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Libya Updates #17 JULY 2020 Week 5


こんにちは🕊
今週もリビア情勢をまとめました。

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リビアのこれまで
40年以上続いたカダフィによる独裁体制が2011年に崩壊。新たな政府樹立を巡り、衝突が続いてきた。
現在は首都トリポリを拠点とし、国連の仲介で2016年に樹立した国民合意政府 (GNA)と、東部の都市トブルクを拠点とする政府 (HoR) が分裂している構図だ。
HoRが支持するハフタル将軍率いる勢力が2019年4月、トリポリへの侵攻を開始した。GNA側の民兵組織らが応戦し、武力衝突に発展。GNAにはトルコ、ハフタル勢力にはUAEやロシアなどがつき軍事支援などを行ってきた。
6月はじめにGNA勢力がトリポリを奪還し、ハフタル勢力は同地域より撤退。停戦へ向けた協議が進んでいるものの、現地での戦闘は収束していない。

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1. 戦闘

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GNA軍は今週、北部中央に位置する都市シルトを政治的解決により「平和的」にハフタル勢力より取り返したいという考えを示した。「平和的手段」による解決が見込めない場合は、武力に訴えるという。

シルトはリビアの主要な油田へつながる町。GNAは先週、兵力を増強し、同地の奪還を狙っていることを強調していた。

シルトの位置はこちら。


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GNA政府は23日、タルフーナで発見された共同墓地について、殺害に武装勢力「カニヤート」が関与していたと伝えた。同勢力はタルフーナを拠点とし、アル・カニ家が中心の組織。ハフタル勢力側についているとされており、これまでも残虐な行為を行なってきたことで知られている。

GNA軍は7日、これまでに女性や子どもを含む208名の遺体が見つかっていると発表。その数はさらに増えるとの見込みを示している。同政府はハフタル勢力が殺害を行ったと見ている。
タルフーナは同勢力がが6月にトリポリから撤退するまで、GNAとハフタル両勢力の間の主戦場であった。


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UNSMILは29日、4月から6月の市民の犠牲についてまとめたレポートを発行した。
3ヶ月で市民の死者は106名負傷者は252名。2020年の第一四半期と比較して死者は65%、負傷者は276%の増加となった。うち45名が女性、44名が男児、8名が女児とのこと。
戦闘に巻き込まれて死亡・負傷した人が最も多く、不発弾、空爆が続く。

UNSMILは改めて、紛争に関わるすべての勢力への停戦を呼び掛けた。


2. 国際社会の動向

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アントニオ・グテーレス国連事務総長は今週、エジプト議会が軍の海外派遣を認める法案を可決したことを受けて、「強く懸念する」との見方を示した。
法案は「犯罪組織や海外のテロ分子から国境を守るため」としており、リビアへの介入が念頭に置かれていると考えられる。


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フランスとトルコの緊張関係も続いている。
マクロン仏大統領は23日、トルコが地中海東部で影響力を強めていることについて、「海上の主権を尊重していない」として制裁を加えるべきだと語った。
大統領はリビアで国連の武器禁輸を守っていない外国勢力についても言及。暗にトルコを非難する格好だ。


トルコ外務省のハミ・アクソイ氏は同日、公式の声明を発表し、フランスの言い分を否定。同国に対して、自らの利益を押し付けないよう要求するとともに、ハフタル勢力の支援をやめるよう求めた。

リビアの現状について、フランスは「国連のもとでの対話でのみ解決される」との姿勢を維持。一方で、ハフタル勢力ともつながりを持っていると考えられている。ハフタル勢力が支配下に置く東部の石油資源のほか、リビア周辺地域の安全保障を懸念していると考えられていた。とりわけトルコがGNA勢力を支援していることについて、名指しで批判を続けてきた。


3. 新型コロナウイルス 

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新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない状態が続いている。
リビアでは30日(現地時間)時点で、累計3,017名の感染者が確認されいている。前の週から新たに841名の感染が確認された格好。
死者は67名で、1週間で14名の増加。


GNA政府は30日、感染拡大防止のためのロックダウンを実施することを発表した。
対象はトリポリなど同政府の支配する地域で、同国の一部に限られる。

同政府は4月にも10日のロックダウンを実施している。


情勢不安の続いてきたリビアでは、パンデミック以前より医療保険制度自体が弱い状態が続いてきた。感染者に対応するための病床や医療器具なども不十分だ。
4月から5月にかけては医療施設への攻撃も多発。6月からは地雷の爆発に市民が巻き込まれる事態が相次いでいる。

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4月からの感染拡大状況と現地情勢 (7/16時点)


4. 移民・難民

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難民・移民も劣悪な状況に置かれ続けている。
カダフィ体制の崩壊後の混乱で、サブサハラアフリカ諸国よりリビアを経由し、欧州を目指す移民・難民が急増。EUなどとの協力のもと、同国は移民・難民が地中海を渡るのを阻止しようとしてきた。
リビアに留め置かれた移民・難民らの一部はGNA政府や武装勢力により収容施設へと送られることがある。収容施設では生きるために必要なものへのアクセスも絶たれ、外へ助けを求めることもできない。難民・移民から金銭を巻き上げるために脅しをしているほか、リビア人が暴行や性暴力を行なっていることも分かっている。

国連難民高等弁務官事務所UNHCRは今週、移民・難民らがリビアで置かれた状況についての声明を出した。
移民・難民 2,000名以上が法的に認められていない収容所に入れられていることなどを指摘。数千名が死の危機に直面していることについて懸念を示した。


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こうした「懸念」は直後に現実となった。
トリポリから東に100kmのところにある町、アル・フムスで27日、スーダン出身の移民3名がリビアの沿岸警備隊に銃撃され死亡した。地中海を渡ろうとしていたところを沿岸警備隊に連れ戻された直後のできごとであった。3名を乗せた船には合計70名以上が乗っていた。

船に乗っていたその他の移民・難民らは収容施設に移送されたという。

UNHCRはこれを受けて28日、声明を発表。3名の死を悼むとともに、ただちに捜査を行うよう求めた。


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地中海を渡った移民・難民のうち、経由地で暴力を受けた人びとの47%が当局による被害であった。UNHCRらが行なった調査で、1万6千名の移民・難民へインタビューを行い判明した。

これまで、リビアをはじめとした経由地で移民・難民に対する暴力を振るってきたのは主に密輸業者だと考えられてきた。


移民・難民らを乗せた船では、新型コロナウイルスのクラスターも発生している。
マルタの保健省は28日、地中海で救助された移民・難民94名のうち65名が新型コロナウイルスに感染していたことを発表した。リビアを経由したとみられている。


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Also read:

リビアの4月からの新型コロナの感染拡大状況を整理しました。
6月20日は世界難民の日でした。リビアの難民・移民について、一緒に考えてみませんか。


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