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子どもの頃の夢

あれがもしかして、子どもの頃の夢だったかもしれない。そう思うのは大人になってから気づく場合もあるんじゃないかな。生まれた時から何かを目指したり、幼少期で自分のスキや特技に気づいたり、それを口にして周囲の協力を得たり、夢を叶える環境を整えながら叶えるステップを踏むことができなかった人間は、「夢なんてない。やりたいことがない。」そう言いがちだ。

わたしもその1人だと思う。ずっとやりたいことも好きなこともない、とりあえずなるべく得意なことでなるべくお金になることで、なるべく最速でなるべく労力をかけたくない、そう思ってきた。今日も学校に行くのは面倒くさい、でも学校に行かないことも面倒くさい。勉強するのも友達を作るのも面倒くさい、でも勉強しておけば友達を作っておけば、その先の面倒くささからは解放される。やるべきことをやることが面倒くさいけど、やらない意思を貫くことが面倒くさくて、とりあえず言われたことだけやっとけば、求められたことだけやっとけば、なんならそれ以上人の期待に答えればうまく世の中を渡っていける、そう思っている子どもだった。

なんともかわいくない、とんでもなく捻くれて、世の中を大人を斜めに見ていたし、うるさい子どもたちも嫌いだった。大人がいないと何もできないのに、大人をどこか馬鹿にしていたし、自分も子どもなのに、あの子達と自分は違うと思っていた。死ぬほど性格が悪かったし、それに気づかれないことに怖かったし、結果的に自分というこんな存在が世の中で生きていることが怖かった。

もしわたしがとんでもないIQの持ち主で、お金持ちの家に生まれていて、優等生を演じながらも実は裏でイジメを支配したり、サイバー犯罪を犯したりしていたら少しはエキサイティングだったのかもしれない。しかし全く、勉強もできやしないし、努力をするバイタリティもないし、人を動かせるお金もなかった。そして何より心が優しかった。

え?

なんの話。

そう、残念ながらわたしは人を傷つけてまで、押し退けてまで自分の思い通りにすることが何一つできなかった。ただ生意気な目で成人や未成年を見ているだけ。かと言って、特に自分も変わらない同じ人間であることを理解してしまっていた。自分は他の人とは違うんだ!くらいの勘違いでのしあがれるほど自惚れたり、客観的評価を無視して自己認識を最上級にできる能力がなかった。

だからただ、ただただ、中の下だった。見た目も振る舞いも、モテ度もモテなさ度も、学業も恋愛も何もかも、中の下。海に潜って魚をとることもできなくて、波打ち際でキャッキャ言って楽しいふりをして、お腹を空かせているのに、海の中は危ないよねー、と言ってるだけで、かと言って海に飛び込む勇気もなく、何もしなくてバカでありたくて、ただ死を待っているようなやつだった。

そんなわたしが1度だけ、わたしが生きる道はココだな、と思ったことがある。わたしは高校生の時、心理学の延長線上にある職業に憧れていた。ある推理小説の影響かつ、その当時ドラマ化された主演女優が大好きなのも重なって、本気でその職業につきたいと思った。それまでの短い人生を振り返って、誰にも見つからないところで占いの本を読み、タロットを勉強して暇つぶしをしていた陰キャなわたしもこっちサイドに進めば生きることが許されるかもしれないとすら思った。根拠も曖昧だし、何をどうやったらそれが実現するのか全く想像つかなかったんだけれど「海賊王に俺はなる!」くらいの気持ちで、ものすごく強い意思を爆発させて、誰も見ていない場所で立ち上がって右手を挙げた。

んが、ほんの一瞬で終わった。

もしかしてだけど、もしかしてだけど、そんな風に生きたりできたりしちゃったりするのかしら?と生まれて初めて音楽にのったけれども、踊り明かすことなく冷めてしまった。

少し調べただけで、これはまったく縁もゆかりも引っかかりもとっかかりも何もない、無知すぎて変なことを夢見ちゃったな、と冷静さを取り戻したのだ。

莫大なIQとお金が必要で、それは努力では全然届かなくて、きっと生まれつきそこに導かれる人にしか許されていない世界。もし万が一なんだかんだの制度を駆使して、一生徹夜して勉強できたとしても、進んだ道で何度もこの壁にぶち当たるのが鮮明に見えた。

もしも生まれ変わって全ての工程でスムーズに進むことができたとしても、その先の実務経験が必要で、あれよあれよと魔法を使ってそのステージまで進んでいたら、わたしの子どもは生まれていないと今でも確信している。わたしにとって、仙人領域だった。

今でもその職業には憧れがあるが、その職業を目指そうとは全く思えない。あの時調べた時の失望を、何一つ今でもクリアできない。

でもそこに想いが残っているように、わたしは今日も書いている。ただひたすら、息を吐くように書く。目的があるとか、誰かを導こうと思っていない。わたしの憧れの職業には程遠いし、似たようなことができると思ってもいない。

ただただ、どこかの誰かの心の機微にじんわりと救われる気持ちが届きますようにと願っている。

あなたの心がたいせつにされることを祈っている。あなたの心を傷つける全てのことから、わたしは守りたい。だけれども、直接的に力になることができるお金と力量と才能と人脈とスキルがわたしにはない。

わたしには、ただここで書き続けることしかできない。それに意味があるかはわからないし、全く意味がないかもしれない。でも書くことだけが、あの頃のわたしの夢を叶えているわたしのような気がして、わたし自身が救われていく。

そしてわたしが書き続けることがあなたの大切を守ることに繋がっていたとしたら、あぁ、生きててよかったな、そう思うのです。

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