フランス大学院修士課程雑記⑤入学3ヵ月目・前期授業終了
イチ大学院生のnoteを読んでくださっている皆様、いつもありがとうございます。2025年、明けてしまいましたが、12月に書き始めて下書きにしていた記事を投稿します。
雹が降りしきる寒い寒い日、長かったようであっという間に修士1年目前期の授業がすべて終了した。
試験も大多数の科目ですでに終了し、1月までの課題(サンテーズ)と期末試験(DST)ひとつを残すのみとなったところで、ちょうど入学3ヵ月目の節目を迎えたこともあり、久々に記事を執筆してみようと思った。
①授業、試験と課題をこなしての感想
色々と優遇されていた交換留学時代とは異なり、正規の留学生として帰ってくると「1単位も落とせない」というプレッシャーに苛まれた。
課題の締め切りと中間試験が集中した11月末から12月初旬がもっとも厳しい期間で、一日3コマ授業がある日にすべての授業でエクスポゼと試験のどちらかが課される、という不運に見舞われたときはさすがに勘弁してくれという気持ちになった。
とはいえ学部の時間割を見たり学部生の話を漏れ聞くところによると、これでも学部よりはマシだと思うが、フランスの修士で辛いところは、どんなに試験勉強が詰まっていても、指導教員に出くわせば「論文の進捗はどうですか!?」と詰められるところにあると思う(※フランスの大学院は1年生修了時に論文を課されることが一般的なため)。他の課程の日本人正規学生も同じことを言っていたので、修士課程共通の悩みなのだと思う。
私の場合は正直に「テスト勉強に追われていて、次回進捗を上げられるのは1月になります!すみません!」と開き直って宣言してしまったのだが、指導教員の心象にどう響いたかまでは知るすべはない……。
各授業の評価はまだ出揃っていないが、授業は抜き打ちで出席が取られることもままあったし、そもそも我々外国人は授業で真面目な態度を見せておくことが非常に大事だと思うので、授業は皆勤賞(メトロ遅延で1回少々遅刻はあったものの……)だった。
出席と課題で見られる授業は合格だろう。
DSTで評価される授業も、鬼門の日仏翻訳がまだ残っているとはいえ、今まで受けたものはとりあえず時間内に回答して提出しているので、落第ということはないはず。このあたりは成績が出たら、労力や試験後の手応えと点数がどのくらい比例したか考察してみたいと思う。
②ネイティブも混乱、不意打ちのエクスポゼ
とある授業でDissertation(論文)の課題のみで評価されるものがあり、口頭発表はないと全員が油断していた時間があった。
私も教授からのコメントを受けた修正版を早々に提出し、あとは授業で呼吸さえしていれば単位がもらえると思っていた(のちのちフランス人に聞いたら、修正版はみんな1週間くらい寝かせてから出したらしく、修正指示が飛んできてから2日で出した私はThe日本人としての印象を先生に植え付け、名前を完全にマークされていた。これが悲劇につながる)。
油断したまま締め切り後の授業を迎えると、教授が「これは評価に入れないが、各自10分程度で口頭でDissertationの内容を紹介してください。あくまで口頭発表の練習ね。」と振ってきて、私は「早く修正してくれたから」ということもあり、運悪く2番目の発表に当たってしまった。
DALFで即興スピーチの経験があるとはいえ、時間をかけてじっくり書いたDissertationをいきなり口頭で準備時間なしで発表するのはさすがに厳しい。
緊張でバクバクする心臓を抱えながら1番目の子(もちろんフランス語ネイティブ)の発表を聞いていると、その子も極度のストレスからか、途中で何度も言葉に詰まってしまっていた。気の毒なことに、先生から「あなたもしかして留学生……?」と聞かれていて、ネイティブでもそんなレベルでしんどいことを私に2番目に課さないでほしい、以外の気持ちを失ってしまった。
私はというと、結果としてところどころ詰まりつつも、なんとか10分程度をこなした。文法はおそらく間違いだらけだっただろう、何を話したかは覚えていないが……。発表後、教授からフィードバックをもらうものの、これも緊張しすぎて記憶がほぼない。半分パニックだったので、録音を回すのも忘れていた。
C'est catastrophique…(壊滅的……)とつぶやきながら席に戻ると、両隣のフランス人たちが全部わかったよ、と慰めてくれた。こうしたフランスの若者の優しさに助けられた一方、ネイティブですらうまくできないことでも課される正規留学の厳しさを痛感した。
