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画家の友達

今から10年近く前のこと。
社会人になりたての頃、
六本木でとあるイベントが開催。
正直、どんな内容だったかは覚えていない。
親しい友人Aちゃんと2人で行って
なんかコンセプトがよく分からない
不思議な会だった、ということくらい。

そんな中で
「やっぱりよく分からないよね、これ」
みたいな空気感で通じ合い、話すようになったのが
1歳年下の画家の女の子Bちゃん。

絵をずっと描いていて
いつかはその道一本で食べていきたい
という夢を持っている。

単純にBちゃんの生き方や考え方に
興味を示し、親しくなった。
同い年ではないけれど、お互い敬語も使わず
昔から知っているような仲になる。

知り合った当時はまだ
打ち明けられていなかったけれど
何年かした後に

「実は小説家になることが夢なんだ」

と、洩らす。

「そうなんだ!同じだね!」

と、お互いに描いている将来の夢が
アートの世界だったから、より親しくなった。
ちなみに、冒頭に出てきた六本木のイベントに
一緒に行った友人Aちゃんは歌手。

僕ら3人は

小説、歌、絵

というようにそれぞれ違う形で
自らの考えや想い、メッセージを
表現するアーティスト。

この3人の中で、一歩先に行っていたのはAちゃん。
すでにメジャーデビューを果たし
当時はまだだったが、のちに
某歌番組の準レギュラーにもなった人。

Aちゃんは中学の同級生で、学生当時話す機会は
ほとんどなかったけれど、20歳ごろに
再会するきっかけがあり
不思議な縁で仲良くなった。

彼女はどんどん自分の活躍を広げていき
常に刺激を受けていた僕とBちゃんは
我が道を信じながら、日々過ごしていた。

そして、2017年1月。
僕は、一般的な作家を目指すことを辞めて
アーティストとしての小説家ではなく
ビジネスマンとしての小説家を歩み始める。

結果、今は満足いく生き方で納得している。

正直な話、今はアーティストとしての生き方を
望まなくなった。
それは、今の環境が楽しいのもあるし
活動そのものがお金に代わりやすいから。

一方、Bちゃんは飲食店で働きながら
絵を描いて生活していくために
今もなお試行錯誤している。
画家で食べていくことの難しさを覚えつつも
知り合った頃から変わらず、一貫して生きている。

時々、「どんな風にしたらいいかな?」

なんて相談の連絡が来る。

「ああじゃない、こうじゃない?」

なんて返事をしながら
彼女が生きようとする道を陰ながら応援している。

そして。
自分の結婚式についてあれこれ考えたとき。

「Bちゃんが描いた絵を結婚式のときに飾りたい」

と思って妻に話すと快諾。

Bちゃんが描く作品が
披露宴会場の受付に飾られる。
今から楽しみで仕方がない。

参列する人たちにも、見てもらいたいし
Bちゃんの存在を知って
何かしら良い縁になって
広がってほしいと心から思っている。

僕が諦めたアーティストという道を
彼女は今も目指して頑張っている。
その応援になれば、と思った。


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