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医学部で苦手だったこと②医局制度

前置き

私には医局に属している友人がたくさんいますし、学生時代は大学病院の先生方に大変お世話になりました。この投稿は医局そのものやそれに属している人を否定するものではなく、あくまで医局制度というシステムが自分自身の性格や求めるライフスタイルに合っておらず、自分は所属するに至らなかったという個人の体験・感想であることを強調します。

医局とは

医局(いきょく)とは、主に大学医学部・歯学部・病院等においての各「研究室」、「診療科」、「教室」ごとのグループ組織のこと。医学部の教授を中心とした講座、大学付属病院の診療科を中核とする医師の集団を指すことが多く、周辺として関連病院等の医師も含めた一大グループ組織であることが多い。法令上、予算上位置づけられた組織、仕組みではない。

Wikipedia「医局」

多くの医師は、直接雇用関係のある病院とは別に、医局という組織に属しています。医局は、大学の教授をトップとする組織で、法律上雇用関係にあるわけではないですが、大学病院だけでなくその地域にある周囲の病院の人事権も事実上握っているため、医師の生活に多大な影響力を持っています。医療界では「〇〇病院の△△科は□□大学△△科の関連」という言葉をよく耳にしますが、これはある病院(公立病院や私立病院など形態は様々)のある診療科で誰が勤務するかは、その職場に息をかけている医局の教授が決めることができることを意味します。なぜ、その病院を所有しているわけでもない人(教授)がその力を持っているのかは謎ですが、病院側からは「〇〇教授に医局員(医師)を送っていただいているおかげでうちの病院が成り立っております。」と、教授は常々感謝される立場にあります。もちろんそこに他の医局の医師が混じるとなると、「うちの島で何してくれとるんじゃい!」ということになるわけです。規模が大きな医局であるほど、関連病院(人事権を握っている病院)を持っています。

学生時代に海外で出会ったある先生の場合

学生時代、米国のとある有名大学を見学する機会に恵まれ、そこで当時研究留学をしていたある先生と話すことができました。その先生の話によると、もともと2年間の予定で留学を開始したが、ちょうど研究プロジェクトが面白い段階に入り、この仕事をまとめて論文化するため留学期間を半年間伸ばしたいと思い、その旨を医局に連絡したところ、「半年間伸ばしてもよいが、帰ってきたときは僻地の〇〇病院(誰も働きたくない田舎にある病院)で働いてもらいます。」と言われたとのことでした。この先生は研究が好きで、できれば大学病院で働きながら大学の研究室で研究を続けたいと考えていたので、大学から程遠い田舎の病院勤務ではそれがかなわないと項垂れていました。
私はこの話を直接聞いたとき衝撃を受けました。まず、この留学中に全く関係のない(留学費用を支援しているなどあるならまだしも)医局がこの先生のキャリアに多大な影響を及ぼしているということです。さらに、研究留学が医局にとっては「外国で遊学しているのだから、その分帰ってきたら苦しむのは当然」という価値観で見られているということです。「海外で習得した技術や見聞を活かしてぜひ医局の研究を盛り上げてほしい」というわけではなさそうでした。

プライベートにまで影響

冒頭でも示した通り、医局は雇用関係等の存在しない、ある種架空の組織であるので、その影響力に明瞭な境界は存在せず、プライベート生活にまで及ぶことがあります。今時流石に少なくなっているとは思いますが、当時は教授から「出張に行くので空港まで送ってくれ」とドライバーを頼まれることも日常茶飯事であったそうです。また、現在でも結婚するときは結婚式に教授を呼んでスピーチをお願いするという風習は根強く残っているようで、多忙な中参加してくれたことに対して感謝の気持ちを伝えるため百万円ほど包む文化も、身近でよく耳にします。

医局が自分に合わないと思った理由

私は、自分のことをなるべく自分で決断することが人生の幸福感を高めると思っています。生活の中でする多くの決断の中でも「どこで誰と働くか」はかなり重要度が高いものであり、その決断を自分でできないというのはかなり辛く、医局に属することは自分には向いていないと思う大きな要素になりました。

上記の例は、自分が実際に見たり聞いたりした事実ではありますが、実際はそれぞれの医局に個性があり、実情は異なることと思います。あくまで一個人の視点として考えていただけると幸いです。
医局という組織の存在やその中で働く医師の生活の実態などは、当然高校生で医学部を志望したときには全く考えることができていなかったです。もし現在高校生で医師を目指して勉強している人がいたら、何人か現役の医師に連絡を取って話を聞いたり見学したりすることが、受験勉強と同じかそれ以上に重要だと思うということを伝えたいです。

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