※余談だが、大多数の学生の発表はその翌週とされ、翌週組は読み原稿を用意している人も多かった。大変くやしい。
③西欧の思考の枠組み、未だ慣れることなし
指示文(Consigne)を理解し、それに沿ってエクスポゼや試験の回答や作成すべき書類を考える―日本の学業でも仕事でも同じことをしてきたつもりだったが、こちらでは思考の枠組みが違うため、教授の期待に沿いきれていないのではと思うことがままあった。
たとえばフランス語を学習している方ならおなじみ、DELF・DALFの参考書はフランス語で書かれていることがメインだと思うが、その中でA1やB1といったレベルを問わず「この質問の意図するところがよくわからない」と思われたことはないだろうか。ひとつひとつの単語の意味がわかったとしても、文章全体としての意味がいまいちつかみきれない、という経験。
私はあった。とくにフランス語をはじめて2年目くらい、B1受験に向けて初めてDELFのフランス語教材を解いたときに困り果ててしまった。問題のねらい、つまり西欧の人なら「この指示文ならこう答える」とおそらく感覚でわかるものの要点がつかめないのだ。
今はC2を目指していることもあり、DALFの参考書の意図はほぼ完全に理解できるものの、たとえば今回大学院の個人エクスポゼで、自分としては指示文(Consigne)に従ったスライドを書いたつもりでも、いざ発表すると教授から内容の前にStructure(構成)についてまずダメ出しが来ることがあった。
また、FLE(C1・écriture argumentative ロジカルライティング)の授業でも、3回の試験中レジュメとサンテーズは「書けた」という手ごたえがあったし試験時間を余して早々に退室したのだが、うち1回、フランスのフェミニズム先駆者Olympe de Gougesの演説原稿(A41ページにも満たない文量)を”分析”するという試験でつまづいた。求められていることは、文章のどこの部分が「皮肉」「雄弁」「説明的」かというようにトーンを分析するというものだったが、我東洋で生まれ育った外国人、たとえばフランス人との日常会話で”ドッ”と湧くポイントがわからないように、こうした雰囲気やトーンの分析というのは逆に難解だった。
なお、日中韓の女性が私含め1人ずつこの授業を取っており、彼女たちもレジュメとサンテーズは余裕の途中退出を決めこんでいたが、この日は白人たちがさっさと帰る中、書きに強いはずの極東女性3人組はウンウン悩みながら試験時間ギリギリまで粘っていたことを書き添えておきたい。
※わからないなりに回答用紙を埋められるだけ埋めたところ、もったいないくらいの高得点が返ってきた。とりあえず埋めようという意欲・姿勢を見せるのは非常に大切である。
おわりに(2025年の目標)
このパートは2025年1月に書いているが、読み直してみるとあらためて「12月の自分はこんなことを考えていたのか……」と記憶の欠落に驚かされる。
課題やテストに日々追われてしまい、なかなかまとまってnoteの執筆時間が取れないのだが、書けるときがあれば書き溜めておこうと決心した。
あと6日で、前期最後の試験がやってくる。
それが終わったら記憶があるうちに、
・パリ市民講座(2025年後期は1月7日から申し込み開始のため、早めに書きたい)
・大学院出願(これも2月開始。MonMasterからの出願記事は、システム発足からまだ3年目とうこともあり、貴重なのでは?)
・2024年を彩ってくれたオリパラのボランティア(これも26年ミラノ大会が出願受付中……同じ欧州の開催ということで、迷っている人の後押しになるようなことも、期間中考えたことも書きたい)
を書きたいが、実は懲りもせずDALF C2にまた出願してしまっているので、その勉強の合間に書けるところでがんばります。
2025年の目標は、
・DALF C2取得(できれば24年度内に。)
・Mention « Très bien »(16/20以上の評定平均)での修士1年生終了
・家族とともに事故なく(人災含む)健康に生きる
として、今回の記事を締めたいと思います。
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