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【ショートストーリー1】仕事はうまくいっているのに、この物足りなさは何なんだろう・後

※この投稿は、キャリアに悩む主人公を描いたショートストーリーです。

↓前編はこちらから


22歳の僕


「22歳の、僕が、、、、ですか?」

そうだった。

僕は今の就職先が決まった時、当時社会人2年目だった先輩に自分の夢を語っていた。

「僕、決めたんです。就職活動で見た、イキイキと働くあの大人たちのような働き方がしたいって。どうせ働くなら、自分が心からやりたいことをやって、沢山の人を幸せにして、毎日充実感を感じていたい。」

僕は目をキラキラさせながら話した。


先輩がいじわるそうに、

「いいねー、何歳まで言ってられるかな?」

と言ってきたので、僕は

「30歳になっても40歳になっても言ってますよ!今の僕が観て、憧れるような生き方をしていてほしいなぁ」

としみじみと語っていた。


先輩は、おそらくその時のことを言っているんだろうと思う。

「誤解してほしくないんだけど、責めるつもりはないんだよ。ただ、イキイキ働く大人になりたいって言ってたから、仕事で賞を獲ったとか、同期より早く出世したとかを語ってる自分って、あの頃から見てどう見えるんだろうなぁと思ってね。」


先輩には、全部見透かされてた。

まさに自分がいま悩んでいるところのど真ん中だった。



気づき


「なんとなく感じていたことがはっきりしました。僕、今の自分好きじゃないです。確かに仕事はうまく言ってるかもしれないけど、ずっとモヤモヤしてました。これが一生続くのかなぁって。」

「そっか」

「何でモヤモヤしてるのか分からなかったんですけど、今分かりました。僕、自分が本当に大事にしたいと思っていたことを諦めてました。それで、分かりやすい指標で自分を納得させてたんだと思います。」

「うんうん」

「だけど、そんな自分は嫌です。嫌いです。やっぱり自分が思うような働き方がしたい。そんな考え方、甘いですか?」

先輩がニヤリとする。

「自分ではどう思うの?」

「甘いと思います。でも僕、結構やる男だと思うんです。甘い考えでも、社会の厳しさのなかで形にしてやろうと、今先輩と話しながら思いました。何勝手に諦めてたんだって、言ってやりたいです。さっきまでの自分に。」

「そっかそっか、22歳の自分はなんて言ってる?」

「うーん、『よく思い出したな』って言ってると思います。偉そうだけど!」

「あはは!そっかそっか。なんかエネルギーが出てきたね。」


「はい、なんだかあの頃の自分に戻ったような気がします!勝手に諦めてた自分が、モヤモヤする自分を生んでたんですね。今分かりました。僕、もう一回走ってやろうと思います。」

「そっか、そうだね。あり方さえ整えば、やり方はきっと見つかるよ。俺だってそうだったんだから。独立前は、キミと同じだった。」

「そうだったんですか!?」


それから、先輩は僕と同じように「傍目にはうまく言ってるように見られるのに自分が一番納得していなかった時代」の話をしてくれた。

そして、もう一度自分のキャリアを創りなおすと決断した日のことも。

先輩と話して本当によかった。今日からまた、全力で走っていける。


社会人生活にも慣れてきて、いつの間にか守りに入っていたのかもしれない。最初は何も持たずにスタートしたのに、いつの間にか得てきたものが、自分の可能性を狭めていたのかもしれない。

僕は今日、そのいらない勲章を自分のなかで捨てることを決めた。

そしてもう一回、本当に大事なものだけを求めて、自分のキャリアを創りなおしていくことを決めた。


独立になるか、転職になるか、もしかしたら今の職場で見つかるかもしれない。だけど大事なのはやり方じゃない。

自分自身のあり方だ。

それさえ大事にし続けられれば、どこで何をしていても先輩のようにいつも自分らしく穏やかに、充実感を持って働いていけるのだと思う。

僕は今日、そう確信した。


先輩は間もなく、海外に戻るらしい。

次に会うときは、本当の意味で自信を持って、今自分がやっていることを目を輝かせながら先輩に伝えられる自分になっていたい。

春の訪れを伝えるような3月の少し強い風が、僕に新しい何かを運んできてくれているように感じた。





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