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ワークライフバランスの取り組みは企業にもメリットがいっぱい!正しく理解しましょう

様々なメディアで「ワークライフバランス」が取り上げられています。

リモートワークをはじめ、働き方の多様性が求められる今、ワークライフバランスは企業にとって徹底すべき取り組みの1つです。

実は、ワークライフバランスの取り組みは、従業員だけではなく企業や行政、自治体、学校、病院など仕事を提供する側にとってもメリットがたくさんあります。

では実際に、ワークライフバランスにはどう取り組みを行っていけばよいのか、ワークライフバランスの定義や取り組み方について解説していきます。


ワークライフバランスとは?

ワークライフバランスという言葉の響きから、なんとなく「仕事とプライベートの両立」と考えている人も多いでしょう。実は、ワークライフバランスを誤解している人も少なくありません。

まずはワークライフバランスの定義からきちんと理解を始めましょう。


ワークライフバランスとは生活と仕事の調和

ワークライフバランスとは、自身の生活と仕事のバランスが調和される状態を指します。

しばしば、「ワーク」か「ライフ」かの二択のようにワークライフバランスを理解する人がいますがそうではありません。

仕事を犠牲にして自身の生活に比重を置くことも、自身の生活を犠牲にして仕事に比重を置くことも、ワークライフバランスが損なわれている状態です。

ワークライフバランスは、仕事かプライベートかの二択ではなく、仕事と生活がうまく調和のとれた状態を指します。


正しいワークライフバランスとは?

ワークライフバランスは二者択一ではありませんが、だからと言って仕事とプライベートの量を「きっちり」と二分する、ということではありません。

「仕事は8時間でプライベートが8時間、睡眠が8時間」といったように24時間をバランスよく区切ることが理想とする考えがありますが、たとえば該当する人の家庭生活が8時間では賄いきれない場合、この比率は決してワークライフバランスが取れた状態とは言えないのです。

ワークライフバランスは仕事と生活とを調和させることで、両面の相乗効果があり、好循環がなされる状態が理想です。

仕事と生活とがどのような比率になれば均衡が取れるのかは、その個人のライフステージによって異なります 。

ですので、ワークライフバランスは数字だけで割り出せるものではないということを認識しておきましょう。


なぜ企業にワークライフバランスの取り組みが求められるのか

ワークライフバランスは仕事と自分の生活とがどちらか一方に偏らず互いに相乗効果を上げる状態となることが理想です。

この説明を読むと、ワークライフバランスは個人の目標かのように理解ができそうです。しかし、決して個人だけの問題ではなく、企業としてワークライフバランスの取り組みに積極的となることで、結果的に生産性の向上にもつながります。

では、企業にワークライフバランスの取り組みが求められている理由には、どういったことがあるのでしょうか。

少子高齢化

厚生労働省によると、日本の人口は2065年には9000万人を下回り、高齢化率は38%にも上ると推計されています。

参考

厚生労働省「我が国の人口について」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21481.html

この状況は、各家庭に介護の問題が差し迫っていることを表しています。働きながら介護や子育てを両立させていくことは、個人の「気力」といった精神論では健全に遂行できません。

「介護・子育て=女性の仕事」という無意識の固定観念は、女性従業員のライフステージの変化と共に離職へと繋がる可能性があることを、これまでの歴史の中で否定ができません。

こういった性別での役割分担に対する固定観念も、企業全体で意識改革が求められます。

人材流出

少子高齢化に伴い、介護や子育てで離職を選択する従業員は稀なケースではありません。高齢者や介護が必要な家族がいると、介護が必要な本人や配偶者の意向、人によっては世間体により在宅介護を選択することもあります。

その場合、介護を担う人が退職を選択する傾向にあるのですが、その人数たるや社会問題といっても過言ではない数となってきているのです。

2017年に行われた厚生労働省の「就業構造基本調査」(5年おきに調査がされています)では、介護・看護のために離職した人はなんと9万9千人、そのうち2万4千人が男性、7万5千人が女性となっています。

参考

厚生労働省「就業構造基本調査」https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2017/pdf/kgaiyou.pdf

離職によって従業員はキャリアを絶たれることになり、そして業務に慣れた従業員の離職は企業にとって戦力を失うこととなります。

こういった人材流出を防ぐためにも、企業はワークライフバランスを理解し、推進していく必要があるのです。


女性の社会進出

日本におけるワークライフバランスは、1990年代に少子化対策として出産・育児の支援で推進をされはじめた背景があります。

もちろん、ライフワークバランスは女性のためのものではなく、男性にも大きく関わるものですが、女性の社会進出とともにライフワークバランスの考え方が発展してきたのです。

出産、育児などのライフステージの変化において産休、育児休暇などをはじめとする柔軟な働き方を企業が環境整備することで、長い労働力の確保となります。

価値観の多様性

「仕事」に対する価値観はすさまじい勢いで多様化しています。バブル期は「大手に入って安泰」が人生の目標のように設定されていましたが、現在はただがむしゃらに1つの企業に留まることが絶対的価値観ではなくなっています。

