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【柳町光男シリーズ#3】「グラン・トリノ」『さよなら渓谷(文庫解説)』より

こんにちは、三太です。

自分の勤務校に今、海外から短期留学生が数名来ています。
そのため授業や部活動で一緒に活動することがありました。
こちらもたどたどしい英語を使い、コミュニケーションを図ると、少し通じることもあります。
この「通じた!」という感覚はシンプルに嬉しいです。
コロナの制限がゆるまり、こういった活動ができるのはやはり重要だなと感じました。
 
では、今回は以前、『さよなら渓谷』の作品紹介をしたときに取り上げた「映画監督、柳町光男さんの解説」に出てきた映画「グラン・トリノ」を紹介します。
『さよなら渓谷』の文庫解説に出てくる10作の映画のうちの3作目です。

ちなみに「グラン・トリノ」については以下のような記述があります。

息子殺害の里美の家と、俊介とかなこの家が市営団地の隣り合わせというのも映画的である。私は大いに刺激を受けた。私の観点からすると、ここに映画の映画たる所以のひとつがある。〈隣の家〉のたとえ一方の家しか画面に映っていなくても、もう一軒の家で何が起っているかが同時に且つ容易に想像でき、空間的にも時間的にも映画的要素が濃密である。そして、そこには〈境界〉のテーマとイメージが用意されている。
(中略)
クリント・イーストウッドの『グラン・トリノ』も〈隣の家〉の物語である。驚くべきことに映画の六割ぐらいが〈隣の家〉と垣根を挟んだ庭と通路とポーチで撮影されている。正に〈境界の映画〉になっている。

『さよなら渓谷』(pp241-242)

前回紹介した「隣の女」に引き続き、「グラン・トリノ」も隣家をめぐる話のようです。
では、実際に今から見ていきます。


基本情報

監督:クリント・イーストウッド
出演者:ウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)
    タオ(ビー・ヴァン)
上映時間:1時間55分
公開:2008年

あらすじ

教会での葬儀のシーンから映画は始まります。
長年連れ添ってきた妻を亡くしたウォルト
妻が残した「ウォルトに懺悔をさせてほしい」という遺言を守ろうとして来た神父をあしらったり、葬儀のあとの食事では家族に憎まれ口をたたいたりします。
ウォルトは人に対する不信感があって、なかなか人付き合いを上手くできません。
もちろん近所づきあいもうまくできるはずがありません。
そのため庭の芝生を刈ったり、愛車のグラン・トリノの手入れをしたり一人で過ごすことが多くなりました。
どうやら彼には朝鮮戦争での従軍経験があり、そのときの体験が強烈に残っているようでもあります。
しかし、スーという女性を不良から守ったところから、隣家に住むモン族の家族との間に徐々に交流が生まれてきます。
そのスーの弟のタオとも友情が生まれていきます。

           ウォルト(左)とタオ(右)


そんな中、タオが街に住むチンピラたちから襲撃を受けます。


ウォルトはどのような行動に出るのか。

愛車グラン・トリノと不器用な男の物語です。

設定

・アメリカ文化
・朝鮮戦争、ベトナム戦争
・不器用な男

感想

一人の男が出会いを通して、変化していく様子が描かれた映画です。
クリント・イーストウッド演じるウォルトは、憎まれ口をたたいたり、素直にお礼を言えなかったり、色んな面で確かに嫌な奴だなと感じます。
まあ一言で言うと、頑固おやじです。
もちろんそれは性格的なことだけでなく、戦争の影響も出ていると思います。
しかし、隣家のモン族と出会い、特にスーとタオの姉弟との交流を通して、心が少しずつほぐれていきます。

彼らに出会うまでウォルトは暴力には暴力で報復していましたし、実際そういう場面も途中何度も出てきます。
しかし、映画の最終盤には、彼なりのまた別の表現の仕方を取ります。
そこには監督のメッセージが込められているのかなと思いました。

映画全体を通して、ひと昔前のアメリカが横溢しています。
例えば、いくつかキーワードを挙げるなら、フォードの組み立て工、人種間の対立、朝鮮やベトナムでの戦争、銃、車・・・。
そんなアメリカに対するまた別の選択肢を示すような映画かなとも思いました

過去を持つ男無口ににごり酒

その他

ウィキペディアより
→タイトルとなったグラン・トリノとはフォードの車種、フォード・トリノのうち、 1972年から1976年に生産されたものを指す。
 

吉田修一作品とのつながり

・隣家との関係を描くという意味で、『さよなら渓谷』と共通しますが、この映画のほうがより隣家の存在が展開上重要だと感じました。

以上で、「グラン・トリノ」については終わります。
不器用な男の物語の系譜をたどりたくなりました。

それでは、読んでいただき、ありがとうございました。

画像の出典:映画ドットコム「グラン・トリノ」

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