の大会などがあり、なかなか色々と忙しく目が回りそうな今日この頃です。
自分を見失わず頑張っていきたいです。

今回は以前、『さよなら渓谷』の作品紹介をしたときに取り上げた「映画監督、柳町光男さんの解説」に出てきた映画を紹介します。
ちなみにその解説のまとめは以下のとおりです。
noteに書いた自分の文章を引用します。
少し長くなりますがご容赦ください。

文庫の解説が映画監督の柳町光男さんでとても興味深かったので紹介します。
この解説のはじまりは「吉田修一はシネフィルか?」(p.236)という問いです。
シネフィルとは「映画通や映画狂」という意味らしいです。
このあと解説では私がこのnoteでやっているように吉田修一作品とそこに出てくる映画が列挙されます。
『さよなら渓谷』『悪人』「東京湾景』『パレード』・・・それぞれの作品に出て来る映画が取り上げられます。
そしてそれらを通して、「ここで私が強調したいのは、吉田修一は紛れもなく真底映画が大好きな小説家だということである」(p.240)という指摘を行います。
映画監督からも見てもやはりそうなんだと感じました。
そして、『さよなら渓谷』自体についても解説していきます。
「私が読んだ吉田修一の小説の中で一番映画を感じた小説である」(p.240)というのです。
このあと『さよなら渓谷』と関連する映画が列挙されます。
幼児殺害事件が中心かと思いきやその隣の部屋に住む男女の話に話題がすり替わっていくことを評して、「この主題と主人公のすり替わりがなんとも映画的だ。」(p.241)ということで、アルフレッド・ヒッチコックの『サイコ』が取り上げられます。
そして、ここから取り上げられる映画は次の通りです。
『隣の女』『グラン・トリノ』『裏窓』『非情の罠」『ノックは無用』『仕立て屋の恋』『ブロンド少女は過激に美しく』『ミスティック・リバー』『乱れ雲』・・・。
様々に映画を取り上げてそれらと『さよなら渓谷』がどのように関連するかを論じていきます。
そしてこのように述べます。
「『さよなら渓谷』は映画監督を刺激する小説である。(中略)それは、吉田修一がこれまで観てきた数多くの映画が彼の血となり肉となっていて、それが取りも直さず『さよなら渓谷』に色濃く擦り込まれ、映画的な小説に相成ったからだと言えないだろうか」(p.245)
私は一度この解説を読んでいるので、noteを始めようとしたときに意識にはありませんでしたが、それこそこれらの文章が血肉となって私のnoteは始まっているのかもしれないなと思いました。
今回吉田修一作品との関連映画としてここで紹介された映画を見ようかなとも思ったのですが、あくまでも柳町光男さんが関連付けているだけであり、吉田修一さんがどこまで見ているかはわからないので、(おそらくけっこう見ているだろうとは思いますが)閑話休題で「柳町光男シリーズ」みたいな感じでボチボチ取り上げていけたらと思います。

ここでは、閑話休題でと書いているのですが、作品も複数ありますので新しくマガジンを作り、紹介していくことにしました。

ということで、今日は『さよなら渓谷』の文庫解説に出てきた映画、「サイコ」を見ていきます。
『さよなら渓谷』の文庫解説に出てくる10作の映画のうちの1作目です。

ちなみに「サイコ」については文庫解説に以下のような記述があります。
少し上の引用と重複する部分もありますが、引用します。

物語(『さよなら渓谷』 引用者注)は、秋田県で起きた実際の幼児殺害事件をヒントにした子殺しの母親の話で始まり、読者は当然この事件と母親が中心に展開して行くものと思う。ところが、あっという間に物語は隣の家に住む若い男女のミステリアスな過去を含んだ話にすり替わって行く。
この主題と主人公のすり替わりがなんとも映画的だ。アルフレッド・ヒッチコックの映画みたいではないか。例えば、『サイコ』では、冒頭、会社のお金を横領して逃走するジャネット・リーを追う。当時スター女優のドラマが当然続くのだろうと観客は思うが、彼女はあっという間にあの有名なモーテルのシャワーシーンで殺害され、その後はモーテル経営者のアンソニー・パーキンスが主人公に入れ替わる。
ヒッチコック映画の特徴のひとつだが、主題も情景も最も遠いところから始まって最も近いところへと移動して行く。観客のありきたりな予想を裏切り、驚かせ、意外なところ、実はそれが映画の中核で、そこへ巧みに導いて行くようになっている。時には急激に、時にはらせん階段を昇るように。

『さよなら渓谷』(pp.240-241)

この解説からもなんとなく「サイコ」とはどのような映画かは伝わってきますが、実際に今から見ていきたいと思います。

基本情報

監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演者:ノーマン(アンソニー・パーキンス)
    マリオン(ジャネット・リー)
    ライラ(ヴェラ・マイルズ)
    サム(ジョン・ギャヴィン)
    アーボガスト(マーティン・バルサム)
上映時間:1時間49分
公開:1960年

あらすじ

舞台はアリゾナ州、フェニックス。
マリオンは昼間に仕事を抜け出し、サムと逢い引きをしていました。
サムはこのままの関係を求めていましたが、マリオンは中途半端な関係を解消し、サムと結婚したいと考えていました。
マリオンが職場に戻り仕事を再開すると、あるお金持ちが訪ねてきて4万ドルを銀行に預けてほしいと渡してきました。
何を思ったか、マリオンはこの金を持って、フェニックスを抜け出します。
そんなマリオンが訪れたのがうら寂れたベイツ・モーテル。
そこの若い経営者であるノーマンは何やら少し怪しい雰囲気。
モーテルの横にある丘の上にはノーマンとその母が住んでいる様子です。
ノーマンはマリオンに対し、いきなり食事に誘ってきます。
剥製がいくつも飾られた応接間でノーマンの作った食事を食べます。
そして、怪しい雰囲気のまま、マリオンがこのモーテルの浴室で殺されてしまいます。
このモーテルにはある秘密が隠されていたのです。

設定

・男女の考えの違い
・主題のずれ
・隠された秘密

感想

途中からひたすら怖かったです。
夜に見ていることを少し後悔しました。
モーテルに隠された、もう少し詳しく言うとノーマンとその母に隠された謎が少しずつわかるのがとてもスリリングでした。
そして、ラストが衝撃でした。
やはり重要な登場人物としてはノーマンが挙げられます。
ノーマンの特徴の一つはスイッチが入るといきなりキレ出すということです。
この衝動性みたいなものが物語を駆動する大きな要素です。
またノーマンと母親の関係性も非常に重要だと感じました。
ある種ノーマンはとてもかわいそうな人だったのかもしれません。

母と子は西日の向こう丘の家

その他

全編モノクロ。
 

吉田修一作品とのつながり

・引用にもあったように『さよなら渓谷』とのつながりは主題と主人公のすり替わりです。
・他作品も含めていうと、衝動性と実の親の不在というモチーフがつながります。

以上で、「サイコ」については終わります。
あくまでも柳町光男さんが『さよなら渓谷』との共通点を挙げた映画であり、吉田修一作品にどれほどの影響を与えたかはわかりません。
ただ、モチーフに共通点が見られたのは重要なことだったと思います。

それでは、読んでいただき、ありがとうございました。

画像の出典:映画ドットコム「サイコ」

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