2017年に内閣府が発表した「特集 就労等に関する若者の意識」(対象:16歳~29歳の男女)では、63.7%の若者が「仕事よりもプライベートを優先する」と回答しています。

加えて、同調査内、転職に対する意識の調査では、転職に対して否定的な価値観を持っている若者は全体の2割にも満たないことが報告されています。

参考

内閣府「特集 就労等に関する若者の意識|平成30年版子供・若者白書(概要版)https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h30gaiyou/s0.html

いわゆる「Z世代」の若者は「石の上の3年がもったいない」という価値観であることを認識して、企業は労働力を確保するべきフェーズにあると言えるでしょう。

具体的には労働力の確保に向け、ワークライフバランスを考慮した制度を整えるなど、環境整備の取り組みをする必要があります。


ワークライフバランス先進国にみる海外の取り組み事例

ワークライフバランスは推奨されているものの、なかなか根付いていないことが現状の課題です。定着しない理由の1つには「日本企業の働き方」と「意識」が根付いていることが指摘されます。

では、ワークライフバランス先進国と言われるスウェーデンやアメリカは、どのようにワークライフバランスが定着しているのか、制度と意識との両面からみていきましょう。

なぜ日本で根付きにくいのか

まず、なぜ日本においてワークライフバランスが根付きにくいのか、ですが、これは日本およびアジア圏の判断が「個人」ではなく「チーム」に基づくためと指摘がされています。

某旅行サイトが行った調査では、アジア圏全体に渡り、有給休暇は未消化になりやすい傾向にあるという結果が出ています。


厚生労働省の特設サイト「働き方・休み方改善ポータルサイト」によると、約半数近くの労働者が有給休暇取得にためらいを感じているとのこと。

そしてその理由で最も回答が多かったのが「周囲に迷惑がかかると感じるから」(58.5%)となっています。

参考

厚生労働省ポータルサイト「事業主の方へ | 年次有給休暇取得促進特設サイト | 働き方・休み方改善ポータルサイト」https://work-holiday.mhlw.go.jp/kyuuka-sokushin/jigyousya.html

協調性を重んじる文化は尊いことではありますが、同時に個人・家庭を犠牲にする働き方と表裏一体でもあります。

こういった働き方の意識と体質の存続は、長時間労働や女性の社会進出の妨げとなり、ワークライフバランスの達成が難しくなる背景へと繋がっているのです。

スウェーデンの場合

スウェーデンは1970年代に性別役割分業から共働き型に変化したことで、男女ともに家庭・仕事・社会活動の平等性を唱えられ、1974年には男性が育児休暇を取得できるように制度が導入されました。

現在、スウェーデンでは夫婦合わせて480日間まで育児休暇の取得が可能です。

これにより、母親の育休が終われば今度は父親が育休に入る、といった育児の割り振りも可能となります。いわゆる「ワンオペ」になることがなく育児期間を過ごすことが可能で、両親ともキャリアの道を閉ざされずに済むのです。

このように、スウェーデンでワークライフバランスが根付きやすかった背景としては、共働きを当たり前とし、男女の家庭内での役割をイコールとしたことが強いと考えられます。

アメリカの場合

アメリカは「成果主義」であるため個人が企業のために働くというよりも個人が個人の能力のために働く意識が高いと言えます。

そのため、自分のためになるなら転職もいとわない、努力した分が報酬として評価される会社へ転職するといった意識が労働者・企業共に根付いています。

日本では未だレアケースですが、アメリカではスキルアップのために年齢に関係なく大学へ戻る人も少なくありません。

もちろん、優秀な人材確保は「賢明な投資」であるため、企業はできるだけ働きやすい環境を提供するようになります。

個人能力主義と人的投資との意識が、アメリカのワークライフバランスを推進させているのです。


企業に求められるワークライフバランスの取り組み方

長年根付いてきた日本的働き方が背景にあるため、ワークライフバランスの推進を従業員個人に求めるのは十分ではありません。

率先して企業がワークライフバランスの徹底を周知する必要があるのですが、具体的にはどういった取り組みが有効になるのでしょうか。

福利厚生の改善

ワークライフバランスは企業の環境整備からといっても過言ではありません。

従業員が健康的に働けるように健康促進を促す各種サービスの利用や、スキルアップができるように資格取得の支援などを検討しましょう。

先述の「特集 就労等に関する若者の意識」において、「より良い仕事に就くために就職後も学び続けることを希望するか」の設問に対し「希望する」が24.3%、「条件が整えば希望する」が53.2%と、多くの若者が自己成長をしたいと感じていることがわかっています。

つまり自己成長の環境作りが整っていれば、スキルアップを求める従業員と、またスキルアップした従業員を雇用できる企業との、双方にとってwin-winとなります。

ワークライフバランスは「自己成長できる環境」も含みますので、企業は休みだけの充実ではなく学びの機会を与えることも大切だと認識してください。


健康診断・健康経営・ワークライフバランスなどに関するご相談は、お問い合わせフォームから、お気軽にお問合せください。
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労働時間の削減

企業の取り組みとして、労働時間の削減に努めましょう。

少子高齢化にともなう労働人口の減少により、1人あたりが請け負う仕事の量は増加傾向にあります。

加えて、日本型の働き方が根付いてしまっていると、残業が当たり前の雰囲気ができあがってしまいワークライフバランスの定着を妨げてしまうのです。

従業員の労働時間を適切に把握し、1人あたりの業務量が適切かどうかを見直すことも有効な取り組みになります。

また、残業する雰囲気を是正するため、ノー残業デーを導入するなど「残業をしない」雰囲気作りも大切です。

労働時間の削減は従業員の過労を防ぎモチベーションを上げられるだけでなく、企業の社会的信用度が上がるため、離職率を下げる効果もあります。

一見企業にとって「損」な政策に思えますが、結果的に生産性の向上と、コスト削減につながるのです。

人事評価制度の改善

人事評価そのものの見直しを検討しましょう。

ワークライフバランスを周知しながらも、現場ではこれまでの長時間勤務や滅私奉公を良しとする雰囲気が払拭されないと、ワークライフバランスは机上の空論で終わってしまいます。

「会社に尽くす」は以前なら美徳でしたが、多様化する価値観において滅私奉公は企業が率先して衰退させていく段階にきています。

残業せずに成果をあげる、従業員の評価を上げる、雇用体系に関わらず質の高い仕事をする、従業員に正当な評価をするなど、企業が雰囲気づくりを率先してください。

現場の雰囲気が変わることで従業員のワークライフバランスは実現していきます。

雇用形態の選択肢を増やす

従業員がライフステージの変化に合わせて雇用形態も選択できるようにすれば、優秀な人材を流出させない解決策になります。

テレワークや短時間労働など、働き方の選択肢が増えれば、従業員も介護や育児と仕事の両立がしやすくなります。

「育児も介護も個人の問題で企業は関係ない!」と認識しているならば、それは誤解です。

育児・介護に携わる従業員は一定の条件の下、企業がさまざまな措置を講じることと法によって定められています。

まず育児に関しては、育児・介護休業法23条1項において「育児休業を取得せずに3歳に満たない子供を養育する労働者が希望する場合、労働者の申出に基づき育児のための所定労働時間の短縮措置、いわゆる短時間勤務を講じなければならない」と定められています。

そして介護に関しては、同じく育児・介護休業法23条3項において「介護休業を取得していない労働者に対して、さまざまな措置を講じなければならない」とされています。

育児・介護休業法についてはこちらのリンクから厚生労働省の「育児・介護休業法のあらまし」にて詳しく確認し、該当となる従業員が申し出た場合は法に基づき対応をしていきましょう。

厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000355354.pdf

意識改革(ダイバーシティの理解)

ライフステージの変化にともなってライフワークバランスを実現できるように企業はその環境を提供することが大切です。

しかし、このように提言すると「ではすべての女性が育児・介護と両立できるように整備を整えましょう」と考える上層部は少なくありません。

欧州において、ライフワークバランスの実現が成功している背景には、男性・女性ともにそのダイバーシティ(多様性)を認めるところから始まっています。

たとえば、今なお根強く残る「ニューロセクシズム」について、男女ともに認識する必要があるでしょう。

ニューロセクシズムとは「男女で脳の構造が違うため、行動や思考が異なり家庭や職場における適正である役割も異なる」といった考え方です。

この考えはまことしやかに用いられますが、これは1982年にたった14名(男性9名女性5名)の被験者の元「脳梁に若干の違いがあった」ことを根拠にされています。もちろん今日は科学的根拠に乏しいと否定されている「ニセ科学」です。

その裏付けとして、2015年にイスラエルで約1600人の男女を対象とし、MRIで脳の仕組みに男女差があるのかを研究したところ、わずかな男女差はあったものの明確な「男脳」「女脳」はなく、社会的な圧力、つまり心理的な固定観念が男女の役割を作り出していると結論付けられています。

ニューロセクシズムや「男らしさ」の「マッチョイズム」についても、ライフワークバランスの実現にむけて、上層部は正しく理解し意識改革を行う必要があります。


ワークライフバランスの正しい取り組みは長い労働力の確保になる


ライフステージの変化は誰にでも訪れます。

親の介護、育児、自身の体調の変化などもあるでしょう。


慣れ親しんだ従業員を手放すことは、企業としても大きな損失です。

従業員がオンとオフをしっかり切り替えられる、健康的な生活を送れる、自己成長ができるといった環境の整備は、回り回って生産性の向上に繋がります。

誰しも、健康で安心して働ける環境を整え、長く活躍できる労働力を確保しましょう。


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